THE BEATLES(DISC-1)

THE BEATLES(DISC-1)

TOCP-51119-20
1967年11月22日発売(英)

●ビートルズ初の2枚組。アップルレコードからの最初のLPとなる。
●RIAA(全米レコード協会)によると全米で1900万枚を売り上げた。
●誰が名付けたのか「ホワイトアルバム」と呼ばれる。真っ白なジャケットには、特製の歌詞付ポスター、シリアルナンバーがついていた。
●聴く人間の年齢、音楽経験値、そんなもので印象がまったく違ってくるアルバムであり、広大なビートルズ宇宙が今も広がっている事を痛感させられる。(大鷹俊一)
●もともとはA doll’s house(人形の家)というタイトル名が考えられていたが、同じ時期、ファミリーというグループが「Music in a doll’s house」という名前のアルバムでデビューしてしまったためこの案は破棄されたという。(「愛の事典」より

Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Bandであらゆることをやってしまったビートルズ。彼らの次なる仕事がこのThe Beatlesだった。でもとにかく、演りたい曲をどんどん録音していって後で2枚組にしたって感じもしなくない。音楽ジャンル的には、ロック、フォーク、カリプソ、カントリー、ヘビーメタル、バロック、ブルース、ムード歌謡、童謡、ポップス、アバンギャルド等、あらゆる音楽が詰め込まれていると評されることが多い。

でもよく聴いてみるとトータルで彼らが当時もっていたテーマが見えてくる。 それは、個人と全体、個人と社会、個人とビートルズその相克だ。Revolutionでジョンが発表する「みんな」としては革命には協力するよ、でも僕個人はちょっと待てってそういう揺らぎ。
一人一人のやりたい音楽とビートルズとしてやるべき音楽、その2つに揺れ動いた彼らの内面と、騒乱の時代1968年が見事にシンクロしたとき、このアルバムが生まれた。ポールが夜中、一人でMother Nature’s sonを録音している同じ日の夜、ソ連がチェコに侵攻している。そんな時代だったんだ。

このアルバムが「The Beatles」っていう名前に落ち着く前、「A doll’s House(人形の家)」だったということは示唆的だ。The Beatlesという絶対の存在の前で、ビートルズの一員という役割に限界を感じていたジョン。彼にとってのビートルズとは、この時期、人形の家(不自由な家)にすぎなかったということではないのか。

しかし、結局は、「The Beatles」という名前に落ち着く。「A doll’s House」こそが「The Beatles」だっていう隠しテーマを残したまま...

アルバム一つ一つにユニークに付けられたシリアルナンバーは体制の中で唯一、個を区別する記号だったのか。ちなみに、私が持っていたLPの番号は、A190657であった。ちなみに0000001番は、ジョンが持っていたという。

Back in the U.S.S.R.
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/8/22,23

●タイトルは、チャックベリーのBACK IN THE USAのパロディ。
●コーラスはビーチボーイズのパロディ。
●また、レイ・チャールズの「Georgia’s always on my my…mind」のパロディ。
●リンゴは、一時脱退していて参加していない。ドラムスはポール。後に、このドラミングをリンゴは褒めている。


当時のソ連っていうのは、西側諸国からしてみれば脅威の国だよね。暗黒の警察、官僚、共産党の圧制国家だ。
ちょうど、この曲が収録された前の月にソ連はチェコスロバキアに侵攻した。いわゆるプラハの春(自由)をつぶしたんだ。
だから、当時のソ連っていうのは今でいうならば、北朝鮮みたいなイメージの国。だから、この「Back in the U.S.S.R.」って、「北朝鮮へ帰れ」みたいなニュアンスで捕らえるのが近いんじゃないかな。

楽曲的に言えば、ポールがリードギターを弾いている。ポールのリードギターっていうのはディストーションが効いていて迫力あるんだよね。ジョージのギターが「音質」の澄みにこだわっているのと対照的だ。また、6弦ベースを弾いているのがジョン。ジョンが弾くベースは、地味、悪く言えばヤル気はあんまり感じられない。一方、リンゴがいないんでドラムはポール、ジョン、ジョージの3人が少しづつ叩いているらしい。はたして3人で叩く必要はあったのか。

ちなみに、歌詞の中で、ホテルに到着した主人公はホテルに到着するやいなや、連れのオンナに電話線をまずはずさせている。「You Won’t See Me」とかで電話してもつながらいことにイライラしているっていう歌詞があったけど、ポールは本質的に電話が嫌いなんじゃないかな。一方、ジョンは電話好きっていうか、電話がよく歌詞に出てくるよね。(Any time at all」、「No reply」等
でも、この主人公、オンナ連れのくせに「Well the Ukraine girls really knock me out They leave the West behindウクライナの女は、僕をノックアウトするほど、素敵だ。西側諸国の女は及びもしないぜ)」だって。ビートルズの歌詞ってこういうところ、まったく慎みがなくて可笑しいよな。

でも、こうった「好きなものは好きって言うんだ。だって僕たち自由だもん」的な価値観こそがビートルズの本質とも言えるんだけど(By 吉田拓郎「ビートルズが教えてくれた」より)。

ポールって何でも出来るんだね。ただのビーチボーイズの真似じゃない。名曲だ。

Dear Prudence
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/8/28,29

●インドでの瞑想キャンプ(リシュケシュ)に参加したビートルズ面々。その時一緒に参加していた女優ミア・ファロー(代表作「ローズマリーの赤ちゃん」)の妹のプルーデンス・ファローが瞑想によって、アイデンティティ・クライシスの症状に陥って、小屋にこもってしまった。そのプルーデンスを励ますために、小屋の外でジョンがこの曲を歌い彼女を出てこさせようとした。(ちなみにこのミア・ファローは、チベット問題を踏まえて、スピルバーグに、北京五輪開会式のアートプロデューサを降りるように説得したって事で、最近、ニュースになったよね。一方、プルーデンスはどこで何をしているんだろうか?
●リンゴは全曲に引き続き不参加。ポールが代わりにドラムを叩く。エンディング近くの乱打はポールの個性。
●昔とある評論家が、この曲でドラムをポールが叩いているというのを知らなくて、リンゴはDear Prudenceの時のように激しいドラムが叩けるんだからいつもそのように叩けばいいなんてことを書いていたらしいけど、これぞ赤っ恥評論だ。ただし、ビートルズの情報は当時(70年代位まで)あんまり公表されていなかったから、攻めるのも可哀想だ。今だから笑える話ではある。
●アルペジオのギターは同じキャンプでドノバンに教わったジョンが奏でる。


今で考えるならば、ビートルズに曲を作ってもらって励まされたっていうのは、このプルーデンスとジュリアンレノン。羨ましい限りだ。音楽を奏でて閉じ篭った人を外に出させようとするっていうのは、古事記の天の岩戸の神話を思い出すよね。

Dear Prudence, won’t you come out to play
プルーデンスよ。外へ出てきて僕らと遊ぼうよ

ジョンの優しさあふれる名曲だ。
以下は、この曲で一番、僕が好きなフレーズだ。

The birds will sing that you are part of everything
鳥達は君は世界の一部なんだって歌う

あるいは、意訳すると「鳥達は、君がいなきゃ世界は世界じゃないって歌う」)
全てを関係性の中で捉える世界観は、東洋哲学を感じさせるよね。ヨーコの影響か?マハリシの影響か?ジョンの中で何かが微妙に変化しつつあったんだろうね。

このアルバムの中でも最も、リシュケシュっぽい曲。ジョンの優しさ満ち溢れ...

Glass onion
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/9/11,12,13,16,10/10

Strawberry Fields ForeverI Am The WalrusLady MadonnaThe Fool On The HillFixing A Hole等のビートルズナンバーが歌詞に織り込まれている。
Walrus is Paulウォラスはポールだ)っていう歌詞が当時、話題になった。


中山康樹氏曰く、ホワイトアルバムも3曲目。この曲のリンゴのイントロのダダッでやっとビートルズの音になったということだ。なるほど。
楽曲的にはポールのベースがゴリゴリしていて素晴らしい。ジョンの歌も以前のような邪悪な感じがしてカッコいい(ひさびさにOhYeh~が聴ける)。
エンディングで不協和音のバイオリンやチェロが入るが、それがなんかリスナーを不安にさせる。このホワイトアルバム全編を通底して流れる言うに言われぬ不気味さと連動している。僕は、これはヘロインかなんかでトリップして夢の世界にいたがの一転してバッドトリップになった瞬間を表現しているとみるが、果たしてどうだろうか。

歌詞で注目したいのは2箇所

1)Looking through the bent backed tulips to see how the other half live
折れたチューリップ越しにもう半分の自分の生命がどうなっているかを見る

ジョンは、遺作となったダブルファンタジーのWomanのイントロ部分で「For the other half of sky」(空のもう半分のために)という毛沢東の言葉の一節をつぶやいているが、GlassOnionのこの箇所は、その発想とつながるものを感じさせる。68年当時のジョンの愛読書は「毛沢東語録」だったという話もあるしね。
勿論、このthe other halfというのは、ヨーコのことを指している。恐らく、ヨーコのコンセプチュアルアートに半分のコップとか机とかがあって残りの半分は想像してくださいみたいなの(HALF-A-ROOM 1967)が合ったけど、そういった発想の影響をモロに受けているに違いない。

2)Fixing a hole in the ocean Trying to make a dove-tail joint
海にある穴を埋めながら、鳩の尾っぽ型の蟻継を作ろうとしながら

このoceanというのは、ヨーコの事だと思う。(ヨーコの事をOcean childっていうしな)そのヨーコ(Ocean)の穴を埋めるっていうのはヨーコとセックスするって事。「鳩の尾っぽ型の蟻継を作ろうと」ってペニスを勃起させながらってことでしょ。
ところで、この蟻継って僕は知らなかったんだけど、ネットで調べると木と木をつなぎ合わせる部分のことらしいね。

もう少し言えば、そのフレーズのちょっと前にこんなフレーズが出てくる。

I told you about the fool on the hill I tell you man he living there still
一方で丘の上のバカはまだ、そこにいる住んでいるって言ったよな

これを意訳するとポールはまだ、丘の上にいるけど、僕(ジョン)はもう別の場所にいるんだぜという事。ジョンの心がポール(ビートルズ)からヨーコに移った事をほのめかしているんだと思うよ。ただ、ポール自身は、「I’ve got news for you all, the walrus is Paulみんなに知らせがある。あのウォルラスはポールだったんだよ)”の部分を作ってるときはおかしかったな。」と言ってるから真実はわからないがね。

こういう深読みがビートルズを聴く楽しみだと僕は思う。また、そういった仕掛けをありとあらゆるところに張り巡らせてしかも、表面的には素晴らしい作品になっているところにビートルズの天才があるんだと思う。

リンゴのクリアなドラムとポールのソリッドなベース、それにジョンの邪悪な声、いいよね。

Ob-La-Di,Ob-La-Da
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/7/8,9,11,15

