暴力的なジョンだからこそ、愛と平和を語ったのだ

今日はジョン・レノンの命日。今年もこの季節が来た。
僕はいまだに「ハッピークリスマス」を聴くと無条件に泣いてしまう。

さて、ジョンは一般的に「愛と平和の使者」と言われているが、彼がそこにたどり着く道筋は決して平坦ではなかったと思う。
彼自身、こう言っている。

「愛と平和を語る者というのは常にもっとも暴力的な人間だ。」

今から50年~60年前のイギリスは(現在も?)、いわゆる階級社会である。
貴族階級の子弟はみんな、寮制のプライベートスクールに行く。そこでは、紳士たることを教育される。
労働者階級の子供は、労働者になるべく訓練されるパブリックスクールに押し込まれる。
そこで、ビートルズの個性的な面々、特にジョンがそんな学校からはみ出ていくのは必然だった。

そう、ジョンは元々、極めてやんちゃな少年、反抗的で手の付けられない不良だったのである。
小学校のときの通信簿に「見込みが無し。」って書かれたのは有名な話だ。

勿論、修行時代のハンブルグでのやんちゃぶりも伝説として残っている。
道を通る尼僧(シスター)達に向かって、2階から「洗礼~」って叫びながら小便をしたとかね。

そして、大人になって、ビートルズとして成功した後でも、今度は徐々にビートルズという枠に対して不自由を感じるようになったジョン。
この頃は、妻のシンシアに対しての家庭内暴力が激しくなったという。
確かに、嫉妬深くて、暴力的なジョンの作る歌の歌詞にも影を落としている。

-You Can’t Do That 1964年-

I got something to say that might cause you pain,
If I catch you talking to that boy again,
I’m gonna let you down,
And leave you flat, Because I told you before, oh, You can’t do that.

ご機嫌をそこねるかもしれないが 言っときたいことがある
あいつとは二度と口きくんじゃない
今度見つけたらとっちめてやる
コテンパンにしてやるからな
前にもはっきりいったはずだ そんなことするなって

-Run For Your Life 1965年-

You better run for your life if you can, little girl
Hide your head in the sand little girl
Catch you with another man
That’s the end’a little girl

一目散に逃げ出すこった
できるもんならな リトルガール
浮気現場を抑えたらお前を生かしちゃおかないぜ

-Getting Better 1967年-

I used to be cruel to my women
I beat her and kept her apart from the things that she loved

以前は恋人にもひどいことをした
殴りつけたり 好きなことをやらせてあげなかったり

しかし、そんなジョンも1968年あたりから、その思想を愛と平和に傾斜させていく。
彼の内面に、どんな変化があったのか。
ベトナム反戦運動の激化、黒人民権運動、ウーマンリブの高まり等、様々な時代の激流がその時期に起きているのは事実だ。
勿論、ジョンの思想的目覚めに関しては、一般的にはヨーコとの出会いというのが大きなファクターと言われているが、それは、多分にジョンの死後に増幅されたイメージによるところも多いようにも、思える。
今後、客観的な研究成果が待たれるところだ。

そして、ビートルズ解散後、社会運動にのめりこんで行くジョンであるが、おそらく彼の心の中では、暴力的な部分と、愛と平和の使者としての部分の葛藤を持ち続けたのであろう。
彼は自分の半生を振り返り、暴力的だった自分、嫉妬深かった自分、横暴だった自分を反省し、本来の自分に回帰しようとする。
それが、「ジョンの魂」というアルバムで結実するのだ。
おそらく、それがジョンの正直なところだ。
表現者にとって、最も大事な資質は、個性、新しさ、そして、正直さの3つだと思われるが、ジョンはそのうちの3つ目、正直さが他に比べて抜きん出ている。
だからこそ、僕達は、先ほども書いた以下のような彼の言葉を信用出来るのだ。

「愛と平和を語る者というのは常にもっとも暴力的な人間だ。」

さて、最近、元航空幕僚長の田母神氏の論文などを読むにつけ、日本の戦前の侵略の歴史が、あたかも無かったかのように伝説化される傾向が見られる。
さらにそれと平行して集団的自衛権の容認、はては、核武装論等の論議が起きている。
それぞれ、一つ一つの議論に関して、僕は必ずしも100%反対ではないが、それでも、日本が過去に犯した侵略の歴史を自覚し、反省するところからしか、愛と平和を語る事は出来ないのではないかと思う。

よく、日本の軍事的暴走の歯止めとしての憲法9条というような言い方があるが、極論するならば、僕にとっての9条はまさしく、ジョン・レノンという存在である。

まさむね

中山康樹はターザン山本だ ~『ビートルズの謎』書評~


つまり『ホワイト・アルバム』の限定番号は”限定”でも”通し”でもなく、たんなる”数字”あるいは”番号”にすぎなかった。したがって同じ番号が何枚もしくは何十枚と存在する。
そしてそのことは、質問されれば真相を知っている人間は答えたかもしれないが、誰もそのようなことを質問しなかった。誰もがその番号を「自分だけの番号」と信じて疑わなかった。(中略)
より正確にいえば「自分が持っている『ホワイト・アルバム』は自分だけの番号と思い込んでいた。その意味ではビートルもファンも同じ立場だった。

-「ビートルズの謎」(講談社現代新書)中山康樹 P164-

この本を読むまで、僕も『ホワイト・アルバム』のシリアル番号がユニークだと思い込んでいた。
ちなみに、僕が所有しているLP(70年代中盤に購入)のシリアル番号は、A190657だったが、この番号をパスワードに使ったこともあった。
CD発売時に、シリアル番号がついていないというだけで、これは本当の『ホワイト・アルバム』ではないと、勝手に維持を張って買い控えた。

そんな僕達の気持ちは一体、何だったのだろうか。

おそらく、目から鱗が落ちるというのはこういうことを言うのだろう。
ちょっと考えれば分かることだが、全世界に無数に有るプレス工場のシリアル番号を、長年に渡って管理し続けるなんてこと出来るわけがないではないか。

その通りだ。しかし、魔法とはこのような事をいうのかもしれない。
それは解けて初めて嘘だとわかる普通の事実のことなのである。また一つ、ビートルズに教わった。

しかし、さらに面白いのはその魔法にビートルズ自身がかかっていた(あるいはまだかかっている)という皮肉だ。

前著の「これがビートルズだ」において中山康樹氏はこのように述べる。

ビートルズに関する歴史や数々のエピソードもまた、その音楽に匹敵するくらいおもしろい。「事実は小説より奇なり」というが、ビートルズの物語は事前に誰かが書いたかのようにうまくできている。フィクションを超えたノンフィクションがあるとしたら、ビートルズの物語がそれだ。
(中略)
しかもビートルズの物語はミステリー仕立てときている。あらゆる場面に”謎”が用意されている。


-「これがビートルズだ」(講談社現代新書)中山康樹 P9-

 
確かにその通りだ。だから、ビートルズは奇跡なのだ。

この秋『真実のビートルズ・サウンド』(川瀬泰雄)と、この『ビートルズの謎』と立て続けに読みやすいビートルズ新書が発売された。
川瀬氏の著作がビートルズのサウンドを顕微鏡で見るがごとき労作であるとしたら、この『ビートルズの謎』はビートルズを、その背景までをも視野に入れて遠目で眺めた風景画のようなものだ。
それゆえに、この本を読んでも、ビートルズの音楽を聴くための助けにはならない。

しかし、当代、ビートルズの語り部としての中山康樹氏の存在は、いい悪いは別にして、一つのスタンダードだと思う。
かつてのプロレス界におけるターザン山本氏と同じで、一方で強烈な信者を生み出すが、一方で、多くのアンチを生み出してしまうのが中山氏の文章である。
僕も、彼の慧眼に何度もうなずかされたが、一方で、その独善的な価値観に腹も立てさせられた。
しかし、今は、中山氏のような才能によって、結果的により多くの人がビートルズに触れる機会が増えればいいと思うようになった。
だから、ビートルズを知らない世代の人々にも本書を読んでもらいたい。

この本にはビートルズという稀代のスーパースターとそれを許容した混沌とした60年代の空気の一端が読み取れる。
冒頭のエピソードに戻ると、販売されたアルバムに全てユニークな番号を付けようなどという途方もない企画(夢)を、平気な顔をしてやろうとした4人の”馬鹿”がいたという事だけでも、この閉塞感の強い平成の若者達に知ってもらいたいのだ。

まさむね

顕微鏡で覗いたビートルズ ~『真実のビートルズ・サウンド書評~

「Baby’s in black and I’m feeling blue(あの娘は黒い服で僕の気分はブルー)」という感じを出すために、リンゴがドラミングで工夫をしている。
リンゴはこの曲で、最後のサビの「♪She thinks of him」~「♪She’s dressed in black」までは、ハイハットを叩かず(ロックバンドのドラマーがこうした曲調を演奏する場合は、普通にハイハッタオやシンバルを叩くのだが)、バスドラを8分音符で叩き、タンバリンの刻みとタムタム中心のサウンドにしてくれる。つまり、この曲の曲調や歌詞に会わせるために、スネアの響き線やシンバルなどの金属系の音を抑えて-金属系の音を使うとどうしても賑やかな感じになってしまう-太鼓中心のドラミングにしているのだ。
-「真実のビートルズ・サウンド (学研新書 38)」川瀬泰雄 P74-

僕はC型肝炎のため、週に一度、通院しているが、注射を待つ間、この本を読んでいたのだが、思わず、本を閉じた。
そんな場所でこの本を読むのがもったいなかったのだ。
読み終わるのが惜しくて思わず本を閉じてしまった経験がみんなもあるでしょ。
僕は子供の頃にむさぼり読んだ手塚治虫のコミック以来の経験を、この本で味あわせてもらった。

とにかく、今まで読んだビートルズ本の中で最も繊細な本だった。
まるで、ビートルズサウンドを顕微鏡で、そっと覗いたような細やかで微妙な解説書である。
特に初期のビートルズの小曲に関する解説の多くに鱗from目情報が多いように思う。
例えば、You can’t do that やIf I fellのジョンのギター、A taste of honeyにおけるポールのコーラス、Baby it’s youにおけるジョージマーチンのアレンジ...きりがない。
しかも、その細かいサウンドにメンバー達の意図や冒険心を読み込んで、著者独自の説明をしてくれているのだ。
ついでに、ちょっとしたミスまで指摘してくれていて、それはそれで、もう一度CDを聴いてみようとさせてくれるから凄い。

冒頭は、アルバム「Beatles for sale」に収録されている「Baby’s in black」というワルツ風のバラードのリンゴのドラミングに対する解説である。この曲、確かに名曲は名曲なのだが、今までの解説水準だと、せいぜい、ジョンとポールのコーラスに関して言及するにとどまっていたと思う。
しかし、著者の川瀬氏は、その経歴が音楽プロデューサという事もあってか、サウンドの細部にまで、耳が届いている。

川瀬氏は言う。

優れた芸術作品に共通していることは、細部へのこだわりである。天才的な芸術家たちは「神は細部に宿る」ということをよく知っているからだ。ビートルズサウンドの大きな特徴の一つが、その細部へのこだわりである。(同書P38)