●日本ではシングル版として発売されたため、人気があるっていうか知名度が高い。(※僕の妻も中学の吹奏楽部の時の新入生歓迎会でこの曲を演奏したっていう話。)CXのポンキッキ、NHKのみんなの歌、日産の車のCMなどで使われ、流された。
●ポールが何回もやらせたんでみんな呆れたというエピソード。イントロのピアノはジョン、イライラの絶頂にあった彼がドラッグをやってヤケになって演奏したところ、それが採用されたという。
●OB,LA,DI,OB,LA,DAとはアフリカのヨルバ語で人生は続くよ(life goes on)という意味らしい。この曲をいつもつぶやいていた酔っ払いのコンガ奏者・ジミー・スコットからポールが拝借したとの話。ポールは、後に、使用料(謝礼)を払ったらしい。
●インターネット上で行なわれた『Worst Song Ever(これまでで最悪な曲)』投票で堂々の1位に輝いた。
●ホンダ・ステップワゴンのCM曲
●微妙な聴き所。ポールがhandと歌った後にジョンがarm、ジョージがlegと歌っているところ。


この曲の面白いところは、歌詞の最後で男(デズモンド)と女(モーリン)が逆になるところ。最初はデズモンドが市場で働き、モーリンは夜クラブのバーで歌うために化粧をするだったのが、最後の一節では、モーリンが市場で働き、デズモンドが夜のクラブで歌うため顔に化粧をするに入れ替わっている。僕が面白いと思ったのは、この曲から10年後位に実際、ジョンとヨーコはこういう関係になったということ。ジョンは家で子育て。ヨーコは資産マネージメントの仕事をすることとなった。ある意味、予言ソングだよね。
ちなみに、ビートルズの曲にはたまに美人だけど男勝りの女が出てくるよ。

She’s so good-looking but she looks like a manPolythene Pam
きれいな娘だけど男みたいなのさ

Sweet Loretta Martin thought she was a woman but she was another manGet back
かわいいロレッタマーティンは女を自認していたけど、所詮はただの男だった

the bag across her shoulder Made her look a little like a military manLovely Litta
肩から斜めにさげたバッグのおかげでちょっと軍人みたいな感じだった

アッシャーもリンダもヨーコもパティもモーリンもみんなそんな面を持ってるような…
だけど、この曲が作られた時期を考えれば別の見方もできるんだ。実はこの曲がつくられたのは1968年7月。この月に、ポールはアッシャーとの婚約を破棄した。家庭への夢が壊れた瞬間だ。だから逆に家庭的なこの曲にポールはこだわった。その異常なこだわりが、ジョンのイライラを呼び、オープニングのピアノのやけっぱちの演奏につながったのだ。

楽曲的には、スカとかカリプソのリズムとか言われるけど、僕は音楽の知識が無いのでよくわからん。ホワイトアルバムが様々な音楽のごった煮と呼ばれる時、必ずこの曲も引き合いに出される。でも演奏は凄く自然だし、上手いと思う。

誰でも知ってるビートルズのスタンダード曲。誰でも知っているってのは凄い事だよね。

Wild honey pie
★☆☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/8/20

●ビーチボーイズの「ワイルドハニー」というアルバムへのオマージュともパロディとも言われる。
●ポールが歌から楽器から全部一人でやっている。
●お~にた~(大仁田)の空耳曲としても有名。


よく、この曲のことをホワイトアルバムで一番嫌いだと言ってる人がいるか、それほど目くじらを立てるほどのモノか。どうでもいいって言えばどうでもいい曲。このパイっていうのはリバプール地方では、ヴァギナの隠語らしい。だから、Wild honey pieというのは、野暮意訳すれば、(毛むくじゃらで甘いおまんこ)って意味かな?同様にPenny Laneのフィッシュ&フィンガーパイとかも卑猥な表現とのこと。

ポールって時々、こういったエッチなフレーズを入れるんだよね。

ポールが大活躍。でも、このアルバムに入れる必要あったのかな?

The continuing story of Bungalow Bill
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Yoko 収録日=1968/10/8

●ヨーコやモーリンも参加してコラース(ヨーコはソロも)歌っている。
●ポールは収録に参加していない。
●冒頭のスパニッシュギターは、クリス・トーマスのメロトロンで作り出したもの。ジョージじゃない。残念。
●インドの瞑想キャンプで一緒だったタイガーハンティング自慢の男のことを歌った。


ポールが収録に参加していないのはどうしてだろうか。ヨーコが参加するっていうんで嫌気がさしてサボッたっていうのが定説。実際のところはわからん。

後に自然保護主義になったポールはそういった観点からこの曲を凄く評価しているのが笑わせる。「ビートルズの歌のすごいところは、僕らの歌の多くが、時間が経過しても有効であることだよね。この曲も、時と共にますます価値を増した曲の一例だ。より現代の問題に密着してるだろ。狭い小屋で飼育される子牛や、虎やサイなどの絶滅寸前の動物を狩猟している現状を考えると、この歌は非常に意味がある。内容が素晴らしいよ。」と述べている。だったら参加しろよって突っ込みたくなる。
Free as a birdのプロモでリンゴはパーティシーンでこの曲にまつわる象をどうしても入れて欲しいと要望したという。そんな気に入っていたのか。リンゴよ。

面白いのは以下のフレーズ。

The children asked him if to kill was not a sin
Not when he looked so fierce his mommy butted in
If looks could kill it would have been us instead of him

子供達が彼に尋ねた。「殺すことは罪じゃないの?」
おふくろさんがすかさず口をはさんだ「相手が凶暴そうなときは別よ」
「もし凄んだ目つきで相手が殺せるのなら、今ごろ死んでるのは虎じゃなくて私たちだったわ。」

これは明らかに当時のベトナム戦争を肯定するアメリカに対するあてつけ。ベトコン(ベトナムの共産主義ゲリラ)は恐ろしい。だから、その恐ろしい相手を殺すことは罪じゃないの。っていってるんだよね。このアングロサクソンのママは。

おっとどこかで聞いた事あるなぁこのフレーズ。そう、これはイスラム過激テロが怖いっていうんでイラクを攻撃したブッシュアメリカの論理と一緒だよね。だから、そういう意味でこの、30年前も今もアメリカは同じ事をやってる。もっと言えば、開拓時代のインディアンや、第二次世界大戦での日本に対しても同じような論理が援用されたんだ。アメリカの本質を言い当てたフレーズとも言える。

っていうことは、このジョンの批判的な歌詞は現代も生きているんだよね。

ヨーコの声が目立つ。好き嫌いの分かれる曲。

While my guitar gently weeps
★★★★★

◆(George) V=George 収録日=1968/9/5,6

●ホワイトアルバムの中で一番人気のある曲。ジョージの泣きそうな歌い方とか、ギターが前面に出ている点とか、70年代のロックを先取りしている…感もなくもあったりなかったりする。
●エリッククラプトンがリードギターを弾いている。発売当時のクレジットはエディ・クレイトン。
●ジョージがこの名曲を5月の段階でせっかく作って聴かせたのに、ジョンとポールは無視し続け、結局、収録は9月に。


僕がジョージが逆に凄いと思ったのが、その謙虚さだな。仮にもリードギターの立場の男が自分よりも数段上のギタリストを連れてきて、リードを取らせるなんていう事が出来るのだろうか。(尤も、クラプトンを連れてきたのがジョージじゃなくてポールだったら、その時点でビートルズは解散だったろうけどな。)謙虚だ!謙虚過ぎる!

いずれにしても、ジョージっていう人は楽器演奏者というよりもプロデューサ指向が強いってことなんだろうな。
このクラプトンのギターは確かに、素晴らしい。ギターのことがよくわからない僕の素朴は疑問だが、こういうギターって弾くの難しいものなのでしょうか。指の動きとかはあんまり速くなさそうだし…設定(ギターとかアンプとかの選定とかボリュームとかエコーとかの)さえそういう風にすれば結構、普通に弾けるものではないのだろうか?わからんが。まぁそういった設定も含め名ギタリストなんだろうな。クラプトンという方は。以前、リンゴのドラムのどこが凄いのかっていう話題になったときに「そのチューニングが天才的」ってマジに言ってた人がいて、知識不足の私は全く反論の余地がなかったことを思い出した。
一方、そのクラプトンはポールのベースをベタ褒めしていたという。達人は達人を知るってことか。わからんが。

歌詞で注目すべきは、この曲全般を通して感じられるジョージの世界観だ。例えば下の1行、ギターがすすり泣くっていうのは明らかにアニミズム(霊魂信仰)でしょ。

I look at the world and I notice it’s turning While my guitar gently weeps
世の中の営みは脈々と続く 僕のギターがすすり泣いている間も

また、普通だったら、世の中の流れと自分のギターを結びつけて考えるようなことはしないんだけど、さすが哲学的詩人のジョージはそうは考えない。

Dear Prudenceにおける「you are part of everything」(君はあらゆるものの中の一部だ)にもつながる世界観が垣間見られるよね。

鳴きのギターってこの曲が起源です。あまりにも名曲。

Happiness is a warm gun
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/9/24,25

●あまりに卑猥と言うことでBBCでは放送禁止になる。
●タイトルはガンマガジンに載っていた広告からの拝借。
●和久井光司氏はこの曲をしてジョンの最高傑作といっている。
●中山康樹氏は、今ではほんとうにギャグになりはてたと最低の評価。
●東芝EMIのビートルズ公式サイトでの人気投票では、17位に入っていた。
●アメリカの銃社会を批判したマイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」の挿入曲。


LOVE ME DOから早7年。ビートルズはついにココまできたかと、ある人を呆れさせ、またある人をして狂喜させた問題作。短い曲の癖に3部構成になっている。

一部 趣味の悪い歌詞が並ぶ。

The man in the crowd with the multicoloured mirrors on his hobnail boots 
Lying with his eyes while his hands are busy working overtime

人ごみの中にいるあの男 鋲を打ったブーツにつけた極彩色の鏡が光る
彼の目は嘘をつき 手は超過勤務で忙しく働いている

ようするにだ。これは変態行為をやっているってことでしょ。

靴に鏡を備え付け、何食わぬ顔をしてその鏡に映した女の子のパンツを眺めながら、手でオナニーをしているってこと。情けない。あまりに情けない。これが全世界を席巻した超アイドルグループの曲でしょうか。この曲の衝撃は凄かったでしょうね。
現代日本で言うならば、SMAPが、「オレら、駅の便所で携帯使って盗撮~♪」っていうような歌を出したようなもんですから。ジョンがいかに俗的な価値や道徳を捨て去ったかがわかるわな。
さらに歌詞は続く。

A soap impression of his wife which he ate and donated to the Nation Trust
彼が食い物にしてナショナルトラスト(日本でいう文化庁みたいなぁ~)に寄付しちまった女房が残していった味気ない痕跡

これじゃあシンシアがあんまりにも可哀想だ。そこまで言うかジョンよ。
現代日本で言うならば、木村拓也さんが、誰か、おばさん女優と強引に付き合い始めて、「『あの人は今』って番組におしつけた”静”とのくだらなかった日々の思い出~♪」って歌ってるような(ちょっと違うか…いやかなり違うか…)そんな歌詞ですよこれは。