おそらく、川瀬氏一流のプロの耳だからこそ、その細部に宿った神を見つける事ができるのだと思う。そして、この本では、そういう耳で拾い上げたビートルズサウンドに潜む神の魅力を、素人の僕達に優しく伝えてくれているのだ。

あのリンゴも海の向こうに、「Baby’s in black」のドラミングに関して、ここまでの理解者がいるとは夢にも思わなかったのではないか。
是非、なんらかの方法で、この本をリンゴに伝えてあげたいものである。

まさむね

ジョンレノンは労働者階級の歌が作れなかった

ジョンレノンに「労働者階級の英雄」という歌がある。
ビートルズが解散した後、初めてリリースした本格的アルバム「ジョンの魂」(写真一番上)の収録曲だ。

実は、僕は、ずっとこの曲の歌詞の抽象性(観念性)が気になっていた。
その歌詞の中でジョンはこう歌う。

Keep you doped with religion and sex and tv,
And you think you’re so clever and you’re classless and free,
(宗教とセックスとテレビに酔わされて誰もが平等で自由だと信じ込まされていた)

確かに、この一節、労働者階級が置かれている現状を、ジョン独自の鋭い視線でえぐった歌詞であるかもしれない。しかし、この歌詞には、労働者からのリアルな視線、そしてその生活実感はない。ここに歌われているのは観念としての”労働者階級”ではないのか。

それに対して、僕は、労働者階級の生活の情景を、歌詞に歌いこんだブルース・スプリング・スティーンやビリー・ジョエルの歌の方に、より具体性(ある種の肉体性)を感じる。以下の歌詞は、ブルース・スプリング・スティーンの代表曲「Born in the USA」(写真真ん中)の一節だ。

Got in a littletown jam so they put a rifle in my hand
Sent me off to a foreign land to go and kill the yellow man
(小さな町でちょっとした騒ぎを起し、そうしたら、奴らは俺に銃を握らせた。黄色人種を殺すために俺は海の向こうに送られた)

60年~70年代アメリカの暗い一面。マーチン・スコセッシ監督の映画「タクシードライバー」にも通じるダーティリアリズムの世界がここにある。

僕の知っている限り、ジョンは労働者階級と自負しながらも、ダーティリアルズムの世界を描く事をしなかった、いや、出来なかったんだと僕は思う。

ビートルズの4人の生い立ちを見てみよう。

その中で一番、典型的なの労働者階級出身者はリンゴ・スターである。
彼の父親はパン職人だった。彼は典型的な労働者階級の街、ディングル地区で生まれ育った。

ジョージ・ハリスンも似たようなものだ。
彼の父親は、市営バスの運転手だった。ただし、彼は暖かい家庭に育った。4人兄弟の末っ子だった彼はみんなからかわいがられて育った。

ポール・マッカートニーの父親は綿花のセールスマンだった。彼の家にはピアノがあったというから、それなりに裕福だったのかもしれない。

そしてジョン・レノン。彼の父親は船乗り(ウェイター)だったという。そういう意味で彼の出自は、労働者階級である。
しかしその後、両親が離婚し、彼は母親の叔母であるミミの家で育てられた。
ミミの夫のジョージは、中流階級の教養人だったため、ジョンは子供の頃から、沢山の豊かな書籍に囲まれて育ったという。

ジョンが自分の置かれた状況(労働者階級の父親に捨てられ、母親にも先立たれた事)を把握したのは、彼が中学の頃だった。
彼は恐らく自身の境遇を恐る恐る理解した。出自は労働者階級、頭脳・感性は中流階級という自分の境遇を。

その後、ジョンはポールと出会い、そしてジョージと出会い、ビートルズの前身となる音楽活動を始める。
特にドイツのハンブルグで彼らはロックンローラーとしての修行を積む。

日本から漠然と見ると、ドイツって環境大国だったり、リベラルだったりそんな印象があるが、当時のハンブルグはそれこそ暴力とセックスと犯罪の温床みたいなところだったらしい。
そんなメチャクチャな環境の中で彼は、どうしたら観客に受けるのか、いかに自分達の存在をアピールしたらいいのかを、それこそガチンコで学んでいったのだ。

彼が、その地で選んだファッションスタイルは、リーゼントに革ジャン。いわゆる労働者階級ファッションである。しかし、長い間、彼らの芽は出ることはなかった。
ただ、彼らの活躍は、徐々に広まる。そして、遂にイギリスでデビューする事となる。ジョンがポールと出会い、バンドを始めてから実に7年間も経っていた。

しかし、その時、彼らが選んだのは、中流階級向けのスタイルだった。ハイスクールの制服(襟無しジャケット)に、脱リーゼント=マッシュルームカット、笑顔、深々としたお辞儀に象徴される行儀の良さ等である。
恐らく、このあたりのスタイリングは辣腕マネージャーのブライアン・エプスタインの指示に違いない。
エプスタインはビートルズを階級を超えたスターにしたかったからである。

その後、ビートルズは、ロイヤル・バラエティ・ショーに出演。ビートルズの脱階級化の目論見が見事成功した象徴的な出来事である。
ちなみに、その時にジョンの有名な一言が出る。「安い方の席の方は手拍手をお願いします。そのほかの方は宝石をジャラジャラ鳴らしてください。」

勿論、一方で、エプスタインの意向を汲み取ったビートルズメンバーとジョージ・マーチンは、楽曲面、作詞面でもアイドルとしてのハニカミを前面に出す。

ここでビートルズの初期のヒット曲のタイトルを見てみよう。

Love me do
(僕を愛しておくれ)
Please please me
(僕を喜ばしておくれ)
I wanna hold your hand
(君の手を握りたいんだ)
She loves you
(彼女は君が好きなんだよ)

ここにはマッチョで男尊女卑的な労働者階級的発想は無い。ここにいるのはあくまでも上目遣いのアイドルの4人なのである。

しかし、ジョンはこういったエプスタイン&マーチンプロデュースの”ビートルズスタイル”に欺瞞を感じ始める。
1965年あたりから彼の作る曲は、内省的でよりファンタジスティックになっていく。その極致が以下の楽曲群だ。

Strawberry fields forever
(苺畑よ永遠に)
I am the Walrus
(僕はセイウチだ)
Across the Universe
(宇宙を超えて)

ジョンが、いわゆる初期のビートルズスタイルを捨てたときに戻った場所は、労働者階級の音楽ロックンロールではなく、頭脳・感性を全開にした中流階級的ファンタジーだった事は重要である。
実は、彼にとって、労働者階級という場所は、戻れる場所でも、本来所属していた場所でもなかった事を証明しているからだ。
これは僕の主観なのだが、ジョンのビートルズの後期から、ソロの初期のストレートなロックンロール(ブルース)は、Yer Bluesにしても、I want youにしても、Cold turkeyにしても、I found outにしても観念的に感じられる。
ようするに、サウンドは激しいが、体がノッて来ないタイプの楽曲なのである。

繰り返そう。ビートルズにおいても、解散後もジョンは、労働者階級の生の生活を楽曲に描く事が出来なかったのである。

また、解散後に出した「ロックンロール」(写真一番下)。実はこのアルバム、ジョンの個性がまるで発揮されていない。
あのギラギラとしたジョンが不在なのである。
ここには、懐メロとしてのロックンロールしか存在しないのだ。

ジョンは聡明で正直だ。恐らく彼は、この事、いわゆる労働者階級的ロックンロールでは自分を表現出来ない事を悟っていたんだと思う。

この後、彼は長い沈黙期に入って、子育てに没頭してしまうのであった。

まさむね

THE BEATLES 全曲レビュー

ビートルズは20世紀最大の奇跡である。

1962年にイギリスの地方都市、リバプールから突如現れ、激動の60年代を席巻した。
音楽のみならず、ファッション、ライフスタイル、ビジネスモデル、政治等あらゆる面で、世界中の若者に影響を与え、革命を起した。

ビートルズが残したロック、提起した諸問題は、21世紀の現在でもけっして色あせてはいない。 だからこそ、今(2008年)、もう一度、ビートルズをレビューしてみようと思ったのだ。

でも、時に、極めて主観的-個人的な内容になってしまったことはお許しいただきたい。ちなみに、僕自身は、ちょうどLet It Beがヒットしていた頃、小学6年生だった。ビートルズにかすった世代である。

今後、アップしていくレビューの各曲名の下の★は、現時点での私のオススメ度だ。 ビートルズの曲の不思議さは、昨日、★1つだと思ったものが、次の日に★5つに感じられるという事だ。だから、あくまで一つの参考としていただければと思う。

ビートルズバージンの方には、今後、思う存分、”天才”に触れるという至高の体験を味わってほしい。
また、すでにビートルズを経験されている方々には、再度、ビートルズの事を思い出していただければ幸いだ。

ビートルズはいつでもそばにいるのだから。


レビュー


書評


「ビートルズ都市論」(1) 労働者の町・リバプール
「ビートルズ都市論」(2) 野生と知性の街ハンブルグ
「ビートルズ都市論」(3) 彼らには冷たかったロンドン


勝ってにベスト10シリーズ
リンゴのドラムス ベスト10
楽器演奏者としてのポール=マッカートニー ベスト10
ビートルズ・ワルツ曲 ベスト10
ビートルズドラッグソング ベスト10
ビートルズ・カヴァー曲 ベスト10


評論
ビートルズで最も斬新だったのはジョージ・ハリソンだ
ビートルズを利用して己の思想を語る輩、困ったものだ
09.09.09、ビートルズという名の狂気に触れて欲しい
朝の通勤時間に聴く「ホワイトアルバム」の意味とは何?
まさむねが勝手に再編成した「Let It Be」とは?
若い世代がビートルズをどう感じているのかを知りたい
リマスターCD発売時に再確認させられる自分のオタク性
ビートルズは常に我々に謎を投げかけてくる存在である
ジョンのビートルズ時代の歌詞に見る女性観の変遷
『A Day In The Life』~現代社会にぽっかり開いた穴~
ジョージの未発表歌詞は1967年物だからこそ興味津々
村上春樹とビートルズの「ノルウェイの森」における共通点
w-inds.の龍一とジョンレノンが似ている件
「Dizzy Mizz Lizzy」 ジョン=レノンの孤独の叫びを聴け
「REVOLUTION9」をどう聴くか?それが問題だ!
「REVOLVER」は今でも可能性の中心である
ビートルズの本質を表す「ラバーソウル」というタイトル
兄貴分・ポールに対する弟・ジョージの複雑な反抗心
ビートルズにおける猥歌合戦 ~ポールVSジョン~
ジョンレノンは労働者階級の歌が作れなかった
暴力的なジョンだからこそ、愛と平和を語ったのだ
愛こそはすべての 2面性
ビートルズが胃腸にいい説に関するどうでもいい感想
ビートルズメンバーの人気投票が大体、4:3:2:1なこと
ジョン・レノンミュージアムの廃館はやっぱり寂しいよね
原作を知る者なら、原盤を映画に起用するのは必然的ではない「ノルウェイの森」
やっぱり、この季節はビートルズを意識せざるを得ない
アビーロードが文化的・歴史的遺産となった日
ビートルズ国民投票の結果を受けて一言言いたくなった
「Nowhere Boy」それはあまりにも正直な男の話である
20世紀の奇跡、ビートルズ!

リンク
BEATLES ビートルズ ’69 ☆Abbey Road 40周年☆
ビートルズ・・・いつも心にビートルズ
A Day In The Life ~ 懐かしき1曲
BEATLESを歌おう♪ Yeah Yeah Yeah!
レビューの館/ビートルズ
ビートルズについてのWEBサイト:ビートルズの奇跡的軌跡
A SONG IN THE LIFE ビートルズ1日1曲
B.Songrist
In My Life with the beatles – livedoor Blog(ブログ)
晴れ、ときどきBeatles
ALL THOSE YEARS AGO ~ 過ぎ去りし日々
YOUR BEATLES
お気楽雑記帳

まさむね

PLEASE PLEASE ME

PLEASE PLEASE ME

TOCP-51111
1963年3月22日発売(英)

●1963年2月11日、16時間の間にここに収録された14曲のうち、10曲録音された。
●マーチンは最初「オフ・ザ・ビートルズ・トラック」という名前を用意してた。
●全英チャート29週間連続トップを記録。このアルバムをトップの座から引きずり下ろしたのは「With the Beatles」だった。
●ジャケ写が撮影されたEMIビルは現在では無くなったが、この手すりだけは新社屋に移転されたという。

クォリーメンが結成されたのが1956年4年、このアルバムが発売されたのが1963年3月その間、約、7年間。 ジョン・レノンがデビューするのに、それだけかかっている。 あのビートルズのその後の成功を考えるとなんとも長い下積み期間だ。

この間、ジョンはポール、ジョージと出会い、ハンブルグに行って修行し、いろいろあって、やっとオーディションにひっかかりデビューとなったわけだ。 この間、後にビートルズとして成功するためのいろんな仕込み(自己投資)をしてるんだよね。演奏はどんどん上手くなっていっただろうし、斬新な髪型を始めとするファッションも編み出した。
シュールレアリズム、実存主義など流行りの思想にも触れただろうし、様々な女性たちと恋を重ねただろう。そして、何よりもメンバーの結束が鉄のように固くなった。この7年間は、それらために必要な期間だったのかもしれない。

今、日本のバンドでデビュー前にそれだけの時間、待ち続けるケースはどれだけあるんだろうか。 よくわからないが大抵は、デビューを待てず、夢破れ、普通の仕事に就ついちゃうんだろう。 若い頃の7年間ってのは圧倒的に長い時間だからね。

でも、彼らは待った。っていうか他の生き方なんて考えられなかったのかもしれない。
その期間にたまったエネルギー、これがビートルズ爆発の原動力になったことは確かだ。

このアルバムの聞き所はこのエネルギーそのものだ。

I Saw Her Standing There
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1963/2/11

●1975年のエルトンジョンのコンサートに飛び入り参加したジョンがこの曲を歌うが、その時「昔、僕を捨てた婚約者のポールの曲」という風に紹介したという。


もともと、ポールが、
She was just seventeen, she’d never been a beauty queen.
彼女は17歳、美人コンテストで優勝はしていないけどね
って書いたのをジョンが、
She was just seventeen, you know what I mean?
彼女は17歳、どういう意味かってわかるだろ?
というアイディアを出してそれに決まったと言われている。確か、17歳っていうのは、イギリスでは親の承諾無く結婚できる年齢ってことじゃなかったっけ?
年長者のジョン、さすがに歌詞のテクニックでは、この頃のポールよりも一枚上だよね。

この曲がシングルにならなかった事が不思議。いい曲だ。

Misery
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1963/2/11,20

●当時人気のヘレン・シャピロのために書いた曲。

でも、歌詞が暗すぎるってことで採用はされなかった。

The world is treating me bad… Misery
世の中が私につらくあたる…惨め

それにしても、なんでこんな暗い曲を当時16歳のアイドル歌手に歌わせようとしたんだろう。
そりゃ断られるぜ。でも、断ったほうは後々、後悔しただろうな。レノン=マッカートニーのクレジットだからね。

特に印象に残らない曲。すみません。

Anna [Go To Him]
★☆☆☆☆


◆(Arthur Alexander) V=John 収録日=1963/2/11

●アーサー・アレキサンダーという黒人R&Bシンガーのカヴァー曲。

そう言えば、甲斐バンドにも「アンナ」って曲あったな。 この曲のオマージュ?

ジョンのボーカルが聴き所。

Chains
★☆☆☆☆


◆(Gerry Goffin/Carole King) V=George 収録日=1963/2/11

●黒人ガール・コーラス・グループ、クッキーズのカヴァー。

ジョージの枯れた味。最初から彼の持ち味だったんだね。

Boys
★☆☆☆☆


◆(Luther Dixon/Wes Farrell) V=Ringo 収録日=1963/2/11

●黒人ガール・コーラス・グループ、シュレルズのカヴァー。

リンゴのリードボーカル。バックコーラスで他の3人が張り切っている。リンゴは幸せだ。これで、このアルバム、ポール、ジョン、ジョージ、リンゴと4人のボーカルナンバーがそろったわけですね。

リンゴファンのための曲。彼らしいボーカルが、かわいい。

Ask Me Why
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1962/11/26
Please Please Me のB面として発売。


何故か、私はこの曲が聞きたくて、でも、お金もなかったため、Please Please Me のシングル盤を購入したという思い出がある。
なぜなら、この曲をラジオで聞いて忘れられなかったからね。
その時そのラジオ番組で、Baby you’re rich man とWe ca work it outも流れたんだ。
どういった番組かも忘れたが、たまたま録音していて何度も聞いたもんだよ。

Love Me Doより名曲だと思うんだが、何故シングルA面にならなかったの?当時のマーチンの狙いがわからん。

Please Please Me
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1962/11/26
●もともとスローテンポだったのをマーチンがスピードを上げるように指示。大ヒットにつながる。
●ポンキッキでもよく流れてたから、30歳代の人にも馴染みのある曲なんじゃないかな。


Beatlesは、最初から母性本能をくすぐることをコンセプトにしていた。それが、成功したんだろうな。
デビューのLove Me doも、このPlease Please Meも「お願い型命令形」の歌だからね。
そしてその後、From me to you抱きしめたいとかのリアクションでビッグな存在になっていくんだよ。ビートルズの成功のためには、デビューから最初の2曲の、こういった低姿勢から始まったってのがポイントだったんだと思うよ。そういえば、コンサートとかで見せる彼らの、お辞儀の深さ凄いよね。そういう意味でエプスタインのプロデュース力はたいしたもんだ。だって当時、30歳前でしょ。本当、エプスタインさんも天才だよな。

ビートルズの出世作。熱気が凄い。

Love Me Do
★☆☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1962/9/11
●ビートルズのデビュー曲。


中山康樹氏も言ってるが、なんでこんな曲がデビュー曲なんだって正直俺も思ってる。マーチンは本気でビートルズを売る気があったんだろうか。その後の成長のために、一度は壁をつくったのか?星一徹じゃないんだから、そんなことはないか。それでも、後に全米No.1になっちゃったんだから、当時の勢いってのは凄かったんだろうな。

デビュー曲にしては地味な曲。

P.S. I Love You
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1962/9/11

●リンゴはマラカス。アランホワイトがドラムスを担当。

リンゴ寂しい~(財津一郎風に

昔、「優」君って名前の友達がいたんだけど、この曲を聴くと、彼の事、思い出すんだよな。
ポジティブなポール得意なメロディだよね。

この曲もそうだし、All my lovingもそうだけど、ポールは電話より、手紙の方が好きみたいだね。

ポールの初期の名曲。

Baby It’s You
★☆☆☆☆


◆(Hal David/Baney Williams/Burt Bacharach) V=John 収録日=1993/2/11,20

●バートバカラックの曲 。


これもジョンの歌唱力で持ってる曲。「Meet the Beatles」っていう日本版でよく聴いたけど、なんとなく聴いてただけで、メチャクチャ好きって曲じゃなかったな。

シャラララララー♪っていうのが印象的でした。

Do You Want To Know A Secret
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=George 収録日=1993/2/11

●アメリカではサンキューガールのB面ながら、No.2のヒットとなった。


ジョンとポールとマーチンとエプスタインによるジョージハリソン=奥手男プロデュース計画の第一弾がこの曲。
Listen
Do you want to know a secret. Do you promise not to tell, whoa oh, oh

聞いて。 僕の秘密知りたい?誰にも言わないって約束する?
Closer
Let me whisper in your ear
Say the words you long to hear
I’m in love with you

じゃあそばに来て。耳元でささやいてあげる。 君が待ちわびている言葉さ。実は君が好きなんだ。

なんか、幼児がお母さんに向かって言うような愛の告白だな。そこまで子供扱いされていたのか、ジョージ。ちなみに、このthe words you long to hear君が待ちわびている言葉っていうのはジョンの得意のフレーズなんだ。All I’ve Got To Doでも使ってるからね。

ジョージ頑張ってるな。アイドルとして。

A Taste Of Honey
★★★☆☆


◆(Bobby Scott/Ric Marlow) V=Paul 収録日=1993/2/11
●邦題は「蜜の味」 。


ポールのハンブルグ時代からの十八番。この曲をライブで演るとき、ポールは「次はジョンの嫌いな曲をやります」って言ってたらしい。

ごめん、ポール、僕もそんなにこの曲好きじゃなかったりするんだ。

There’s A Place
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1993/2/11

●ハモニカが目立つ曲。


この曲の流れは、「I’ll Cry Instead」「Nowhere Man」と続いていく。本質的に引きこもり体質のあるジョンの内省ソング。この3曲をジョンの引きこもり3部作と呼ぼう。3部作の冒頭の詞を書いてみるね。
1)There’s A Place
There is a place, Where I can go, When I feel low, When I feel blue.
And it’s my mind, And there’s no time when I’m alone.

気持ちが沈んだとき、憂鬱なとき僕がいつもいく場所がある
それは僕の心の中 ひとりでいると時のたつのも忘れる

2)I’ll Cry Instead
I’ve got every reason on earth to be mad, ’cause I’ve just lost the only girl I had.
And if I could get my way, I’d get myself locked up today,

But I can’t so I cry instead.

頭がおかしくなってもしかたがない たったひとりの恋人に捨てられたんだ
できるものなら、いますぐ閉じこもっちまいたいけど そうもいかない以上
僕は泣くしかないのさ

3)Nowhere Man
He’s a real nowhere man Sitting in his nowhere land
Making all his nowhere plans For nobody

あいつはどこへも行き場のない男 実在しない空想の国に閉じこもり
誰のためともなくどうなる当てもない計画をたてる

ねっ、みんな共通してるでしょ。

ザラザラした感じがいいね。初期の名曲。

Twist And Shout
★★★★☆


◆(Phil Melody/Bert Russell) V=John 収録日=1993/2/11

●1963年11月「ロイヤルバラエテシィショー」に出演したビートルズ。ジョンは、「次の曲ではみなさん全員に参加していただきたく思います。安い席のお客さんは手拍子をしてください。 そうでないお客さんは宝石をジャラジャラならしてください」と言ってこの曲を演奏した。
●1963年2月、Please Please Me セッションで最後の演奏された。この時ジョンは風邪を引いていたが、最後、上半身裸で演奏したという伝説が残っている。


70年代ラジオ日本でやってたビートルズ番組では最初にこの曲が流れた。ビートルズの代表曲のひとつだが、オリジナルじゃないんだよな。オリジナルはアイズレー・ブラザーズ。俺は、知らないバンド。

ある意味、ビートルズを代表する汗曲、熱曲、凄曲。ここからすべてが始まった...