二部 もう露骨にヘロインとセックスの話

I need a fix ’cause I’m going down
Down to the bits that I left uptown

刺激が欲しい 落ち込みそうなんだ
僕はアップタウンに捨ててきた例のやつを求める

Mother Superior jump the gun
修道院の層尼長さま 早くしてくれ

このMother Superiorってのはヨーコの事、fixっていうのはヘロインの隠語。(※だから、Fix a hole っていうのは、ヘロイン注射のことともとれるか)っていうことは、ここでいうgunというのはペニスです。英国キリスト教教会女性支部長的に言えば全くゆるすべからざる表現でしょうな。

三部 絶叫に入る。

Happiness is a warm gun mama
発射直後の銃にこそ幸福がある ママ~

だから、この曲で歌われているwarm gunとは「射精直後の温かいペニス」と「打ったばかりのヘロイン注射」と「撃ったばかりの銃の銃口」というトリプルミーニングなんですね。あーやだ。

でもこの曲を評してポールは「これは『Bungalow Bill』のように、温かい銃を持って幸福だと本気で思ってる連中を揶揄した曲なんだ。ボーカルもすごいし、歌詞もいいし、テンポがしょっちゅう変わる面白い曲だ。かなり複雑な作品だよ。ジョンらしい。」って言ってる。ポールったら、わかってるくせに。

でも楽曲的には僕は嫌いじゃない。いや、むしろ好きなほうだ。いやいやかなり好きな曲だったりする。
あと、ジョンの歌いだしの不気味で暗いな雰囲気。仲間になりたくないが遠くからは見ていたいこの感じ。ポールの渋いベースもジョージの一部から二部に移るところの邪悪なギターも、そして、三部で歌と合わなくなったと思ったら、BECAUSE!でバシッとあうリンゴのドラムも、「Happiness ban ban shoo shoo」 っていうポールとジョージのかわいいコーラスも全て最高(Lead ZeppelineがBlack dogで似た様な事をしているけど、こういうのって他にも結構あるの?知っている人は教えて欲しい)!!

しかし、この曲発表から12年後、ジョンはその銃で殺されてしまう。こんな曲を作った因果応報というのは言いすぎか。

名曲かどうかは迷っても、凄曲であることは確か。ジョンの天才技か。

Martha my dear
★★★★☆


◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/10/4,5
●マーサとはポールが飼っていた犬の名前。このマーサの子供がジェット。
●ポールひとりで歌と楽器を演奏。(勿論、吹奏楽、管弦楽は外注)。


こういう曲を聴くとポールの天才がわかるよね。高校の頃、このピアノのフレーズを練習したな。弾けるようになったときはうれしかった。これって今でも弾けるんだよ。

歌詞は極めて普通。犬を愛でる歌。
ただし、ここで邪推を入れると曲の意味は一変する。”マーサ”を”ジョン”に置き換えてみるんだ。だって、ジョンっていうのはイギリスで言えば「ポチ」みたいな名前だからね。

Hold your head up you silly girl
Look what you’ve done
When you find yourself in the thick of it
Help yourself to a bit of what is all around you

頭をあげて お馬鹿さん 自分のしていることをご覧よ そんなことばかりにかまけてないで
少しはまわりに目を向けてごらん お馬鹿さんだね

Hold your hand out you silly girl see what you’ve done
When you find yourself in the thick of it
Help yourself to a bit of what is all around you

自分のまわりをよく見るんだ そうしたら君にだってわかるだろう
君と僕はお互いのためにここにいるのさ

うーん。当時、ヨーコに没頭していたジョンに対するポールの視線にぴったりでしょ。
ポールも言っている。「またまたファンタジーの歌を作った。ジョージ・ハリスンに言われたことがある。『僕はそんな風に歌は作れない。君は何でも作り上げちゃうだろ。自分にとっては本当は何の意味も成さないことでも』とね。本当は僕にとっての何か奥深い意味があると思うんだけど、表面的には“デズモンドとモリー”とか、“僕の愛しいマーサ”みたいな空想の世界になるんだよね。」恐ろしい。
いろんなことを妄想すると勘のいいジョンがこの曲を嫌った意味も見えてくるよね。

この曲の前奏のピアノメロディは神。

I’m so tired
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/10/8

●インド滞在中に不眠症になったジョンの作品。
●「I’m Only Sleeping」の親戚みたいな曲。


ジョンはこの曲に関して「僕ので、これもインドで書いた曲だ。僕は眠れなかった。一日中瞑想して、夜になっても眠れなかった。そのことを書いたんだ。僕の好きな曲のひとつだよ。サウンドもいいし、僕の歌もいい。」って言っている。一日中瞑想して、夜になって眠れなくなるものだろうか。明らかにヘロイン中毒のことだと僕は思う。

歌詞でこんなところがある。

I wonder should I get up and fix myself a drink
起き上がって飲物でもつくろうか

ここでわざわざfixという言葉を使っているのが何よりの痕跡だと思う。ジョンはわざわざ歌詞の中にそういったことをほのめかす痕跡をいれているんだよね。多分、恐らく、その可能性は無くも無い…かな?

疲れた時も思わず口から出ます。この曲。

Blackbird
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/6/11

●Black bird とはカラスではなく、黒いツグミのこと。
●ポール一人で歌とギターのパーカッションを担当。
●黒人公民権運動への支持を表明する曲(ホワイトアルバムが発表された1968年に、あの黒人公民権運動の父、キング牧師が暗殺されている。そんな時代だったのだよ。)。


この曲は、ギターの練習曲として、70年代、全国中の中学、高校の休み時間には、ギター青年がこの曲を、「天国への階段」「スモークオンザウォーター」と並んで爪弾いていた(という)。

また、この曲の思い出だが、昔、アメリカに渡った野茂と吉井があるインタビュー番組に一緒に出演していた時、吉井の趣味がギターだってことで、いきなりこの曲を引き出した事があった。ホストは絶賛したが、野茂は全くの無反応、無表情だった。その野茂表情に僕は笑った。

Blackbird singing in the dead of night
Take these broken wings and learn to fly
All your life
You were only waiting for this moment to arise

夜のしじまに歌う黒ツグミよ 傷ついた翼を広げて飛ぶことを覚えるがいい 
生まれてこのかた お前が大空に舞う瞬間をひたすら待ち続けてきた

ポールって励ましの曲歌わせたら凄いね。名曲でも小曲。いや、小曲でも名曲。

Piggies
★★★☆☆

◆(George) V=George 収録日=1968/9/19,20,10/10

●ジョージの社会風刺の曲。
●バロック調。
●1991年の日本公演で演奏した。


歌詞は社会風刺。糊のきいた白いシャツstarched white shirts)を着た豚っていうのはようするにホワイトカラーのプチブルのことでしょ。ワーキングクラス(労働者階級)を自認する彼らのちょっとした嫉妬と皮肉だよね。

In their eyes there’s something lacking what they need’s a damn good whacking
奴らの生活には何かが欠けている 思いっきりやらないと目が覚めないだろう

っていう歌詞を本気にしてチャールズ・マンソンはシャロンテートを殺したと言ったらしいが、他人のせいにするなよ。

面白いフレーズを探すとすれば下の1行かな。

And for all the little piggies life is getting worse
全ての子豚にとって、人生は段々悪くなる

ってポールが段々よくなる(Getting better)って歌ってたのに。このころのジョージの歌詞にはところどころ、微妙なポールへの反感、あてつけが感じられる。
ちなみにホワイトアルバムのB面は犬(Martha)ではじまり黒ツグミ(BlackBird)、豚(Piggies)、あらい熊(Rocky Raccoon)と続くことから、別名アニマルサイドと呼ばれていた。っていうか僕は呼んでいた。

ジョージの皮肉とバロックな曲調が見事にマッチ。

Rocky Raccoon
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/8/15

●ジョンがビートルズでハーモニカを弾いた最後の曲。
●この曲のドラミングでポールがリンゴに高圧的な指示を出し、それに嫌気がさしたリンゴが現場放棄したとの説がある。
●アメリカの銃社会を批判した曲。


ホワイトアルバムには、銃(gun)に言及した曲が3曲も収録されている。言うまでも無いが、「THE CONTINUING STORY OF BANGALOW BILL」「HAPPINESS IS A WARM GUN」「ROCKY RACCOON」の3曲だ。これらの曲は、銃で全てを解決しようとする暴力主義批判である。
この年、キング牧師、ロバートケネディが暗殺され、ベトナムではソンミ村の大虐殺、ヨーロッパでは、ソ連によるチェコへの侵攻。パリでは学生暴動等、日本でも東大紛争、三億円事件、金嬉老事件や永山則夫事件が起き、全世界的に騒然とした年だった。その年に発表されたホワイトアルバムはそんな世相を反映してか、よく言えば、多様、悪く言えば混沌としている。ようするにもめにもめた世相を反映して、ビートルズ自身も内輪もめをしはじめたんだと言えなくも無くも無い。か?

さて、このROCKY RACCOONだが、愚直な田舎もののロッキー・ラクーン青年は、本名はマギルという名前のくせに、自分のことはリルと呼び、みんなはナンシーと呼んでいた、ようするに江戸時代的に言えば、遊女、現代日本的に言えば、キャバ嬢に入れ込んでしまったわけですな。そのマギルがある男と駆け落ちして街に出て行ってしまった。怒り狂ったラクーン青年、相手の男を仇と勘違いし、銃を用意し、街へ出て二人が泊まるホテルへと乗り込んでいった。
ただ、その男はただの男ではない江戸時代的に言えば、侠客、現代日本的に言えば、ヤクザ。田舎物のラクーン少年が逆立ちしてもかなわないような百戦錬磨のツワモノだったわけであります。ちなみにその男の名前はダン、いやダニー、いやダニエル。
ロッキーはダニエルとマギルが踊っていたホテルの中のダンスホールにいきなり突撃し、「決闘だっ」って銃を向けた。ただ、そこは素人の悲しさ。百戦錬磨のダニエルに一瞬のスキをつかれて、逆に撃たれ足を負傷する。ちなみにこのときのダニエルの銃声はリンゴのダダッていうスネアが表現していますな。
足を撃たれたラクーン青年を介抱したのが酔っ払いのヤブ医者。部屋に入ってくるなり酔った勢いで机で横になる。「ロッキー、強敵だったようだな。」だけど、負けず嫌いのラクーン青年は「なぁにただのかすり傷だよ。」ってホテルの部屋に戻る。
と、その部屋には聖書が置いてあった。前に止まった牧師さんが、ラクーン青年が更正するようにとその聖書を置いていったのさ。

っていう話ですね。でこの曲でポールは何を言いたかったかっていうと、アメリカ人の素朴な暴力主義を批判してるってことなんですね。

楽曲的には、マーチンのホンキートンク風のピアノとジョンのハモニカがいい味出しているってところかな。僕的にはせっかく、冒頭のセリフみたいな歌みたいな部分を覚えたんだけど、カラオケにこの曲が無くて凄く残念ってところか。
ちなみに、ジョージは収録には不参加。彼がいなくても何事も無く物事が進んでいくという悲しいお話でもある。