WITH THE BEATLES

WITH THE BEATLES

TOCP-51112
1963年11月22日発売(英)

●前作に引き続き、全英チャート21週連続No.1。
●イギリスでは発売6日で53万枚を売り、9月にはイギリス人による史上初のミリオンセラーアルバムになった。
●14曲の内訳は、オリジナル8曲、カヴァー6曲。

With the Beatles のジャケット写真。僕たちにとっては、Meet the Beatlesのジャケットなんだけどね。

ハーフシャドウのジャケット、顔は笑っていない。およそアイドルのジャケットではないとレコード会社は反対するが彼らはそれを押し切り、発売。勿論の大ヒットだ。
14曲中、6曲はカヴァー曲が収録された。彼らが敬愛する他ミュージシャンの曲だ。

彼らの自己主張が感じられるジャケ写と選曲。よくブラックとも形容されるアルバムだが、僕はそのあたりの影響関係の業界マップはよくわからん。
でも彼らの音楽へのこだわりはわかる。この頃既に、ユーザーが求めるものと、自分達がやりたい事とのかすかなズレが現れ始めていたのかもしれない。
前作のエネルギーの強さは本作でも持続している。

このアルバムで聞き取るべきは、そのエネルギーにプラスして彼らの音楽的こだわり(自己主張)だ。

It Won’t Be Long
★★★★★


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1963/7/30
●もともとシングル用に作られたが結局はこのアルバムのオープニングとなる。


この頃のジョンの歌はまだ詞よりも音楽が優先している。曲の勢いがいいよね。僕の大好きな曲の一つだよ。
It won’t be long yeh, till I belong to you
僕が君のものになるのはもうすぐだ。

Be longbelongがちゃんと韻を踏んでるのが嬉しい。
long year~♪ ロンゲー♪(※長髪の意)に聞こえるのだ。僕には。

メロディといい、演奏といい、疾走感が最高の名曲。

All I’ve Got To Do
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1963/9/11
●ジョンがスモーキー・ロビンソン風に作ったという曲。

Whenever I want you around yeh
All I gotta do Is call you on the phone

君に会いたくなったら 僕は電話するだけでいい

ビートルズの2作目アルバムのWith the Beatlesのこの曲では、電話するのは男。
でも3作目のヤアヤアヤアのAny time at all では電話してくれたら、すぐに行くよっていう風に微妙に立場が入れ替わる。これは何を意味するのか。
あるいは何も意味しないのか。

なにげに秀作。

All My Loving
★★★★★


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1963/7/30
●後日、ジョンが自分が作らなかったことを悔やんだという。ジョンの3連符のギターも人気が高い 。


高校の頃、この曲をバンドでやったな。M君のギターが上手かったな。今でも懐かしい思い出だよ。
もともとメロディがいいから、楽しいんだよね。シングルで発売されていたらもっと人気が出ただろうな。
癖の無い素直なメロディはこれぞやっぱり天才の仕事ってことなんだろうな。
歌詞もストレートで自信に満ち溢れたポールらしいもの。

非の打ち所の無い名曲だ。

Don’t Bother Me
★★★☆☆


◆(George) V=George 収録日=1963/9/12
●ジョージの初作。


あんまり曲とは関係ないのだが、シンコーミュージックのビートルズ全詩集(改訂版)での誤植を僕は2つみつけた。
ひとつはこの曲の最初のサビの部分のBecause I know she’ll always beBecauseBacauseになっている。
そしてもうひとつは、Blue Jay wayの2番、very longvery lnogとなっているのだ。
両方ともジョージの曲ではないか。編集氏の目もジョージの詩には甘いということか。あるいは読者にあんまり読まれていないため、苦情が無いということなのか。

また、恩蔵茂氏の「愛の事典」によると発売当時の音楽誌では、ドント・ブラザー・ミーっていう誤記があったらしい。そういう運命なのか。この曲は。

ジョージの落ち込みソング。演奏も重い感じがする。気のせいだろうか。

Little Child
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1963/9/12,10/3
●もともとリンゴのために書かれた。


僕はこの曲で、littleの発音がリトルじゃなくて、リルだってことを知ったんだよな。もこのlittle Child って邦訳したら、”ちびっこ”?

ジョンがリードボーカルとハーモニカを担当している。いい声だな。ジョン。

Till There Was You
★★★☆☆


◆(Meredith Willson) V=Paul 収録日=1963/7/30

●ミュージカルのスタンダードのカヴァー曲。

僕は実は、ずっとこの曲はポールのオリジナルだと思っていたのだよ。

いい曲だよね。

Please Mr. Postman
★★☆☆☆


◆(Dobbins etc) V=John 収録日=1963/7/30

●マーヴェレッツのデビューヒット曲。

カーペンターズも後にカヴァー。ヒットさせたよね。From my girlfriendのところをFrom my boyfriendって歌ってたな。

今の感じからすると、「郵便屋さん止まって」というのは時代錯誤か。

Roll Over Beethoven
★★★☆☆


◆(Chuck Berry) V=George 収録日=1963/7/30

●もともとはジョンの十八番。
●チャックベリーの作曲。
●邦題は「ベートーベンをぶっとばせ」。


ジョージってこういう曲歌わせると舌がよくまわるよな。しかもリードギターも弾いているし。
高校の時、演ったけど、上手く出来なかったな。

ジョージの舌の転がしが好き。

Hold Me Tight
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1963/9/12

Please Please Meセッションで収録されたが没となった。

昔持ってた「Meet the Beatles」にも入っていたな。それだけの曲だけど。

地味な印象があるけど、昔は結構聴いたんだよ。

You Really Got A Hold On Me
★★★☆☆


◆(Smokey Robinson) V=John,George 収録日=1963/7/18
●レットイットビーセッションでも演奏された。


このアルバム、Don’t bother meRoll over BeethovenDevil In Her Heartとこの曲、4曲もジョージがリードボーカルをとっているんだな。 With the Beatlesは、ジョージ率1位アルバム。数でもホワイトアルバムと並ぶ。

ジョンとジョージがリードボーカルとしてクレジットされているのこの曲だけ。その意味で珍曲。

I Wanna Be Your Man
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Ringo 収録日=1963/9/12,30,10/3
●ローリングストーンズにプレゼントした曲。ストーンズの2曲目のシングル。
●邦題の「彼氏になりたい」はストーンズバージョンにのみ適用。


たしかに、この曲の歌詞荒っぽいよな。ジョージが歌うDo you want to know a secret?みたいな繊細な青年って感じじゃなくて野卑な雰囲気がプンプンする。あまりにストレートだ。おそらく、エプスタインは、リンゴのキャラをそういった労働者階級の素朴なボーイみたいなのにしようとしたんだと思う。
ストーンズにこの曲をプレゼントしたってのは、ストーンズが後にずんずん進む不良路線を見据えていたんだろうな。
ジョン&ポールのプロデューサとしての慧眼も大したものだ。
それにしても、ビートルズの面々は労働者階級で不良だったのをスマート、小奇麗にしてデビューしたのに対し、ストーンズは中流階級なのに、逆に不良としてデビューした。この入れ替えが面白いよな。
結局、ジョンはその自分のイメージによる桎梏に対してどうしようもなくなっていくんだけど、ストーンズは結局、今の時代も基本的にはその路線で続いている。それはそれで凄い。

ポールとジョンがリンゴに歌わせた労働者階級的ラブソング。

Devil In Her Heart
★★☆☆☆


◆(Richard Drapkin) V=George 収録日=1963/7/18

●黒人女性ボーカルグループ・ドネイズのカヴァー。

ジョンとポールが「彼女の心には悪魔がいるんだぜ」っていうとジョージが「ノーノーそんなことないよ」って答える。純情な弟をからかうお兄さんたちっていう掛け合い。このあたりにも、ジョージがどのようにプロデュースされていたのかわかるよね。ジョージハリソン=奥手男プロデュース計画の第ニ弾と認定しよう。

渋い選曲だ。

Not A Second Time
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1963/9/11

●タイムズ紙のレビューで「結尾の風にようなカデンツァの自然さ」を学術的に賞賛された。

マーチンが間奏で弾くピアノ、無表情だが、なんとなくこの曲にあっているのが面白い。
歌詞はジョン特有の心の狭さが出ていて面白い。2回目は許さんぞっていうのがコンセプトの曲だ。You can’t do that前夜を感じさせる曲と言える。

タイムズで絶賛される程の曲でしょうか。

Money
★★★★☆


◆(Janie Bradford/Berry Gordy Jr.) V=John 収録日=1963/7/18,9/30

●バレット・ストロングのカヴァー曲。
●1969年、ジョンは、ヨーコやクラプトンと出演したトロントでのロック・フェスティバルでも演奏している。


ジョンお気に入りのR&Rだ。悪意に満ち満ちたジョンの声は魅力的だ。マーチンのピアノも前の曲に続き、合ってるような合ってないような。いや、合ってるんだろう。たまに、バラエティ番組のジングルに使われるが、おっと思ったらいつもフェードアウトしちゃう。そんな印象のある曲だ。Can’t buy me loveMoneyって同じステージでやったことあるのかな?

ロッカー・ジョンの面目躍如たるボーカルが聴ける。

A HARD DAY’S NIGHT

A HARD DAY’S NIGHT

TOCP-51113
1964年7月10日発売(英)

●A面は映画「ビートルズがやってくるヤァヤァヤァ」のサントラ+Can’t buy me love、B面はその他新曲
●全曲レノン=マッカートニーオリジナルだが、ジョン主導の曲が11曲、ポールの曲が3曲。ジョンのソロアルバムの印象が強い。
●全英、全米ともにナンバー1を獲得。

全世界をビートルズ旋風が吹き荒れる中で発売された本作品。

この作品をジョンの音楽的ピークと捉える評論家も多い。よくみるとそんなジョンの作品も2つの系統にわけることが出来る。A Hard Day’s Night恋する二人家に帰れば等、仕事で疲れたけど、家に帰って安らごうという“幸せの恋“を歌った曲。

そしてもう一つは、If I fellTell me why僕が泣くYou can’t do thatの流れ。情けなくときに暴力的なジョンのもう一つの面を示す曲だ。
ジョンの中で何かが変わってきた。欲しいものを手に入れたけど、満たされない自分、その心の叫びがこのアルバムで聞くことが出来る。

また、ジョンから周回遅れのポールの音楽的成長がAnd I love her今日の誓いなどで見られる。

しかし、一つ聴き所は何かといわれれば、ジョンの音楽的絶頂と内面の確執、この微妙なズレだと思われる。

A Hard Day’s Night
★★★★★


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/4/16
●邦題「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ」の名付親は当時ユナイト映画宣伝部水野晴男氏というのが定説。
●タイトルはリンゴが文法を間違えてつぶやいた一言(いわゆるリンゴ語)から。
●トヨタ・ラクティスのCMにカヴァーバージョンが使用される。


ビートルズが一番ノッていた時代の代表曲。オープニングのジャ~ン♪が特に有名だが、どのように弾いているのかはいまだ定説がない。
少年時代にこのコードを一生懸命練習したゲイリー・ムーアがのちにジョージに会ったとき、ジョージが弾いて見せたコードに対して「それは違う」と指摘したという話もある(「愛の事典」より

家に帰ったら君が待ってるパターンは、この曲の他、When I get homeWaitラバーソウル収録と続く。人呼んで「帰宅三部作」だ。ただ、この三曲、微妙に進化が見られるところが面白い。

When I’m home feeling you holding me tightA Hard Day’s Night
家に帰ったら、いつでも君が抱きしめてくれる
I got a whole lot of things to tell her, When I get homeWhen I get home
家に帰ったら、彼女に話すことが山ほどある
Wait till I come back to your side We’ll forget the tears we’ve criedWait
もうすぐ帰るから待っててくれ 涙を流したことは忘れてしまおう

時間がたつと男と女の関係も成熟してくるということか。それにしてもA Hard Day’s Nightの時代がいいよな。
楽曲的には、この曲の疾走感がたまらない。ジョンとポールのボーカルが入れ替わるところなんか最高。

ジョージがこのスピードじゃあリードギターを弾けないってんで、もっと遅い速さで録音して回転数をあげて再生した、なんていう微妙に情けない話も伝わっている。 でもシェアスタジアムでのコンサートでは弾けてたね、ジョージ。

オープニングのジャーンからエンディングのフェードアウトまで、全て完璧。

I Should Have Known Better
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/2/26
●邦題は「恋する二人」 。


Should have + 過去完了形 ってやったな「~すべきだったけど、しなくて残念!」ってヤツだよな。 「ドラゴン桜」って漫画でエアロビやらせながらビートルズを暗記させる英語の先生がいたが、この歌なんかいいな。毒が無くて。

間違ってもCome togetherHappiness is a warm gun は勉強にならんからやめとけ。あと、時間の無駄だから、Revolution 9とかFlyingとかもNGね。

ジョンにはめずらしく、屈託の無いラブソング。

If I Fell
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1964/2/27

●邦題は「恋に落ちたら」。
●映画では、ジョンがリンゴを励まそうと演奏をはじめる。


この曲におけるジョンとポールのハモリは最高だと思う。感性一発でキメたみたいな感じでどっちが上でどっちが下なのか、あれ、今、上だったジョンが下になったみたいな感じで、素晴らしい。

If I fell in love with you Would you promise to be true
僕が君と恋に落ちたら裏切らないと約束してくれる?

これから女の子と付き合おうかどうかって時に、こういう保険をかけるようなセリフはどうなんだろう。こういのは直接聞くもんじゃないだろう。弱弱しいジョンの人間味溢れる歌詞だな。

ところで、この時期のビートルズの歌詞を見るとそのストレートさがまぶしい。弱弱しいときは徹底的に弱く、強気に出るときは暴力敵にまで強気、好きな相手には屈託の無い愛を、このストレートなエネルギーがビートルズの魅力だったんだろうな。

それにしても「恋に落ちる」って実は瀕死語だよね。

ジョンとポールのハーモニーが素晴らしい名曲。

I’m Happy Just To Dance With You
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=George 収録日=1964/3/1
●邦題は「すてきなダンス」。


ジョンの曲だが、敢えてジョージに歌わせる。だって歌詞がこんな感じだからね。

I don’t need to hug or hold you tight
キスしたいとも手を握りたいとも思わない

’cause I’m happy just to dance with you
君と踊っていれば幸せなんだ

「家に帰ったら、いつでも君が抱きしめてくれる」ってA Hard Day’s Nightで歌ってるんだから、ここで今さら、ダンスだけでいいとは、ジョンも歌いにくかったんだろうな。
と同時に、ビートルズの4人に対して、ある程度、キャラをプロデュースしようっていうエプスタインの意図も感じるな。レノン=マッカートニー作でもう1曲ジョージが歌う「Do you want to know a secret」も「僕の秘密知りたい?誰にも言わないって約束する?じゃあそばに来て。実は君が好きなんだ。」とこんな感じ。この「すてきなダンス」と共通しているよね。ジョージは明らかに奥手の坊やってキャラをやらされている。ジョージハリソン=奥手男プロデュース計画の第3弾だ。

ちなみに、ジョンは知的でときにちょいワル。ポールは、かわいくて屈託が無い、そしてリンゴは素朴で明るいって感じかな?もっと検討要かも。

ジョージのボーカリストとしての個性が際立つ初期の名作。

And I Love Her
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1964/2/27
●映画の中ではテレビ中継のリハーサル場面で演奏風景で流される。


初期ビートルズを代表するバラード。高校の時、バンドで演奏したな。僕はドラムやってたんだけど、リムショットってのがちょっと退屈だったな。

この頃では随一。ポールの秀作。

Tell Me Why
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/2/27
●ジョンが映画用に急遽書いたといわれている。


歌詞的に言えば、なんとなく、If I fellの後日談といった趣き。裏切らないって約束した(約束させられた?)女の子がしでかしたなんらかの裏切りをした。それを攻める男の歌だ。


Tell me why you cried, and why you lied to me
なぜ泣いたのか、なぜ嘘をついたのか 言ってみろよ

If there’s something I have said or done, tell me what and I’ll apologize,
if you don’t really can’t go on, holding back these tears in my eyes

なにか気に障ることがあれば言ってくれればすぐに謝るよ
でないと泣き崩れてしまいそうだ こみあげる涙を必死にこらえる僕

曲の勢いと歌詞の情けなさ、これがこの歌のポイントだ。

Can’t Buy Me Love
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1964/1/29,2/25
●サビからはじまるというアイディアはマーチン。さすが辣腕プロデューサ。


ジョンとポールのA面獲得3大名勝負。第1ラウンドが、このCan’t buy me love VS You can’t do thatだ。
愛は金じゃ買えない」と屈託無いポールと、「お前があいつと話してるのを見たらコテンパンにしてやる」と暴力的なジョン。当時のエンドユーザーの嗜好を考えればやっぱりプロデューサならポールを選ぶよな。で大ヒット。

ちなみに、A面獲得3大名勝負。
第2ラウンドはHello Good Bye VS I am the Walrus。この時も超シンプルでポップなポールのHGが難解で超個人的なジョンのWalrusを蹴落としてA面を獲得。大ヒット。そして、 第3ラウンドがHey Jude VS Revolution。優しさに溢れたHey Judeが、「毛沢東の写真を持ち歩いているようじゃ革命なんておぼつかない」と嘯くRevolutionを押しのけてA面を獲得。大大大ヒット。

ただ、時の流れというのは、因果なもので、現代ではそれぞれ、You can’t do thatI am the WalrusRevolutionの方が魅力的に感じる。僕にとってということだけどね。

この曲を歌う時のビートルズのモップ頭振りのかわいさが忘れられない。

Anytime At All
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1964/6/2,3
Anytime At Allのシャウトを3回繰り返すが、2回目はポール。


Any time at all, all you’ve gotta do is call and I’ll be there
いつだってかまわない いつでもいいから、好きなときに電話を送れよ。すぐそっちに行くよ

こういう何気なく作った曲にジョンレノンの真実があらわれるものだ。
3大話風に展開させてみるとIf I fellで「僕が君と恋に落ちたら裏切らないと約束してくれる?」って保険をかけて恋をはじめる。
Tell me why で「なぜ嘘をついたのか 言ってみろよ」と保険もむなしく彼女の行為に傷つく。
そして、Anytime At Allの恋ではより慎重に、電話をしてくれたら(あくまで電話をしてくれたら)そっちへ行くよと、なるべく傷つかないように自分を守ようになる。また保険をかけたのだ。人はこれらのストーリーを保険系と呼ぶ。

ジョンって本当にわかりやすいのね。この正直さこそ、アーティストとして最も大事な資質だと思う。

勢いのある曲です。

I’ll Cry Instead
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/6/1
●邦題は「僕が泣く」。

●映画の中でも演奏される予定だったが、監督のリチャードレスラーが気に入らず、アルバムのB面に収録される事となる。

しかし、激しい歌詞である。

And when I do you’d better hide all the girls,
’cause I’m gonna break their hearts all ’round the world.
Yes, I’m gonna break them in two,

そのときは、女という女を隠しておかないと
世界中の女の心を傷つけてやる
ハートを真っ二つに引き裂いて恋に狂った男のパワーを見せつけてやるんだ。

If I fellTell me whyAny time at allの3大話には、続きがまだあった。

それでもフラれた男の行き着く先がこの、狂乱だ。リチャードレスターが映画に入れたくなかったのはわかるよね。

僕が泣く」って邦題はどうにかならんか。単純に訳しただけじゃん。名曲が泣いているよ。

Things We Said Today
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1964/6/2,3
●邦題は「今日の誓い」。
●1989年、1990年の世界公演旅行でポールが演奏。


ジョンの「傷つきたくないでも恋したい」っていう恋愛感情に対して、あくまでも自身満々で前向きなポール。

Someday when we’re dreaming, Deep in love, not a lot to say.
Then we will remember The things we said today

いつか言葉もいらないくらいほど深い愛し合い
一緒に夢見る日がきたとき 僕らが思い出すのは二人が交わした今日の誓い

ここには、女の子、そして人間への信頼感が確実に存在する。
でも、逆にこの自信満々な態度が後々、ビートルズにヒビを入れることになったのでありました。

後々、ポールのライブでもよく演った曲。ポール好きだったんだろうな。

When I Get Home
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/6/2
●邦題は「家に帰れば」。


ジョンはこの時期、この帰宅系(早く家に帰りたいという心情を歌った系統)の曲と保険系(条件をつけながら、求愛する系統)の2つの系があるが、これは、勿論、帰宅系。「帰宅三部作」の2作目だ。

ただ、スタンスは早く家に帰りたいのに、それを邪魔するヤカラに対する批判に力点が置かれている。素の自分の感情を吐露した歌かも。実際に、エプスタイン、つまんない取材とかアポとか一杯入れたんだろうな。

これもこの頃のジョンの勢いがそのまま出た曲。

You Can’t Do That
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/2/25
●リードギターはジョン。
●シングルA面をCan’t buy me love と争う。 (歌詞が過激すぎたためと言われている)


ジョンの3大ギターソロのうちの1曲。残りはHoney pieGet back。このかき鳴らすようなギターソロは、The Endの名演とも通じる。
中山康樹氏をして「すべて完璧」と評したこの曲。不思議なのはこの曲が孤高だって事。ビートルズナンバーで、音楽的にこの曲の路線で続く曲が俺にはみあたらないのだ。ストーンズなんかの方がこれに近い路線になっていくと思われ。

歌詞的に言えば、しつこいようだが、保険系のIf I fell Tell me why Any time at allI’ll Cry Insteadにまだ続きがあった。男はさらにモンスター化して帰ってきたということか。おそろしいジョン…

I got something to say that might cause you pain,
If I catch you talking to that boy again,
I’m gonna let you down,
And leave you flat, Because I told you before, oh, You can’t do that.