歌いだし部分はビートルズ随一の難しさ。

Don’t pass me by
★★☆☆☆

◆(Ringo) V=Ringo 収録日=1968/6/5,6,7/12,22

●リンゴが作った最初の曲。
●ホワイトアルバムの多様さに言及されるとき「カントリー等」といわれるのはこの曲のこと。
●フィドルという土俗的バイオリンが使われたビートルズ唯一の曲(リンゴよ、これがやりたかったのか)。


中山康樹氏はこの曲を凡曲としておられますが、僕は許す。
彼女を待っている男が彼女がなかなか来てくれないので段々憂鬱な気分になってくる。

Don’t pass me by
僕を無視しないで

心の中で叫ぶ男。しかし、実は彼女が遅れたのは交通事故に巻き込まれたからっていう彼女からの電話が入る。疑って悪かったね。って心の中で後悔する男。まぁそんな歌詞ですな。こんなオチをつける必要があったのだろうか。まぁリンゴの処女作だし、僕は許す。

この曲に関して、「僕等はこの曲をカントリー風に演奏した。僕が自分で書いた初めての作品が出来上がったときにはすごく感動した。みんな本当によく助けてくれた。」って言ってるけど、おい、おい、ジョンとジョージは不参加じゃないか。
いつも、リンゴちゃんに物凄くお世話になっておきながら、ジョンもジョージも冷たいよな。でも、こういう時、ポールって頼りになるんだよね。

リンゴ初の単独の作詞、作曲作。

Why don’t we do it in the road
★☆☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/10/9,10

●この曲に参加させてもらえなかったジョンが後々、ポールを恨んだという曲。
●インド瞑想旅行中に彼らの目の前で猿が突然、セックスをはじめたことをヒントに作った。


Why Don’t We Do It In The Road
なんで道路であれをしないんだ (勿論、道であれをするさっ

知らんがな。そんなこと、って突っ込みたくなる。でも、このitは、この曲をひらめいた経緯から、SEXと取るのが正解か。そういえば、Free as a birdのプロモでも道に止まった車の中でセックスしているシーンが一瞬出てくるな。
また、その頃、何かと比較されたストーンズ(本当は仲良し)のStreet fighting manの返歌とも言われたこの歌。ミックジャガーがその歌の中で I’ll kill the king.王様を殺すぞ)って力んだの対して、「じゃぁやってみれば」って冷ややかに突き放した歌とも言われたんだ。こういうところに、当時、流行だった「革命」に対して、安易には同調しない彼らのポジョションが垣間見られるね。「僕はお前の頭の構造を変えたい」と歌ったジョンの「Revolution」とも一脈通じる。ジョンがこの曲に参加したかったって意味もそういう文脈からも読み取れないだろうか?

この曲で注目したいのがジョンが、この曲に参加させてもらえなくてせつない思いをしたということ。そういえばリンゴも一時、ビートルズを離れた理由として、「自分だけ仲間はずれになって、他の3人が仲良し」に感じたからと言っている。逆にいえば、それほど、彼らはお互いを愛していたということだ。愛していたからこそ、その関係に一瞬の隙間風が吹いたときにそれがお互いを傷つけたって事だろうと思う。
彼らは、お互いにもっともっともっと仲良くしたかったのに、それが出来ない現実にいらだっていたんだね。なんだか羨ましい。

変な曲。でもそのエピソードはなかなか奥深い。

I will
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/9/16,17

●ジョンはTake1からTake67まで延々と木片で金属片を叩き続けたという。
●ベースは、ポールのスキャットベース。


For the things you do endear you to me Ah you know I will
君の一挙一動が僕を惹きつけてやまない 約束するよ きっとだ

って部分を歌うのがとっても気持ちいい曲です。恐らくこの部分を歌うのが、僕的にはビートルズの曲のカラオケで一番気持ちいい瞬間だね。

もっと拡大して言えば、ここ、ここ。(特別に、今回は、コード付きだよ

Dm      F    Bb    C7   Db7
endear you to me ah, you know I will

曲としてもいかにもポールらしい秀作。

Julia
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/10/13

●ジュリアとはジョンの母親のこと。
●歌詞の中に出てくる Ocean chlld っていうのはヨーコのこと。
●ビートルズの曲の中で唯一、ジョン一人で収録した曲。
●ホワイトアルバムで最後の収録された曲。


この曲といえば、必ず、Oceanchildのことが言われるけど、歌詞の中で一番、美しいのは下のフレーズだと僕は思う。

Julia, Julia, morning moon, touch me
So I sing a song of love, Julia

ジュリア、ジュリア 朝の月 僕に触れて
そして、僕は愛の歌を歌う。ジュリア

RCサクセッションに「多摩蘭坂」という歌に、「お月様見ている。♪君の口に似てる♪キスしておくれよ、窓から♪」
っていうのがあるけど、僕は密かにジュリアのパクリだと思っている。

ジョンがヨーコを真正面から歌ったはじめての曲。

THE BEATLES(DISC-2)

THE BEATLES(DISC-2)

TOCP-51119-20
1967年11月22日発売(英)

●ビートルズ初の2枚組。アップルレコードからの最初のLPとなる。
●RIAA(全米レコード協会)によると全米で1900万枚を売り上げた。
●誰が名付けたのか「ホワイトアルバム」と呼ばれる。真っ白なジャケットには、特製の歌詞付ポスター、シリアルナンバーがついていた。
●聴く人間の年齢、音楽経験値、そんなもので印象がまったく違ってくるアルバムであり、広大なビートルズ宇宙が今も広がっている事を痛感させられる。(大鷹俊一)
●もともとはA doll’s house(人形の家)というタイトル名が考えられていたが、同じ時期、ファミリーというグループが「Music in a doll’s house」という名前のアルバムでデビューしてしまったためこの案は破棄されたという。(「愛の事典」より)

Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Bandであらゆることをやってしまったビートルズ。彼らの次なる仕事がこのThe Beatlesだった。でもとにかく、演りたい曲をどんどん録音していって後で2枚組にしたって感じもしなくない。音楽ジャンル的には、ロック、フォーク、カリプソ、カントリー、ヘビーメタル、バロック、ブルース、ムード歌謡、童謡、ポップス、アバンギャルド等、あらゆる音楽が詰め込まれていると評されることが多い。

でもよく聴いてみるとトータルで彼らが当時もっていたテーマが見えてくる。 それは、個人と全体、個人と社会、個人とビートルズその相克だ。Revolutionでジョンが発表する「みんな」としては革命には協力するよ、でも僕個人はちょっと待てってそういう揺らぎ。
一人一人のやりたい音楽とビートルズとしてやるべき音楽、その2つに揺れ動いた彼らの内面と、騒乱の時代1968年が見事にシンクロしたとき、このアルバムが生まれた。ポールが夜中、一人でMother Nature’s sonを録音している同じ日の夜、ソ連がチェコに侵攻している。そんな時代だったんだ。

このアルバムが「The Beatles」っていう名前に落ち着く前、「A doll’s House(人形の家)」だったということは示唆的だ。The Beatlesという絶対の存在の前で、ビートルズの一員という役割に限界を感じていたジョン。彼にとってのビートルズとは、この時期、人形の家(不自由な家)にすぎなかったということではないのか。

しかし、結局は、「The Beatles」という名前に落ち着く。「A doll’s House」こそが「The Beatles」だっていう隠しテーマを残したまま...

アルバム一つ一つにユニークに付けられたシリアルナンバーは体制の中で唯一、個を区別する記号だったのか。ちなみに、私が持っていたLPの番号は、A190657であった。ちなみに0000001番は、ジョンが持っていたという。(ただし、ユニーク番号に関しての疑義が「ビートルズの謎」(中山康樹著)から出されている。

Birthday
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1968/9/18

●このホワイトアルバムで唯一、実質的なジョンとポールの共作。
●ヨーコ、パティ、リンダまでもがコーラスに参加。


歌詞は全くいいかげん。

You say it’s your birthday
It’s my birthday too–yeah

今日は君の誕生日だって
僕の誕生日でもあるんだぜ イエー

何も考えてない歌詞だよね。ジョンが後で、クズのような曲と評したのもわかるようなわからないような。
楽曲的には、迫力があるのはいいけど、ヴォーカルが聞き取りにくいのが残念。リンゴのドラムソロも聴けるが、まったくオカズなしで同じリズムを刻む。思うにドラムソロをやらせたら、リンゴほど慎み深く、しかも飽きさせないドラマーはいないんじゃないかな。思わず、タカタカタカタカって叩いちゃうよな。普通。単調さに耐えられなくてさ。僕はこんなところにリンゴの凄みを感じるんだよな。
例えば、新宿駅のアルタの前でたまに、ストリートドラマーが一人でソロやってるけど、技術的には上手いんだけど、その速叩きは、なんだか恥ずかしいんだよな。

演奏は大迫力。カツゼツがもっとよければね。

Yer blues
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/8/13,14,20

●当時の英国ブルース・ブームを皮肉った曲。
●歌詞の中にボブ・ディランの「やせっぽちのバラッド」に出てくるミスタージョーンズが登場する。


それまでギクシャクしていたホワイトアルバムのセッションにおいて、この曲を狭い倉庫のようなところで収録し、そこから結束が強まったと言われているが、本当はどうなんだろう。というのも、この曲の収録の直後にリンゴが一時バンドを離れているからね。

このYERっていうのは、ビートルズが自分たちの象徴としてつかうフレーズだよね。「ビートルズがやってくる。ヤアヤアヤア」って言うでしょ、で、その(YERの)ブルースってことは、この曲こそがビートルズのブルースだっていう意味だと思う。

実はビートルズは自分たちのことを「ニセモノ」だっていう意識が合ったんだと思う。勿論、これは誤解を招きかねない言い方なんだけどさ。ビートルズがホワイトアルバムでいろんな種類の音楽が出来たって事は、逆にいえば、彼らは何にも所属する場所がなかったということだと思うんだよな。例えばストーンズにおけるリズム&ブルースみたいな本籍が無いのさ。ジョンは以前、どこかで、自分たちはパクリの天才だみたいな言い方もしてた。
ジョンはおそらく、イギリスにブルースブームが起きたときに、それは全部「ニセモノ」に思えたんだろうな。だからこそ、自分たちが本物の「ニセモノ」をやってやろうと思ったんだと思うよ。それがこのタイトルYer Bluesの意味だと思う。
ちなみに同じようなセンスでつけられたタイトルに「ラバーソウル」っていうのもある。アメリカの評論家がローリングストーンズの歌をニセモノのソウル(黒人音楽)だから、プラスティックソウルって呼んだのを面白がって、それなら、僕たちの音楽はラバー(ゴムの)ソウルだって自嘲気味につけたんだよね。

In the morning wanna die
In the evening wanna die
If I ain’t dead already

朝から死にたくなる
夜になればまた死にたくなる

I’m lonely wanna die
淋しくて死にたくなる

Wanna die yeah wanna die
死にたくなるよ 死んでしまいたい

ビートルズのリーダーとして世界でも最高の人気と富を得た人間が持つこの絶望の言葉はなんということだ。
外的なジョンと内的なジョンの落差に僕たちは驚くしかない。

こんな激しくてストレートな言葉が吐けるところにジョンの天才がある。

Mother Nature’s son
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/8/9,20

●ポール一人で夜中にレコーディングした。曲はインドの瞑想キャンプ(リシュケシュ)で作られた。
●レコーディング中にジョンとリンゴが入ってきたがすぐに出て行った。


以前、ビートルズで学ぶ英会話というサイトでこの曲に関して、興味深い指摘があった。

『母なる自然の子・・・と、取るのが普通ですが歌詞カード上で”Mothe Nature’s son“と大文字が使われているのに注目。この大文字が慣用句であることを表していると考えるとまったく意味が違ってきます。”Mother Nature“は「自然の摂理」という意味で、つまりマアその・・・「オシッコ」ってことです。』

なるほど、それでこの歌の2番の歌詞の真の意味がわかった。

Sit beside a mountain stream
see her waters rise
Listen to the pretty sound of music as she flies.