ご機嫌をそこねるかもしれないが 言っときたいことがある
あいつとは二度と口きくんじゃない
今度見つけたらとっちめてやる
コテンパンにしてやるからな
前にもはっきりいったはずだ そんなことするなって

この曲をナンバー1に推す人も多い。通好みの1曲。僕も好き。

I’ll Be Back
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/6/1

●ジョンが父親・フレッドに宛てた歌。

You know if you break my heart I’ll go, But I’ll be back again

僕を悲しませるなら出て行くよ でもまた戻ってきちゃうだろうな

優柔不断なジョン。この優柔不断は、死ぬまで続く。
でもこういうところがジョンの人間味なんだと思う。ジョンのこと好きっていうことは、こういった優柔不断さも含めてすべてを愛するってことだと思うよ。
人は何か行動を起こすとき、逆に別の可能性を捨てる。自分の選択した道を信じて行こうという前向きな姿勢、俺はこれはポールの歌詞に感じる。逆に、捨ててしまった別の可能性に対する愛惜の念を膨らませる。こういう後ろ向きな姿。これはジョンの守備範囲だ。
圧倒的なポールの曲の魅力に打ちのめされながら、ジョンの暗い詞にも後ろ髪惹かれる。それが僕のビートルズを聴くときのスタンスだな。

ちなみに、ジョンの優柔不断はこの後、形を変えながら、彼の詞の中で散見されるようになる。

これはStrawberry fields foreverの一節だが、この優柔不断さは、まどろみ時の夢なのか現実なのか、その判断がつかない微妙な状況ってのが伝わってくるね。

Always, no sometimes, think it’s me, but you know I know when it’s a dream.
I think I know I mean a ‘yes’ but it’s all wrong, that is I think I disagree.

これが僕だといつも、いや時々思う けれどそうなんだ。それは夢かもしれず…
そのつまり、“そうだ“と言っても それはみんな間違いで…
結局僕は同意してないんじゃないかと思う

また一番、有名な優柔不断といえば、Revolution1のそれだ。

We all want to change the world
But when you talk about destruction
Don’t you know you can count me out in

誰だって世の中を変えたいと思ってる
だけど、破壊行動に頼りたいというのなら
僕は加担する気はない、いや、ある

この3曲(I’ll Be BackStrawberry fields foreverRevolution1)をジョンの優柔不断三部作と呼びたいな。

アコスティックな曲。微妙な名曲。

BEATLES FOR SALE

BEATLES FOR SALE

TOCP-51114
1964年12月4日発売(英)

●1964年のクリスマスセールに間に合わせるため、作られたアルバム
●14曲の内訳は、オリジナル8曲、カヴァー6曲
●全アルバムの中で最もアーシーな色彩を帯びた異色作(ザ・ビートルズ大全)

ジャケットを見るといかにも不機嫌な4人がこちらを向いて立っている。

疲れたというべきか、やつれたとでも言うべきか。そんな4人が立っている。

疲れてくると段々手抜きとか惰性とかが見られてくるのが普通だ。しかし、このアルバムには、それどころか、新しい楽器(ティンパニー、アフリカンドラム等)への挑戦、新しい詩の境地が見られる。
人気の絶頂にありながら、No Replyではストーカーのような姿をさらし、I am a loserでは負け犬と自分を断じる。その内面の絶望は普通だったら、ユーザーのニーズからかけ離れたものだと思うんだが、この作品も売れに売れてしまう。

ジョンの音楽的絶頂は続いているのだ。

No Replay
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/9/30
●もともとトミー・クイックリーのために書いた曲。


ジョンが始めて書いた物語風の歌詞。でもポールのそれとは違って、(I nearly died)死ぬほどつら~いっていう暗い歌詞。別の男と手をつないで家に帰ってきたのを目撃、その娘の部屋に明かりが点いている。ところが、電話をしても「娘はおらん」と言われたジョン青年。絶望的になってもしかたがない場面ではある。

今の時代ならストーカーと言われるかもしれないが、似たようなシチュエーションは文学の世界にはあるよね。古事記から、源氏物語から、田山花袋の「蒲団」、川端康成の「みずうみ」とかもそうだし、映画で言えば、『卒業』『ヴェニスに死す』『ニューシネママラダイス』とかもそうだし。

ちなみに、フィンランドに住むフィン族では、夜這いすると娘のお父さんが出てきて、その人と戦って勝つと娘がもらえるっていう習俗があるらしいよ。さすがに最近ではその習俗も儀式的なものになっているみたいだけどね。

でもこの曲はそれ以前の問題だったな。返事すらない(No reply)んだもんな。わかるよ、ジョン。

ジョンのリアルで切ないラブソング。

I’m A Loser
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/8/14
●ジョン自身ディランの影響を受けたという公言する曲。


ジョン自身、「僕のディラン時代の曲だ。僕の中のある部分は自分を負け犬だと思っていて、別の部分では全能の神だと思っている。」との述べている。でもさ、ビートルズとして人気絶頂でさ、お金も名声もなんでも手中に収めたジョンが歌うっていう落差が凄いよね。ジョンよ、お前が負け犬だったら、僕はどうなっちゃうんだ。なんか共感できるようなできないような曲。No Replyは結構共感できるんだけどね。

歌詞では次のところが好きだな。

Although I laugh and I act like a clown
Beneath this mask I am wearing a frown
My tears are falling like rain from the sky
ピエロみたいにはしゃいでいても
この仮面の下には不機嫌な顔が潜んでいる
雨のようにとめどなくこぼれる涙

この曲を聞いたあとで、ヤァヤァヤァとか四人はアイドルとか見ると、とっても痛いよね。
さて、この部分の
My tears are falling like rain from the skyですが、普通だったら、上記の訳なんだろうけど、僕は敢えて、「空から雨のようにこぼれる僕の涙」と訳したい。なんだか空いっぱいにある巨大目、ダリの絵のような風景を想像しちゃいます。

ジョンのハーモニカによるソロもいいし、ポールのランニングベースもいかしている、でも実は暗い詞の曲だ。

Baby’s In Black
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1964/8/11
●ジョンとポールが最初から最後まで二人で歌うのはこの曲だけ。


Baby’s in black and I’m feeling blue
あの娘の黒い服が僕をブルーにさせる(内田久美子訳)

日本のロマンポルノとかも、喪服の女にそそられてみたいなのあるけど、こういう劣情って洋の東西を問わないんだよね。弔問客には気をつけろ(あるいは、弔問客に期待しろ)っていうことか。でも色を使うと詩はロマンチックになるよね。宇多田ひかるの「colors」もなんだか似たような歌詞あったよね。

さて、色で気分を表すっていえばYes it isにもこんなフレーズがあった。

For red is the color that will make me blue
赤い服が僕をブルーにさせる

おい、文法的にはこっちの方がわかりやすいよね。赤でも黒でもブルーになるのは変わんないんだけどね。

ちなみに、東京公演の時、ポールが4分の3拍子(?)にあわせてヘフナーをブルンブルン揺すって弾いていたのが印象的だったよね。

ビートルズでは珍しいワルツロック。

Rock And Roll Music
★★★☆☆


◆(Chuck Berry) V=John 収録日=1964/10/18
●日本ではシングルカットされ大ヒット。
●チャックベリーの1957年の曲のカヴァー。


日本武道館での東京公演でジョンが一発目に弾いた曲。僕はその昔、記録映画とかでみて、最近、アンソロジーDVDで見た。
結構つらい演奏(アンソロジーでも演奏がひどくなってきたっていう流れの中で東京公演の映像が使われてたけどね)だ。レコードのこのバージョンにしたって、たしかに、Twist & Shoutのような盛り上がりがなくて、繰り返し。
僕は、ジョンがこの曲大好きってことが伝わってきて、好きだよ。ただし、ビートルズのベストって推すのはつらいかも。

でも、この曲といえば、昔(70年代)とかに、Beatlesベスト10みたいな番組でこの曲が5,6位に入っているのを聞いてなんとなく違和感があったな。え~、そんなに人気あるのみたいな。

力強いボーカルだよね。日本では特に人気曲。

I’ll Follow The Sun
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1964/10/18
●ポールが10代の頃にひとりで作った曲。


But tomorrow may rain, so I’ll follow the sun
でも、明日は雨になるかもしれない だから僕は太陽を追っていく

10代のポールの凛々しい感性溢れる歌詞だよね。楽曲的には、その頃から、ポール節っていうか、独特のメロディラインをもっていたことに驚かされるよね。よく聴くと、ポールが歌っているところとジョンが歌っているところがあるんだよね。このあたりもシャレてる。佳作だと思うよ。

早熟なポールの才能が余すところなく発揮された名曲。

Mr. Moonlight
★★★☆☆


◆(Roy Lee Johnson) V=John 収録日=1964/10/18

●ビートルズ東京公演の番組で羽田からの高速を走る車の映像のBGMとして流れたことで有名。
●アフリカンドラムを叩いているのはジョージ。


ジョンの「前奏なしの歌いだしベスト3」のうちの1曲。
ちなみに、その他の2曲は、Nowhere manIf I fell

ビートルズの大ファンで自身、カヴァーアルバムも出しているつんくが同名の曲をモーニング娘。に歌わせているよね。ちなみに、つんくは、後藤真希の「今にきっと ~In my life」とか、これもモーニング娘。の「恋愛レボリューション21」とか、エコモニ。の「Help!!暑っちい地球を冷ますんだ」とか、「浮気なハニーパイ」カントリー娘。 に紺野と藤本(モーニング娘。)とか、ビートルズを想像させるタイトルが結構あるんだよ。

なんといってもビートルズ来日の時の映像が印象的。

Kansas City~ Hey, Hey, Hey, Hey
★★★☆☆


◆(Lieber/Stoller)(Richard Penniman) V=Paul 収録日=1964/10/18
●リトル・リチャード のカヴァー曲。


こんなエピソードがある。ポールが、「Kansas City」で行き詰まっていたとき、 「しっかりしろよ、お前の力はそんなもんじゃないはずだ、頑張れ!」と言ってジョンが励ましたというのだ。
後に、1997年にジョージ・マーティンの呼びかけでモンセラット島救済コンサートが行なわれた際に、ポールは最後のオール・スター・セッションでこの曲を熱演した。そん時、ジョンのこと思い出してたんだろうな(勝手な想像だけど)。

ポールの歌唱力凄いな。でもその影にジョンとの友情話が。

Eight Days A Week
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1964/10/6,18

●ポールが何気なく聞いた運転手の「忙しいかって? 1週間に8日働いてるよ」っていうセリフよりこのタイトルは生まれたという。(今ごろ、その運転手はどうしているんだろう)

五月みどりに「一週間に十日来い」という歌がある。このEight Days A Weekからヒントを得た作られたと思いきや、実は、「一週間~」の方が早いんだよね。記録によると1963年の紅白歌合戦でこの曲歌ってるんだもの。邦題をつけた人が「一週間に8日来い」ってタイトルにしなかった事を感謝するね(笑)。

曲としては、フェードインのイントロっていうのが面白い。

Beatles1」にも収録されているんだから、ヒット曲なんだろうけど、まぁ、他の曲が凄すぎて…

Words Of Love
★★☆☆☆


◆(Buddy Holly) V=John,George 収録日=1964/10/1

●ビートルズの面々が敬愛するバディ・ホリーのカヴァー曲。


パチパチっていう手拍子みたいな音が全編流れているが、これが「パッキングケース」っていう楽器か、それとも普通に手拍子かで議論がわかれている。僕はパッキングケースという楽器を知らないが、難しいものなのか?開始から59秒位で、このパーカッションが一旦止まるはずだが、惰性で数回鳴っているところを見るとそれなりに技術が必要な楽器なのか。手拍子だとすると、全拍にわたって手拍子し続けるってのもなんだかなぁという気もする。

なんとなくつなぎのきょくっていうイメージ。

Honey Don’t
★☆☆☆☆


◆(Carl Perkins) V=Ringo 収録日=1964/10/26

●オリジナルはカール・パーキン。
●もともとはリンゴの前任ドラマー、ピートベストの持ち歌だった。


ジョージはこういうギターを弾かせたら得意だよな。

2:20秒あたりに飛び出すリンゴの掛け声も微笑ましい。この掛け声だけでわかる。「いい人だ、リンゴは。」

Rock on George for Ringo, one time
リンゴのために、一発かましてくれジョージ!!

この曲はリンゴとジョージの友情ソングだね。

Every Little Thing
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日1964/9/29,30

●ティンパニーを使用。
●ジョージがレコーディングに遅刻してジョンがリード・ギターを弾いたと言われていたが、実はそれがデマだという噂も。


Every Little Thingっていう同名のグループがあったけど、このビートルズの曲名から名前を拝借したかどうかは不明。その昔このELTってのは、卑猥語だって聞いたことあるけど、それも確かかどうか不明。何かと謎の多い名前だ。

注目は冒頭の歌詞

When I’m walking beside her People tell me I’m lucky
あの娘と歩いていると運がいい奴と言われる

ここはジョンの歌詞だろう。共作って事でどっちかとか判明していないが、こういういい女を連れていてなにげなく他人に自慢するってのは、ジョン的って気がする。
ティンパニーが印象的な曲。

I Don’t Want To Spoil The Party
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/9/29

●邦題は「パーティはそのままに」 。

No Replayに続き、シチュエーション失恋ソング。ただ、No Replyほどの説明や、展開は無い。ようするに、「パーティに行ったら、彼女がいないから、俺帰るよ」って曲。多分、これって洋風の立食パーティなんだろうな。Free as a birdの象が歩いてるパーティシーンはこの曲が念頭にあるんだろうね。そんなパーティで主観的に浮いてるジョン、僕は帰るからみんなはEnjoy yourself してよって感じ。大人力ないぞ。ジョン!!
ここで、ちょっと思いついたんだけど、この曲以外で、ビートルズの歌の中には酒ってあんまり出てこないよね。WineがWhen I’m 64とかHer majestyとかにちょっと出てくるけどさ、例えば、ビリージョエルの「ピアノマン」みたいな感じで酒場のリアリティを歌い上げるって曲はない。それがビートルズの曲の特徴のひとつでもあると思うんだがどうだろう。

For SaleのB面ってかなりハンディのある場所におかれているけど、曲や演奏はそれなりにGoodだ。
ジョージのソロはどことなくシタールの音に近いような気がする。ジョージへのインドへの傾倒の伏線みたいな曲でもある。

このLPのこの面では一番冴えてる名曲。

What You’re Doing
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1964/10/26

●リンゴのドラムにティンパニーがかぶせてある。


ビートルズで最も地味な曲。埋め草として作ったらしい。

Everybody’s Trying To Be My Baby
★★★☆☆


◆(Carl Perkins) V=George 収録日=1964/10/18

●邦題は「みんないい娘」。
●カール・パーキンスのカヴァー。


ジョージの敬愛するカール・パーキンスだけあって、ギターも軽快。僕的には「ベートーベンをぶっ飛ばせ」の弟分的存在。

最後のジョージとリンゴの絡みもいいね。

HELP!

HELP!

TOCP-51115
1965年8月6日発売(英)

●A面は映画「Help!4人はアイドル」のサントラ
●B面は当時の新曲(カヴァー曲は2曲)
●本作は「A hard day’s Night」で個性的なロックンロール自作自演者集団としての完成形に到達したビートルズに、新たな芸術性と作品性が芽生えた事を感じさせる。(ザ・ビートルズ大全)

典型的なアイドル映画の「Help!4人はアイドル」。ある意味、「ビートルズという名の産業」はメンバー4人を容赦なく消費しようとする。勿論、ファンも同様だ。彼は表面的にはその需要に従って、スイスに行ったり、バハマに行ったり、演技したり演奏したり、溌剌はところを見せてくれる。

しかし、どう見てもビートルズは真っ白なゲレンデも青い海も似合わない。彼らが本当にやりたかったこととのズレは明らかだった。タイトル曲Helpはジョンの内面の叫びの究極の形だし、ポールの作ったYesterdayは次の時代のビートルズの可能性を内包していた。

最後のDizzy Miss Lizzyのむなしいジョンの叫びとよくトチるジョージのギター。そんな時代をある意味最も象徴する1曲。この空虚さは、ビートルズはもうすでに、このステージにはいないことを示していた。

Help!
★★★★★


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1965/4/13

●映画「Help! 4人がアイドル」の主題歌。
●『なんでも鑑定団』のオープニング曲。


ジョンが自分の心情をストレートに吐露した曲。アイドルとしての自分から逃れたかったんだろうな。ジョンは。でもこの曲が「4人はアイドル」の主題歌っていうのは全くの皮肉だよね。映画自体は、リンゴの指にはめられたルビーの指輪をめぐるドタバタ喜劇。その主題歌がじつは、こんなに切実だったなんてこと、当時は誰も気にもしなかったって事が不思議だよね。
でも、ビートルズっていう飛ぶ鳥を落とす勢いのグループのリーダーの内面がこんなだったってことがビートルズをめぐる神話の始まりを予感させる。ただのアイドルグループじゃなかったってことさ。

注目は次の1行

My independence seems to vanish in the haze.
あの頃の独立心はどこかへ消えちゃった

これは、多くのことが自分自身では決められない状況になってきたって事でしょ。忘れがちなんだけど、ジョンはクォリーメンを結成してから、デビューするまで、7年位かかってるんだよね。恐らくその下積み時代、どうすれば成功するのかって考えて、いろいろ自分で考え、行動し、失敗し、またやってみての繰り返しだったんだろうな。その時代は、独立心こそポリシーだったはずだ。

でも、ビートルズとしてデビューし、その役割を演じるようになる。そして段々、疲れてくる。このころのジョンには相当ジレンマがあったんだろうな。

初期ジョンの最高傑作。この疾走感がたまらない。

The Night Before
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1965/2/17

●映画では原っぱでの演奏シーンに流れる。


ポールの軽快なロックナンバー。映画では、実物の陸軍第3師団の砲兵、機関砲兵、騎馬砲兵隊なんかが現れて最後は、大爆発する。その時のこの曲って全く意味は無い。

この頃のポールの標準的な曲かな。

You’ve Got To Hide Your Love Away
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1965/2/18

●映画では、部屋の中でのシーン。フルート奏者はビートルズ始めての外注ミュージシャン。
●邦題は「悲しみはぶっとばせ」 。


ジョン自身、ディランの影響を受けたというのがこの曲。注目は次のフレーズ。

Everywhere people stare each and every day
I can see them laugh at me

毎日どこへ行っても みんながじろじろと見る
僕をからかいながら

ジョンは見られることを商売にしていながら、逆に見られることを物凄く嫌がるよね。そして笑われることに異常に繊細になる。
この歌のこの部分もそうだし、他には、こんなケースもある。

1)You can’t do that
You talking that way They’d laugh in my face
ほかの男といちゃついていたら俺が笑いものになるんだぜ
2)I’ll cry instead
Don’t want to cry when there’s people there,
I get shy when they start to stare
人前では涙を見せたくない じろじろと見られたら決まりが悪いからね

ジョンが段々と、自分の世界を作っていく過程の曲。ディランの影響か?

I Need You
★★★☆☆


◆(George) V=George 収録日=1965/2/15,16

●ジョージ2曲目のオリジナル曲。
●ギターは、ボリュームペダルを使っている。


ジョージ特有の歌のパートが楽器の後を追うような感じ(上手くいえないけど)なのはこの曲からだよね。そういう意味で個性を確立した曲って言えるのかも。このちょっと遅れるってのは、ボリュームペダルによるギターもそんな感じだよね。最初は上手くいかなくて、ジョンが手でペタルを押したなんているエピソードが伝わっている。

さらに、いえば、このちょっと遅れるっていうのって、ジョージのギターソロのひとつの特徴でもある。僕がベストだと思うビートルズ時代の彼のギターソロは、アビーロードのB面のPolythene PamShe Came In Through The Bathroom Windowのつなぎとところなんだけど、そのソロも遅れるような遅れないような微妙な間がいいんだよね。

また、ついでに言えば、その「ちょっと遅れる」ってことは、人生にも言えるよね。常に、ジョンとポールの後をついていくのがジョージの個性だからね。

なんともジョージらしい曲。

Another Girl
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1965/2/15,16

●ポールがリードギターを弾いている。


映画中では、ギタパク(アフレコ)でジョージが弾いているフリしていたような記憶。

記録によると一度、ジョージの演奏で収録したリードギターをポールが自分で演奏して差し替えたそうだ。かわいそうなジョージ。でもみんながこっちの方がいいよとか言ったんだろうな。ちょっと横暴なポールでした。でも、この後、そんなポールのわがままは段々増えていくんだよね。でも、ポールの場合、そういう風に強引にやった事が悪くないんだよね。だから逆に始末が悪いともいえるんだけどさ。
怖い1行は以下。楽器関連のわがままさもそうだけど、歌詞もかなりわがまま。これが、ポールの個性なんだけどさ。よく言えば、無邪気なポジティブですね。

I ain’t no fool and I don’t take what I don’t want
欲しくないものを選び取るぼどバカじゃない

おいおい、これが別れを切り出す時に使うセリフですか、ポール。僕には別の女が出来たんだ。しかもその女は、(Nobody in all the world can do what she can do世界中の誰も出来ない事をしてくれる)なんだって、そしてそれは何をしてくれるかって言えば、

For I have got another girl. Another girl.
Who will love me till the end.
Through thick and thin
She will always be my friend.
死ぬまで僕を愛してくれるような娘さ。楽しいときも苦しいときも彼女はいつだって僕の友達さ

ということ。若いなポール。なんで新しく出来たばっかりの恋人にそんな断言ができるんだ?まぁ、後々、そういうのは幻想だってわかるんだろうけどね。尤も、それがポールの無邪気でかわいいところ。こんな陽気な曲に乗せられちゃ、憎しみもぶっとばされちゃうよね。

演奏、詞ともにポールの強引さが前面に出た曲。

You’re Going To Lose That Girl
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1965/2/19

●邦題は「恋のアドバイス」 。


日本ではシングル盤で発売されたんだよね。だから、その昔のビートルズベスト10とかに、この曲とかロックンロールミュージックとかが、それなりに上位に入っていた記憶があるよ。僕は好きだ。映画では、リンゴのタバコの煙でコーラスをする他のメンバーっていう絵が印象ある。アイドルがタバコってそういうのがまぁ、許されていたんだろうか。

ヤアヤアヤアのジャケの表紙でジョージがタバコをくわえている写真が1枚あってそれが物議をかもしたっていうの聞いたことあるけどさ、このシーンはOKなんだろうか。まぁ、実際はこの頃はタバコどころか、マリちゃんやってたらしいけどね。
Rubber soulは、青春・男と女編って感じだけど、Helpは青春・友情編って感じだな。あのカリブ海の青い空がそんな感じをいだかせるんだろうかね。

If you don’t take her out tonight, she’s going to change her mind,
and I will take her out tonight, and I will treat her kind.