山のせせらぎのそばに腰を下ろし 水かさの増すのをごらん
その流れが奏でる美しい調べに耳をかたむけよう

これはこう訳すべきではないのか。

山のせせらぎのそばでしゃがんで、水かさが増すのを見る
ここで何故、水かさが増すのかといえば、しゃがんでオシッコをするからである
オシッコが飛ぶかわいい音の調べに耳をかたむけよう

ポールの詩は、ジョンのストレートさに対してこういったイタズラがあるから別の意味で奥が深いのだ。茶目っ気あるよね。
一方、曲はこれもまた素晴らしいポールの才能がまさに山の湧き水のようにあふれている。

あとこの曲の3番にSwaying daisiesゆれるヒナギグ)ってあるけど、このヒナギクっていうのは当時のヒッピーを象徴する花なんだよね。Dear Prudence でも、「雲がヒナギクの花輪みたいだ」という歌詞があるけど、リシュケシュはきっとヒナギクが綺麗だったんだろうね。

これもメロディといい、歌詞のお茶目さといいポールらしい名曲。

Everybody’s got something to hide except me and my monkey
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/6/27,7/1,23

●マハリシの講義を歌詞にしたという。
●ビートルズの曲の中で最も長いタイトル名。


この曲のポイントはMonkeyっていったい何?ってことだと思う。

ジョン自身は、Me&My Monkeyは、自分とヨーコのことだって言ってる。この曲の収録の1ヶ月前に「トゥーバージンズ」という二人のヌード写真をジャケットにしたアルバムの収録をしている二人。「僕らには何も隠すところがないのよ」っていうこと。

ただ、別の解釈もある。このMonkeyっていうのはヘロインの隠語でもあるんだ。Come togetherMonkey fingerって歌詞があるけど、これは猿の指じゃなくて、ヘロインを注射する指ってことさ。ここの歌詞をその通り取ると「ヘロインは嘘をつかない」って事。まぁ、よく酔っ払いは「酒は嘘をつかない」ってうそぶくのと同じ心境か。

また、Monkeyっていうのは500ポンド硬貨の俗称でもある。よく、ルーニーとかクォーターとか海外の硬貨はあだ名があるでしょ。その一種ということ。これは香月利一さんっていうビートルズ研究家が言ってるんだよね。ようするに当時、アップルコープを立ち上げ、金に対して意識が高まっていたジョンがお金だけは嘘をつかないよという本音を漏らしたのかもって言えなくも無い。

最後の解釈はこのMonkeyを本当にと解釈するもの。「Why Don’t We Do It In The Road」は、インドで突然目の前の猿がセックスをはじめたことに衝撃を受けたポールがこの曲を書いたということをどこかで言っていたけど、同じくジョンもこの曲を書いたんじゃないかな。「猿は何も隠さない」って思ったんじゃないかな。

僕は、ジョンが自分の曲に関して、後から、あれこれ言うのは正確な事ばかりではないんじゃないかと考えてる。嘘ついてるってわけじゃないけど、勘違いがあったり、あえてそうじゃない発言をしたりするんじゃないかな。そういう一筋縄ではいかない男だよ。ジョンは。

僕はこのカウベルが大好き。カモンカモンカモンっていう狂気の叫びも好き。ジョージのギターも好きだ。

Sexy Sadie
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/8/13,21

●マハリシヨギがインドの瞑想キャンプで女を強姦しようとしたという噂を聞きつけたジョンが、裏切られたと感じて作ったと言われている。
●曲のタイトルにマハリシの本名を出そうと思ったが、ジョージに説得されてやめたという。最初は、Maharishi, what have you done?(マハリシ、君は何をした?)”だったという。


マハリシといえば、今でも信奉者がいる。マハリシ総合研究所ってまだ新宿にあるらしいし。だが、偉大な権力を手中に収めた宗教家はえてしてこういうこと(女に手を出す)ことをやるもんなんですかね。オウムの麻原もそうだったよね。
別のエピソードだけど、こんな話がある。リシュケシュにヘリコプターがやってきた。マハリシと一緒に乗りたい人って言われてジョンが真っ先に手を上げた。後で聞いてみると「マハリシと2人きりになったところで人生の秘密を聞こうとおもったんだよ」って言ったという。ポールがアンソロジーで嬉しそうに語っていた。
ジョンのその無邪気な好奇心を踏みにじった形になってしまったマハリシ。それでもジョージはマハリシを信じ続けたという。

ちなみに、僕が高校の頃、「ガキデカ」って漫画が爆発的に流行ったんだけど、その漫画の主人公・こまわりくんの小学校の担任の先生のフィアンセが清治さんっていったんだけど、その人を頭に浮べて「セクシーセイジ~♪」と歌ったものだ。全くもって個人的な経験だが、こういうところに書かないともう書くこともないと思ったので敢えて書かせていただきました。

エンディングのギターがとっても美しい。

Helter skelter
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/9/9,10

●ザ・フーの「I Can See For Miles」に対する「やかましいだけ」と書いた文章を読んだポールが最高にやかましくてダーティな曲を書いてやろうとしてこの曲を書いた。
●曲の最後の叫びはリンゴの「指にマメができたじゃないか!!!」。
●ヘルタースケルターとは、イギリスの遊園地にある螺旋状の滑り台の事。Free as a birdで一瞬画面に登場する。
●シャロンテート事件の犯人、チャールズマンソンが殺戮現場の壁にこのタイトルを書いていたという。


1968年の混沌と動揺を音で表現したのがこの曲。ビートルズらしくないといえばらしくない。カラオケで歌おうとすると最初の歌いだしのところの音程を維持するのが難しい。

ジョージのギターはこういう曲には合わない。でも頑張れジョージ。

Long,long,long
★☆☆☆☆

◆(George) V=George 収録日=1968/10/7,8,9

●スピーカーの上にあったワインボトルが振動し、そのカタカタ音、共鳴音がそのまま曲の中に入っている。いいかげんと言えばいいかげんなな話だ。
●この曲の収録中、スタジオ内ではお香がたかれたという。
●ホワイトアルバムの中で一番音量レベルが低い曲。


この時期、ジョージが用意した曲には、この曲の他にも「Not guilty」とか、「All things must pass」とか名曲があるのに、なんで最終的にこの曲が収録されたんだろうか。勿論、そういった歴史的決断は、それはそれで味わいがあるんだがな。

あと、最後のうめき声みたいなのってどう?ホワイトアルバムが不気味って言われる所以の一因がここにもあるよね。

不気味さが意外に印象に残ります。

Revoltion 1
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/5/30,31,6/4,21
●ジョンが当時の政治状況に対して一言物申したくて収録した曲。
●破壊は創造につながるのか。破壊をするのなら、僕を数に入れないでくれ、いや入れてくれ と優柔不断なジョンの人間味ある歌詞。
●カタカタって音はタイプライターの音。

●ジョンは寝たまま仰向けになってこの曲を収録した。
●ホワイトアルバムで最初に録音された曲。


当時、新左翼の連中と付き合いがあったジョン。暴力革命に対しての自分の意見を表明した。この曲に対して、一般のファンには、小難しいやつと思われ、本物の左翼からはブルジョアとか走資主義と罵られたジョン。当時バリ封した教室でレコードプレイヤーを持ち込み、この曲をかけていたという全学連の闘士が沢山いたそうだが、なんとなく雰囲気で人々が動いた時代だったんだろうな。

一方、羽切美代子という人は「世界の果てまでも」というビートルズ詩集の中こんな勝手な訳をしていた。

前進するならば 方法はただひとつ それは革命さ
心ある人のために 必要なものは それは革命さ
わたしも仲間に入れるか 裸になって待つだけ 待つだけ オーライ
自由をとるなら 鎖をとるなら それは革命さ
偽善を憎むなら 方法はただひとつ それは革命だけさ
ひとりひとりが力があることを破壊することを学ぶ オーライ
平和をのぞむなら その前にすること それは革命さ
前進するならば 方法はただひとつ それは革命だけさ
ひとりひとりが力があることを破壊することを学ぶ 学ぶ オーライ

誰も英語がわからないと思って、ビートルズの名前を語って、自分の思想(のようなもの)を主張するなっていうの。ジョンはあえてそういった誤解(この歌を革命歌にしようとする誤解)をさけようと、ダラダラ歌ったのにね。
また、あの「スローなブギにしてくれ」の著者・片岡義男氏は、以下の部分を、

You say you’ll change the constitution
憲法を改正するとあなたはいう

と訳している。ここで歌われているのはそういう問題じゃないと僕は思うんだが…

ところで、この曲で一番、カッコいいのはやっぱり下の部分だ。

You better free your mind instead
But if you go carrying pictures of Chairman Mao
You ain’t going to make it with anyone anyhow

まず自分の精神を解放したらどうだい
毛沢東の写真を持ち歩いているようじゃ
革命なんておぼつかない

そういう偶像崇拝しているヤツっていたんだろうな。でもジョンは当時、地上の楽園とまで言われた中国の文化大革命の本質を見抜いていたんだな。

だらけた雰囲気がまた、時代状況を表していてグ~。

Honey pie
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/10/1,2,4

●古きよきジャズの香りがする。
●ジョンが渋いリードギターを弾いている。


昔の恋人がいつの間にか手の届かないスターになっちゃったっていう物語。僕は勝手にI’ve just seen a faceDrive my car の続編って考えているんだけどな。気の弱い男と、美人で奔放な女の子の恋の話さ。
当のビートルズだって逆の意味でおなじようなものだ。昔の彼女にそう思われているに違いないのだ。後にジョンはアメリカに定住するが、ポールはずっとイギリスにとどまり続ける。
ポールのアメリカ嫌いが批判と言うより皮肉という形で込められていると僕は思ったんだが、ポール自身は、「僕が子供時代に聴いていたヴォードヴィル音楽へのオマージュみたいなもの」と語っている。
ジョンはこの曲を嫌いだったみたいだけど、彼のリードギターには味がある。「Get back」「You can’t do that」と並んでジョンのビートルズ時代3大ギターソロ。面白いのはこの3曲それぞれ違った雰囲気のギターソロだってことだね。

楽曲的には、これはこれで楽しいし僕は好きだな。ポールってなんでも出来るのね。
下の部分で擦り切れた古い78回転盤みたいな音になるんだよな。

Now she’s hit the big time
今じゃ彼女は大スター

「ポールって何でも出来るんだね」的名曲がここにもあった。

Savoy truffle
★★★☆☆

◆(George) V=George 収録日=1968/10/3,5,11,14

●甘いものが好きで虫歯に悩むクラプトンをからかった曲。お菓子の名前が一杯出てくる。
You know what you eat, you are食べ物を見れば、その人がわかるんだ)の部分はデレクテーラー(アップルの広報部長)が作った。


中山康樹氏はこの曲にジョンが参加していないのにいい曲である事を根拠に、ジョンがいなくてもビートルズは成立するのだと暴言を吐いている。まぁ言わせておけばいいさ。

この曲の歌詞で一番重要なのは以下の部分だと思う。

We all know Obla-Di-Bla-Da
But can you show me, where you are?..

オブラディオブラダのことは誰でも知っているけど、君はどこにいるんだい?(姿を見せてご覧)

ジョージはポールにこう言ったことがある。「僕はそんな風に歌は作れない。君は何でも作り上げちゃうだろ。自分にとっては本当は何の意味も成さないことでも」と。すなわち、上記の部分はジョージによるポールの曲つくりに対して、お前の曲には、自分自身がいないじゃないかっていう批判をしているんだと思う。実は、この「君はどこにいるんだい」っていうフレーズは、Only a northrn songの「And I told you there’s no one there」(言ったとおり、そこには誰もいないんだぜ)というフレーズにも通底すると僕は思う。

でもそういった批判を歌詞の中に、さりげなく挿入するところがジョージのセンスだよね。まぁ慎み深い悪意というかね。

力強いギターが印象的。ジョージ久々のロックンロール。

Cry baby cry
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/7/16,18,9/16

●最後の「Can you take me back where I came from can you take me back…」ってところはポールが I will 収録中にアドリブで歌ったのをそのまま継ぎ足した。
●泣きなさい 赤ちゃん 泣きなさい お母さんに買わせなさい というベビー用品のCMをヒントにジョンが作った。


次のマザーグースのなんとも不気味な一節を下敷きにしているのは明白だ。「CRY,BABY,CRY PUT YOUR FINGER IN Y0UR EYE AND TELL Y0UR MOTHER IT WASN’T I」(泣け、赤ちゃんよ泣け、自分の指を自分の眼の中に入れて、お前のお母さんに、これは僕がやったんじゃないんだよっていいな。)

なんとも、不気味で暗く、懐かしく、そして魅力的なジョンの曲だ。おとぎ話のような、それでいて王室批判のような不思議な世界だ。
この曲がどうして不気味なのか、おそらく、このCry baby cryと歌っている主体がわからないということではないのか。僕が想像するに、この主体はどこか超自然的な存在、でも神というような崇高な存在ではない。身近な超自然的存在、すなわち日本でいうならば、妖怪、ケルト的に言えば、妖精のようなものではないのか。
この曲は4番でこう歌われている

At twelve o’clock a meeting round the table For a seance in the dark
12時になると みんながテーブルを囲み闇の中で降霊術の会が開かれた

これは、僕の想像だが、この降霊術の会で現世に現れてきた妖精が、赤ちゃんを泣かせようとイタズラをする。
何故イタズラをするかって言えば、現世からあの世に帰れなくなって怒っているからだ。そこで、最後のポールの歌が生きてくる。

Can you take me back where I came from can you take me back…
元いた場所に戻してくれるかい 僕を元いた場所にもどして...

これが僕の解釈だ。
と同時に、最後のポールが歌う「Can you take me back where I came from can you take me back…」(もといたところに戻して)っていうのは、Get back セッションのテーマにつながっている。ポールの気持ちの中ではそういう気持ちがはじまっていたんだね。
ちなみに、ジョンは後にこの曲に関して「僕じゃないよ。くだらない曲だ。」と語っている。

ケルト臭ただよう不思議な世界。淡々とした名曲。

Revoltion 9
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) Sound Collage 収録日=1968/5/30,6/6,10,11,20,21

●ジョンがビートルズの中で最も時間をかけたという曲。
●ジョン曰く「革命を絵にしたようなもの」とのこと。
●リンゴとポールは不参加。特にポールは最後までこの曲をホワイトアルバムに入れることに反対したという。
●オノ・ヨーコの影響が最も強く出たビートルズナンバー。


この曲をどう評価するかでその人のビートルズに対するスタンスが決まってくるような曲。中山康樹氏はただのガラクタと切り捨てる。僕的にはありだな。
こういった前衛音楽はそれがどういった文脈に置かれるのかってことが重要になる。例えば、有名なのは、マルセル・ジュシャンが便器を展覧会に出展して「泉」と名付けたように。20世紀の芸術はコンテクストと常識の破壊がテーマになっている。
ジョンにしてみれば、この曲を、ビートルズのアルバムという文脈に入れる事がどうしても必要だったのではないか。その場所で聞かれるからこそ意味があったんだと思う。そして、そうされることで完璧なコンセプチュアルアートになったわけだ。なにせ全世界で3000万枚位は売れたんだからね。ホワイトアルバムは。

中身は混沌の世界。銃声があり、叫びがあり、朗読があり、サッカーの応援があり、赤ちゃんの鳴き声あり、ジョンのイビキがあり、それらをかいくぐって、ナンバーナイヌというエンジニアの声が繰り返される。そして曲も終盤にさしかかったところでヨーコが「You became naked」(あなたは裸になったのよ)と語りかける。それはジョンに対して言っているのか、リスナーである僕らに対して言っているのかは不明だが、なんだか救われたような気がするのは僕が騙されているだけなんだろうか。

1968年という混沌とした年、その年を「音」としてパッケージ化したら、こうなりましたっていうことだと思う。
繰り返すが僕はこの曲、嫌いじゃない。たまに聴きたくなる。

ただ、ジョン自身、アバンギャルドって意識はそれほどなかったのかもしれない。普通にいい曲だと思っていたのかもしれない。彼は言っている。「どんな音楽を聴くのかってみんなから訊かれるんだよね。僕は車が走る音を聴き、鳥の歌う声や人が呼吸する音を聴く。それに消防車。昔はよく夜に水道管の音を聴いたね。灯りがすっかり消えた中で、水道管が演奏するんだ。」

ジョンはどこまでも正直者だ。

世界のアイドルがついにここまでやってしまったか。たまに無性に聴きたくなる。

Good night
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Ringo 収録日=1968/7/22

●本来はジョンが息子のジュリアンに作った子守唄だが結局はリンゴに歌わせた。
●バックのオーケストラは35人編成。ビートルズの他のメンバーは声も楽器も入れていない。リンゴだけっていうのはこの曲だけ。


Revoltion 9が終わってこの曲が始まった時、多くの人はホッと安心するんだと思う。そういった意味でこの流れは正解。

のちにジョンはショーンにBeautiful boyって曲を書いて「モンスターは行っちゃったよ。ダディはここだよ」みたいな歌詞にするんだけど、さしずめ、ホワイトアルバムのこの流れでは、Revoltion 9というモンスターが去った後、安心してお休みっていう流れか。違うか?

ホワイトアルバムという混沌世界をこの曲がすべて帳消しにしてくれるような優しい曲。だと僕は思う。

YELLOW SUBMARINE

YELLOW SUBMARINE

TOCP-51121
1969年1月17日発売(英)

●同名アニメのサントラ盤。
●B面はマーチン・オーケストラの劇伴音楽。(本サイトでのレビューはありません)
●最高位はイギリス4位、アメリカ2位。

最初、ビートルズたちはどうでもいいやと思ったアニメ。でもその出来を見て、感動した4人。

確かに、このアニメは現代でも十分、通用。サイケデリックなコラージュに満ち溢れている。最近(2008年)、東芝のノートPCのCM(田村正和と山下智宏が出演)でも、Yellow Submarineを完全にパクった映像が流れていたよね。このアニメの永遠性を占めるエピソードだ。

アニメ画、ストーリー、声優などの分野には、ビートルズは参加していないけど、これはこれで、この時代を表現している作品だった。 ビートルズに関わったものは何故かみんな、後から見ると面白い。 これぞビートルズマジックか。

曲はジョージの2曲とHey Bulldogがいいよね。

Yellow Submarine
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Ringo 収録日=1966/5/26,6/1

●同名のアニメの主題歌。
●同曲は、Revolverにも収録されている。


このアニメ、シュールなタッチの絵とコラージュだよね。

昔、ゲバゲバ90分ってバラエティがあったけど、その時の挿入絵はイエサブのアニメに近かったような。また、横尾忠則のイラストも似ていたような。

ようするにそういうデザインがはやった時代だったんだろうな。

リンゴが歌うと全部、ほのぼのとするよね。これも凄い個性。

Only A Northern Song
★★★★☆

◆(George) V=George 収録日=1967/2/13,14,4/20

Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Bandセッションで没になった曲。
●Northern Songというのは、当時ビートルズの楽曲管理をしていた会社。


Northern Songというのはそのまま訳せば「北部の歌」ってことだ。この北部っていうのは、イングランドの北部、すなわち「リバープールの歌」、すなわち、「自分たちの曲」ってことじゃないか。
一般的には、自分達の利益を吸い上げるノーザンソング社への皮肉と解釈されているようだけど、僕はそうは思わない。これは、自分たちの曲、特に、レノン=マッカートニーの曲に対する皮肉だと思うよ。また、その頃、批判も増えていたビートルズの楽曲を自嘲気味に表現したとも解釈も成り立つよね。

この曲がせっかく収録したのにあの歴史的名盤ペパーには入れてもらえなかったのは、このジョージの皮肉(悪意)がペパーには相応しくないって思われたからってのが僕の勝手な想像。曲はピカピカしてて素晴らしいんだけどね。

If you think the harmony
Is a little dark and out of key
You’re correct
There’s nobody there
And I told you there’s no one there

この曲のハーモニーをなんだかあいまいで調子っぱずれだと思うんなら
君は正しいのさ
そこには誰もいないんだ
わかったかい そこには誰もいないんだ

でも、この部分をどう解釈する?

僕は、ジョージのポールの曲に対する辛口批評だと思う。Savoy truffleの中でもこう歌っているからね。(We all know Obla-Di-Bla-Da But can you show me, where you are?..オブラディオブラダのことは誰でも知っているけど、君はどこにいるんだい?」)

でも、忘れちゃいけないのは、そうは言っても、ジョージとポールは基本的には仲良しだったって事。ポールは後に、ジョージをいつもそばにいる弟みたいな存在だったと述懐しているよね。

さて、ジョージ。彼は寡作だが、そこには彼なりのプライドがあった。その歌には必ず自分が居るっていうプライドさ。

まぁ、居たとしてもBlue Jay Wayみたいにずっと居て他人を待ってるだけってのはどうかと思うけどね(笑)

とってもキラキラした曲。実は辛らつな歌詞。この落差がジョージ。

All Together Now
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/5/12

●映画「イエローサブマリン」のエンディングの曲。
●日本語に訳せば「それではみなさんごいっしょに」。


これは子供向けの曲だ。だが、その中に以下の行を含みこませておくところがポールのお茶目なところだ。

Can I take my friend to bed
友達をベッドに誘ってもいい?