You’re going to lose that girl

今夜デートに連れ出してやらないと彼女は心変わりしちゃうよ
代わりに僕が彼女を誘い出して やさしくしてあげるんだから

友情とみせかけながらしかし、下心、ってところが面白い。ビートルズのお茶目なところが出てるよね。

最も、「Help!4人はアイドル」的な爽やかな曲。日本での人気あったんだよ。

Ticket To Ride
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1965/2/15

●邦題は「涙の乗車券」。
●リードギターはポール。


DAIHATUタントのCMで速水もこみち、入山法子が雪の上に倒れこむシーンは、HELPでこの曲がかかったときに4人が倒れこむ倒れ方のパクリか。

後に、リンゴはこの「Ticket To Ride」のドラミングを自分のベストとしてたたえていたんだけど、恐らくそれほど、この曲ってこの時代にしてはハードロックだったんだろうね。ジョンもそんなこと言っていたような。

注目は次の1行

She don’t care
僕の気持ちも考えずに

文法的に言えば、She doesn’t careでしょ。それをdon’tにしてるっていうのは、語呂って事がいいからってことだけど、同時にこの歌は黒人ブルースとかから影響受けてますよって事も示してるんだと思う。

ちなみにここで、ビートルズの曲3大文法間違いをここで発表します。

1)She don’t give boys the eye
彼女は他の男には見向きもしないShe is a woman)
2)And if somebody loved me like she do me
もし、彼女のように愛してくれる人がいたとしても(Dont’t let me down)
3)She don’t care
僕の気持ちも考えずに(Ticket to ride)

ねっ、3曲ともなんとなく黒っぽいでしょ。
また、確信犯的な間違いとなるとGetting better の次の1行

Me used to be angry young man
以前の僕は怒れる若者だった

あえて、学校に反抗的ってことを表現するために、IをMeにしているんだ。文句あるか、これだって意味は通じるし、カッコいいだろうって感じだよね。

当時、最高のハードロック。

Act Naturally
★☆☆☆☆


◆(Bonny Morrison/Johnny Russell) V=Ringo 収録日=1965/6/17

●日本ではYesterdayのA面として発売された。


さすがにアメリカでは、A面YesterdayでB面がこのAct Naturallyが来ているが、日本では逆だ。責任者の顔がみたいとはこのことだ。(といっても、見たら見たで、あっどうもって感じなんだろうけど)多分、映画「Help!」の主人公リンゴを売ろうとして、この曲がHelpに入り、それにつられて、この曲がA面になったんだろうけど、今も昔もプロデュースは難しいって事だね。

なぜか、YesterdayのA面として発売された期待的には超大作。

It’s Only Love
★★★☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1965/6/15

●ジョンが後に一番嫌いな曲と非難。


ジョンが後に嫌ったというこの曲。多分、歌詞が他愛もなかった事がその理由だった。確か、ジョンレノンミュージアムにこの歌詞の草稿が残っていて、語呂のあう単語がいっぱい書いてあったような。それを見たとき、結構大変な作業だな、って思ったよ。でもそれでもピタってこなかったんだろうな。確かに以下のところはちょっとどうかなって思わなくもなくもない。

Is it right that you and I should fight every night?
Just the sight of you makes nighttime bright, very bright.

毎日喧嘩するなんてこんなことでいいんだろうか。
君がいれば夜の闇も真昼のように明るく輝きだすんだ

rightとfight と night と sightと(また)nightとbrightこれらが、語呂あわせになってるんだけど、ここの[fight every night]ってのが、ジョンにとってあまりにもリアルな感じがして嫌だったんじゃないかな。

あくまでこれは僕の邪推だけど、ジョンって正直だから、その後に自分の以前の暴力行為に対して相当な嫌悪感を持ったんだと思うよ。だから、Run for your lifeにしたって、And your bird can singにしたって、そういう他人に対する非難とか暴力を感じさせるような曲は嫌だったんじゃないかな。自分の汚点としてさ。

特にこの曲は主題としては、ただのラブソング、サブ題として語呂合わせ、でそこに自分の実人生(本音)がチラって見えたのが嫌だったんじゃないだろうか。

ジョンが嫌ったというけど、曲的には悪くないよね。

You Like Me Too Much
★★★☆☆


◆(George) V=George 収録日=1965/2/17

●ポール、ジョージマーティンがピアノ、ジョンがエレピを弾く。


オープニングとエンディングがマーティン、間奏のギターとの掛け合い部分はポール、歌の伴奏部分はジョンという具合にそれぞれがピアノを弾いているらしい。確かに、上手さはマーティン、ポール、ジョンの順番だ。特にオープニングとエンディングのピアノの力強さは、なかなかのもの。逆に伴奏ピアノ(エレピ)はなんとなく弱弱しい。

しかし、部分部分でピアノ奏者が変わるのってこれって実験的って言うんだろうか。どうせなら、ジョンがアコギにまわって、ポールはベース、マーチンがひとりでピアノでよかったのではないだろうか。全く、余計な御世話ではあるが。

ジョージの曲なのに、みんなでキーボード共演したというプチ実験曲。

Tell Me What You See
★★☆☆☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1965/2/18
●ギロの演奏はジョン。


こういう渋い曲を2人でさらりとハモりながら歌いたいものである。
さて、この曲の特徴つけているのはジョンが弾く「ギロ」である。

奥田民夫プロデュースの「これが私の生きる道」は、Twist&ShoutShe loves youNowhere manPlease please meDay tripper等がちりばめられていてるが、ギロを使った部分はこの曲からの引用なんでしょうか。それもあやしいくらいこの曲は地味だ。おそらくこの曲は、What are you doingI’ll get youと並んでビートルズの中でもかなり話題にされることの無い歌だと思うよ。これは。

嫌いって言うんじゃないけど、好きでもないってポジションの曲。

I’ve Just Seen A Face
★★★★★


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1965/6/14

●邦題は「夢の人」 。


ポールがウィングス時代にもよくライブでやった曲だ。Wings over Americaでも演奏されている。3人によるアコスティックギターの共演。これが、3年後位だったら、ポールひとりで録音しちゃっただろう可能性の高い曲。いつも間にかカントリーのスタンダード曲になってしまっているところが、凄い。この曲は歌詞を覚えるとカラオケ楽しい曲だ。
そういえばイルカ(日本のフォークシンガー)に夢の人ってアルバムがある。イルカさんもビートルズ好きなんだろうな。このアルバムの一曲目がラバーボールだもんな。
歌詞は結構普遍的な一目ぼれの歌だな。まるで電車男のようにシャイな男の一目ぼれ。これってポール自身じゃないことは断言できる(笑)。どっちっかって言えばジョージっぽい歌詞だよね。
そのあたりを紹介してみましょう。

I have never known the like of this,
I’ve been alone and I have missed things and kept out of sight
But other girls were never quite like this

こんなの生まれて初めてだ
ずっとひとりぼっちで損ばかりして
隅のほうにちじこまっていた僕
彼女のような娘はどこにもいなかった

僕の妄想だと、この青年と彼女は、Drive my carで不釣合いな付き合いをはじめる。ここでスターになることを夢見る彼女はアメリカに渡り、大スターに。Honey Pieで悲しいオチを迎えるんだ(笑)。

いまやカントリーのスタンダードに。さすがポール。

Yesterday
★★★★★


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1965/6/14,17

●ポールがある朝、起きたら頭の中で鳴っていたという曲。
●ビートルズナンバーの中で最も多く(3000種類以上)他のアーティストにカヴァーされた曲として、ギネスに掲載される。
●アメリカでの放送回数が700万回以上。イギリスのアーティストでは最高。
●ポールが麻薬取り締まり法違反で投獄された時に、この曲を歌って看守、及び塀の中の面々と親睦を深めたという心温まるエピーソードが残っている。


ポールの天才を語るとき、必ず引き合いに出されるのがYesterday誕生にまつわるエピソードである。誰が、朝起きてこんな名曲が鳴っているというのだ。まさにポールが神に選ばれた人ってことの証明だよね。

そのポールの言葉を証明するかのように、この曲のAメロは七小節しかないんだよね。普通は、八小節でしょ。それでも全く自然なのがこの曲。まさに天から舞い降りてきたようなメロディとはこのことだ。しかも、ポールが面白いのは、自分でこの曲を作ったっていう意識が無いこと。とりあえず朝だからスクランブルエッグという名前をつけただの、みんなにこの曲知ってるって聞いて回っただの。リンゴあたりが、それは僕が作った曲だよってジョーク言っちゃえば、これはリンコ作曲ってことになったんだろうけどね。チャンス逃したな。リンゴ。

そして、このポールの「神からの曲授かり体験」に対して、最も嫉妬を感じたのはジョンだった。逆にジョンは明け方5時間位、自然に曲が湧いてくるのを待ったけど、出来なくて、あきらめた瞬間にNowhere Man が出来たっていうエピソードがあるよね。このNowhere Manだって相当な曲だと思うけど、寝て起きたら、頭の中にっていうのとはちょっと違う。このNowhere Land空想の世界)にいる男ってのは、ポールの事だってジョンは言ったらしい。それほど、ポールのYesterdayを意識していたって事だと思うんだけどさ。
後のジョンの「ビートルズはキリストより有名発言」の伏線はYesterdayを作ったポールに対する嫉妬にありと僕はにらんでいる。「何で神は俺にそういう体験をくれなかったんだ」っていう逆恨みさ。
でも、後に、ジョンはAcross the Universeの詞で同様の体験をする。でも、その時の神はキリストじゃなくてインドの神様なんだろうな。OM。

この曲はビートルズの曲の中で初めて、ポールと外注の弦楽団だけで録音され、他のメンバーは参加していない。それにもかかわらず、大ヒットしてしまう。それがまた、上記のようにジョン及び、他のメンバーの嫉妬をかった。そういう意味で、この曲の出現は、ビートルズ崩壊の遠因を作ったと言えなくも無い。

世界一の名曲。と言っても過言ではないよね。

Dizzy Miss Lizzy
★★☆☆☆


◆(Larry Williams) V=John 収録日=1965/5/10
●作曲はラリーウィリアムス、ビートルズのカヴァー曲の中では最も遅い時期の曲?


ジョンの叫び声もむなしく、とか、ジョージのギターはつっかえているぞ、とか、やたらに非難を浴びがちの曲。ジョン自身そんな批評にいつか復讐してやろうと思ってたんだろうと思う。ウルッセー僕はこのロックンロールが好きなんだってね。

その証拠に、解散直前の1969年のトロントでのロックンロールリバイバルライブで名だたるビートルズの有名曲ではなく、この曲を演奏したもんね。

気持ちと演奏のズレが逆に面白い曲。