子供とお母さんが一緒にこのアニメをみる。そしてエンディグでこの歌が始まる。そしてその中に、紛れ込まされたこの1行。お母さん、これってどういうこと?ってなるのを想像したんだろうな。

サウンド的には歌の入り方がとっても難しい。恐らく、ビートルズの歌の中でも最も難しい。こんな歌、もし子供のために作ったとしたら、子供いじめだよね。でも、ジョンとの掛け合いが楽しいね。

こういう曲作らせたら、ポールってやっぱり職人だよね。

Hey Bulldog
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/2/11

Lady Madonnaのプロモは実はこの曲の収録風景。
●ポールがリードギター、犬の泣き声を担当。


一見、語呂合わせ曲に見えるがいくつか重要なっていうか、いつか「使える」行があると思うよ。

Some kind of happiness is measured out in miles
ある種の幸せは旅した距離で測ることが出来る
Some kind of innocence is measured out in years
ある種の無知さ(無邪気さ)は年齢によって測ることが出来る
Some kind of solitude is measured out in you
ある種の孤独は君によって測ることが出来る

こんな事、さっと言えたらかっこいいだろうな。

楽曲的には、ピアノ、ギター、ベースが入っていくオープニングがかっこいいな。ジョンの声にも勢いがあるし。Yellow Submarineに入れておくのはもったいないな。それにポールのリードギターも、ジョンとポールとの最後の叫び合いも最高。

四人が顔をあわせてパッとこんな演奏が出来ちゃうんだからビートルズはやっぱり凄いね。

It’s All Too Much
★★★☆☆

◆(George) V=George 収録日=1967/5/25,26,6/2

●映画「イエローサブマリン」の挿入歌。

Only A Northern Songがポールへの皮肉だとしたら、この曲はジョンへの皮肉だ。
All you need is love (愛こそはすべて)といってる傍アルバムでは直前の曲でで、(そんななんて、It’s All Too Muchもううんざりだ)って言えるってんだからね。

It’s all too much for me to take
The love that’s shining all arund you

そんないっぱい受け止めきれない
君のまわりに光り輝く愛

It’s too much…..It’s too much
息が詰まりそうだ。うんざりだよ。

また、この曲の冒頭で、To your Moお前のママへ!) って叫んでいるんだけど、これはジョンのママ(=ヨーコ)へのあてつけじゃないのかな?
でもこんな歌の中にもジョージ特有の東洋哲学からの影響が見られるのが面白いね。

All the world is birthday cake So take a piece but not too much
世界は大きなバースディケーキだ 一切れとりなよ。でも食べすぎは禁物だよ

世界を関係性と捉える思想をユーモアあふれた表現にしたんだろうね。また、

The more I learn, the less I know
知れば知るほど得るものは少なくなる

これは、The inner lightの次のフレーズに極めて近いでしょ。

The farther one travels The less one knows
遠くへ行けば行くほど、知ることはすくなくなる

これは、学問をしたり、旅行したりして、知識を得たと思い込んでいる人々に対する批判だよね。瞑想こそが真の知を得る手段だってことを言ってるんだろうと思うよ。まぁ、これだけの境地に達するのは並じゃないけどね。多分。

映画では潜水艦がどんどん進むシーンのBGMとして使用され、見事にあっていた。

All you need is love
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1967/6/14,19,23,24,25

●1967年の夏 サマーオブラブのシンボル的歌となった。
●ヨーコがこの曲のことをいう時必ずLove is all you need という。文法的には正しいんだけどね。
●同曲は、Magical Mystery Tourにも収録されている。


There’s nothing you can do that can’t be done.
不可能なことをやろうとしたって無理だ

All you need is love の主題はもしかしたら、こっちのほうかもしれないと思わされる見もフタもないこの1行だ。

今、アワ・ワールドの映像を見ると、ガムでもかんでいるかのような余裕のジョンの表情。ポールは隣でなんか上機嫌。ジョージは緊張のリードギター。フレーズの最後の方がかなり曖昧。リンゴはいかにも体につけたビーズが重そうだけど、顔は笑っている。いつものリンゴだ。ミックジャガーやキースリチャーズも座って手拍子をしている。このころのミックってハンサムだな。
でも、このけだるい感じ。けっして若々しくは無く、楽しそうっていうよりも倦怠感ただようその雰囲気。サマーオブラブっていうのも今からすると伝説的なんだけど、実際は結構かったるかったんだろうな。なんて思ってしまいました。

最近になって評価がグングン上がっている、いろんな意味で不思議な曲。

ABBEY ROAD

ABBEY ROAD

TOCP-51122
1969年9月26日発売(英)

●ビートルズ最後のセッションとなる。
●RIAA(全米レコード協会)によると全米で1,200万枚を売り上げた。
●全世界での売上2,000万枚以上。ビートルズのアルバムでは最高を記録。
●ポールの裸足、横断歩道の後ろの車のナンバーがIF28(もし、生きていれば28歳)というようなことからポール死亡説が起きた。
●20世紀後半で最高のミュージカル・ファンタジー(中村とうよう氏)

Abbey RoadのジャケットはEMIのアビーロードスタジオから出て、その前の横断歩道を横切る4人。このジャケ写も、「ビートルズの最後だよ」っていう演出になっている。

もともとエベレストっていうタイトル名が考えられていて、ヒマラヤでの撮影も検討されていたというが、メンバー一同、面倒ッ臭いってことで却下。近所で撮影すればいいじゃないかって、(Why don’t we do it in the road?)ことで、スタジオ前の横断歩道で撮影された。当時、4人の心はバラバラだったというが、これが最も有名なジャケット写真になるんだからやっぱりビートルズは凄い。っていうかこの現場運は並みのものじゃないよね。自分達の身の回りに起きる事件、スキャンダル、偶然を全て自分達の味方に引き込むビートルズという巨大なエネルギーマグマ。ビートルズを楽しむということは、そのエネルギーに触れる事かもしれない。

すでに、バラバラになっていた4人が最後のアイデアと意地を振り絞って作ったのがこのアルバム。A面は、それぞれの個性のぶつかり合い、B面はメンバーの力が一つにまとまったメドレーが秀逸。ジョージ・マーティンのプロデュースの才能も頂点を極める。

ジョンのCome together(みんな集まれ!)の一言で、メンバーが集まって、“The end(最後)”を演出したとも言われたけど、真実はわかりません。残ったのはこの素晴らしいアルバム。僕たちはただ、謙虚に耳をかたむけるしかないよね。

Come Together
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/7/21,22,23,25,29,30

●もともとドラッグ研究家のティモシー・リアリーのカリフォルニア州知事選挙出馬への応援ソングとして書かれた。
●その昔、みのもんたが文化放送でやっていた同名のラジオ番組のテーマ曲だった。
●チャックベリーの「You can’t catch me」との盗作問題が起きた。
●ジョンのシュッが実は、Shoot me俺を撃て」で、後からmeを削除した。ただ、ところどころでmeの残痕が聞こえる。


さすが、ジョン。貫禄のロックンロール。って言うほど、ノリはよくないけど、僕が大好きな1曲だ。
リンゴのドラムもポールのベースもジョージの甲高いギターも存在感あるよな。

でもなんと言ってもジョンのボーカルは神。

ゲットバックセッションで散々な目にあったメンバーだが、恐らく契約がまだクリアしていなかったんだろうな。再度、アビーロードスタジオに集まって、いやいやながら曲作りを始めたんだ。リーダージョンのCome togetherの掛け声でみんなやるときはやるって感じの演奏を聞かせてくれているね。って収録の順番から考えるとこれは嘘だが、この曲順を考えれば、リスナーにはそう思わせようとしたっていう面はあるんじゃないの。

歌詞は、Come togetherみんな集まれ」って言いながら、自分のことを歌っているような気がする。自意識過剰なジョン。

1)He got joo-joo eyeball
目をギョロギョロさせている

このjoo-jooってGet backのJo-Joと重なるよね。やっぱりJo-Joってジョン。

2)Got to be a joker he just do what he please
ジョーカーになり、好きなことしかやらない。

僕は、ベッドインなんかで散々笑いものになったジョンの事を自分でJokerっていってるんだろうと思う。勿論、好きなことしかやらないのもジョンの特徴だし。

3)He got monkey finger he shoot coca-cola
ここでいうmonkeyは猿って意味じゃない。ヘロインだ。coca-colaだって、スカっとさわやかなもんじゃないコカインだ。(※ある意味ではさわやかなのかもしれんが、僕は知らん。)これもジョン自身のことだよ。

4)He bag production he got walrus gumboot He got Ono sideboard
奴は世間に袋をばらまく セイウチのゴム長靴をはく “オノ”のサイドボードを備える

こんな風に直訳しても意味わかんないよね。ココで言うバッグプロダクションっていうのは、ジョンとヨーコが設立したアーティストのための会社名、それはバギズム(大きなズタ袋に入って言いたいことを言う運動)ってこととも関係している。

また、セイウチってのはジョンのシンボル。Gumbootゴム長)ってのはコンドームの隠喩。オノを横に従えてってこれはジョン自身のことでしょ。そのままさ。
だから、最後にこう言うのさ。

Come together right now over me
俺の上で 今すぐ、一緒にイけ!!

アビーロードジャケットの、白いスーツにバスケットシューズで颯爽と4人の先頭を切って歩くジョンの姿に当時、最高のクールをあこがれた団塊日本人って沢山いたんじゃないかな。

※ComeTgetherの歌詞に関しては、以下、卓見の解説が存在しています。ご参照ください。
「Come Togetherの歌詞を読み解く」(ビートルズ・・・いつも心にビートルズ)

ビートルズで最もカッコいいといったらこの曲。

Something
★★★★☆

◆(George) V=George 収録日=1969/5/2,5,7/11,16,8/15

●イエスタディに続いて、カバー曲が多いビートルズナンバー。
●スモーキー・ロビンソンやジェイムス・ブラウン、レイチャールズもこの曲をカバー。
●フランクシナトラもこの曲をカバー。ただ、シナトラはこの曲をレノン=マッカートニー作だと思っていた。ジョージ、微妙にショック。
●後にマイケルジャクソンからもこの曲はレノン=マッカートニー作だと思っていたと言われ、ジョージさらにショック。


誰しもが(多分ビートルズファンの90%位)同意するジョージ・ハリソンのビートルズ時代3大名曲の1曲(残りは、While my guitar gently weepsHere comes the sun)の一つだ。 「ジョージの作品ではポールはベースプレイで張り切るの法則」が当てはまり、彼のベースはリードギター以上にメロディアスである。
同様に、リンゴも張り切りなかなかのドラミングを聴かせてくれる。

一方、ジョンもアコスティックギターで参加するが、その上からジョージが音をかぶせ、ジョンののギター音を消したという。 にもかかわらず、ジョンは「Somethingはこのアルバムの中で一番良い曲だと思う。本当にね。」と言っている。彼らの関係はよくわからん。

歌詞はいかにも慎み深いジョージらしい。

Something in the way she moves
Attracts me like no other lover

彼女の仕草がかもし出す不思議な魅力がほかのどんな恋人よりも僕を惹きつける

Something in the way she woos me
I don’t want to leave her now
You know I believe and how

愛してとせがまれれば嫌とは言えないよ
彼女のそばを離れられない それでいいと感じるんだ

She loves you Yeh Yeh Yeh から比べると格段の表現の進歩だ。といいたいところだが、このまどろっこしい言い方はどうだ。もっとも、そこがジョージの魅力といえば魅力なのだが。

ジョージ・ハリソン、生涯の代表曲。

Maxwell’s Silver Hammer
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/7/9,10,11,8/6

●ポールの脳天気かつシュールな1曲。
●マザーグースにも、母親と父親を斧で殴る歌があるが、そこからの発想引用。
●LPの背表紙では、この曲がSomethingより前にクレジットされていた。
●ポールが強引にシングルのしようとしたが出来なかったらしい。


Maxwellが振り下ろすSilver Hammerとは象徴的に「人生の突然の転落」を暗示しているとポールは言っている。

アンドレ・ブルトンは、「シュール・レアリズム宣言」で「シュールレアリズムは、例えば、白昼のビル街にダイナマイトを仕掛けて、日常現実を転覆するようなものだ」と述べた。シュールレアリズムってのは超現実と訳されて、現実的ではないものと思われているけど、時として、シュールな出来事は我々を不意に襲う。そういう瞬間こそが逆にいえば現実的だっていうのがシュールレアリストなんだろうね。

でも、最近、ここで言う意味でのシュールな事件が本当によく起きるけど、犯人達が最後に手にするものが悲観的な観念ナイフじゃなくて、想像力楽天性だったら、どうなっていたんだろうかと思わざるを得ない。

この歌の一番にPataphysics(パタフィジックス)っていうのが出てくるけど、これはアルフレッド・ジャリの空想科学のことだ。(おれは大学の頃、仏文科のA君によく聞かされていた。彼はパタフィジカル学会というのを勝手に作っていて僕は無理やり会員にさせられた。まぁ内容はよくわからなかったが。
ポールはここでPataphysics(パタフィジックス)という単語を出す事によって「この曲はシュールな曲ですよ」ってことを暗示しているんだな。
ただ、僕が持っているLPの歌詞カードでは、Pataphysicalではなく、by the physical となっていた。だったらどう訳すんだろう?ちなみに、他にP.C.31は、B.C.31となっていた。これもどう訳せばいいんだろう?紀元前31世紀ってことかってつっつこんでみたくもなる。当時は訳は耳で聞き取ってたんだね。さらに、訳の真意なんてそんなに気にしない時代だったんだろうね。

実はこの曲、別のエピードがある。ジョンはこの曲を特に嫌っていたのは、Maxwellにハンマーで殴られるのは自分のことではないかと妄想していたというのだ。すなわちポールが自分のことを殴るのではないかとおびえていたということだ。ドラッグって怖いね。

シュールな歌詞とポップなメロディの絶妙なアンバランス。

Oh! Darling
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/4/20,26,7/23,8/8,11

●井上陽水の「クレイジーラブ」や10CCの「DONNA」、沢田研二の「おまえがパラダイス」等にパクられている。
●ポールは、この声を出すため、毎朝スタジオに早く来て歌い、声をあえて枯らしたという。


ジョンは自分に歌わせてもらえればもっと上手く歌えたのにと愚痴ったといわれている。
たしか、Why don’t we do it in the roadの時も参加させてもらえなかった言っていじけたジョン。逆にFor you bluesGet backでリードソロを嬉々として弾くジョン。
こういったジョンの感情の動きを今から検討してみると、逆に、ビートルズというユニットに対して最も親密性を求めていたのはジョンだったんじゃないかと思う。
折角なんだから、ジョンに対して、ただのコーラスじゃなくて、もっとからみの強いパートを用意してあげればよかったのに、Don’t let me downでジョンがポールにしてあげたみたいにさ。

「のっぽのサリー」に勝るとも劣らないポールの絶叫曲。

Octpus’s Garden
★★★☆☆

◆(Ringo) V=Ringo 収録日=1969/4/26,29,7/17,18

●リンゴのビートルズ時代2曲目の作詩作曲。
●前奏のギターはジョージのテクが冴える。


この曲はビートルズメンバー達のいざこざを避け、そんなトラブルの無い海の下で暮らしたいという夢想を曲にしたっていうリンゴ精一杯の反抗ソングと言われた。

確かにこの歌詞は聞きようによっては結構辛らつではないか。
We would be so happy you and me
No one there to tell us what to do

も僕もうんとハッピーになれるだろう
あれこれ指示する奴はいないのさ

これを聴いた時、どう思ったのか。ポール。

楽曲的には、ジョージのギターの音色がいいよね。そういえばLet it be(映画)の中で、この曲のリンゴの作曲を手伝ってあげるジョージの姿があったな。
この歌での“も僕もうんとハッピーになれるだろう”の””っていうのはジョージのことだったんじゃないか。リンゴ。

ビートルズ時代のリンゴの代表曲。彼の人柄がそのまま曲になってます。

I Want You[She's So Heavy]
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/2/22,4/18,20,8/8,11

●エンディングのノイズはジョージのムーグ・シンセサイザー。
●ジョンがヨーコに対して歌った歌。


ポールがMaxwell’s Silver Hammerでシュールレアリズムを歌詞で表現したのに対して、ジョンは音で表現。 僕的には、ジョンのセンスの圧勝と見るがいかがか。衝撃のエンディングは、そのままジョンの感情(怒り?)を表している。人生の突然の転落をこの曲ほど表現できているものは無いな。もっとも、このエンディングを突然の射精のメタファだと言った友達がいたけど、それはそれで納得出来る説だ。

さて、このエンディングの衝撃を味わうためには、真剣にこの曲と向き合う事が大事だ。BGMとして聴いたんじゃその衝撃は無い。 この曲を聴くときはヘッドフォンで最高に集中してことをよく覚えておくように。

ちなみに、その昔ドリフターズの「ちょっとだけよ」ギャグの時にかかっていた曲はこの曲のパクリだろ。志村けんのバカ殿登場にはBirthdayが使われていたし、アイーンだってジョンの真似だって事、僕は知ってるんだぞ。(※バカ殿メイクは寺山修司の「田園に死す」のパロティ?)日本武道館公演で、ビートルズの前座だったドリフターズ。いろんなところにビートルズの影響受けてるんですよね。

その題名の通り、ビートルズの曲で最も重い曲。エンディングは衝撃的。

Here Comes The Sun
★★★★★

◆(George) V=George 収録日=1969/7/7,8,16,8/6,11,15,19

●ジョージがアップルの会議をサボり、クラプトンの家で日向ぼっこをしている時に作曲。
●ジョンは不参加。


絵に描いたような名曲だな。
太陽が出てくるよ~っていうのを楽観的に歌い上げるジョージ。ビートルズ時代のジョージの中でもっとも屈託がない曲だ。
「ホラホラ、お陽様が出てきたよ」っていうように、太陽を擬人化しているところが、インド哲学の影響をほのかに(露骨じゃなく)うけてるところがいいよね。

ジョージが生み出した奇跡の名曲。

Because
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul,George 収録日=1969/8/1,4,5

●ヨーコが弾くベートーベンの月光の曲を逆さから弾いてもらいそれを曲にしたという(誰か試した人いるんでしょうか)。
●オープニングはジョージのムーグ・シンセサイザー。
●3人×3回のコーラスからなる。(リンゴはコーラスは不参加)
●僕の中学校の時の下校の音楽だった。


Because the sky is blue, it makes me cry
Because the sky is blue

空が青いから僕は泣きたくなる
なぜって 空が青いから

おそらくビートルズの曲の歌詞の中でも最も美しいフレーズだと個人的に思うな。「太陽がまぶしかったから」とムルソーに言わせたカミュとか「自然は限りなく美しく永久に住民は貧窮していた」と詠んだ伊東静雄をなんとなく思い出させるよね。
ビートルズの崩壊っていう現実を目の前にしてポールはLet it beと歌ったのと同じように、ジョンは「空が青いから」ってそう歌ってるような気がするのは僕だけか。

「青空が僕を泣かせる」って歌詞に泣かされる曲。

You Never Give Me Your Money
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/5/6,7/1,11,15,30,31,8/5

●アップルの新マネージャー、アランクレインを皮肉った歌。

曲はかなり美しいのに、何で歌詞がこんなに現実的(露骨)なんでしょ。名曲への道をみずから放棄したっていう点でものすごく潔い曲だと思うね。

You never give me your money
You only give me your funny paper and in the middle of negotiations you break down

あんたは僕に金をよこさない
変てこな紙切れをよこすだけ
交渉をはじめると その真っ最中にあんたはつぶれちまう

あまりにも歌詞が現実とそのままなんで、よくこれをみんな受け入れたな。(アラン・クレインをマネージャーにすることに関しては、ポールだけ反対したという経緯がある)喧嘩にならなかったのか。
僕はずっと不思議なんだけど、ビートルズってお互いがお互いのことをけっこう辛らつな批判している。
それをみんなで演奏しているんだよね。ってことは、ビートルズにとってあらゆることはシャレってことなんだろうか。普通、もめたら、そんなことを外に歌として発表しないでしょ。

One sweet dream
Pick up the bags and get in the limousine
Soon we’ll be away from here
Step on the gas and wipe that tear away

荷物をかかえてリムジンに乗り込むんだ
じきに僕らはここからいなくなる
愉快な生活をスタートさせて涙を忘れるんだ

そして、これなんか、今にもポールが僕、もうやめるよって言っているようなもんじゃないのか。えっえっ?

そしてエンディングは

1 2 3 4 5 6 7
All good children go to heaven

よいこはみんな天国へ行ける

さて、ジョンとジョージは天国へいったのだろうか?

最初のメロディから展開部、そしてエンディング。ポールの引き出しの多さに脱帽。

Sun King
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/7/24,25,29

●途中のスペイン語風のところは、実はメチャクチャな歌詞。

前の曲とのつなぎにコオロギの鳴き声がするよね。
昔、何かの本でコオロギの鳴き声を秋の季節感とともに、楽しめるのは日本文化のおかげみたいなことを読んだんだが、それは本当なのだろうか、とこの部分のコオロギの鳴き声を聴いて思ったな。
それとも、ジョンは当時、日本文化に興味を持っていたから敢えて入れたんだろうとも思ったが、実際にこの部分のテープはポールが用意したらしい。

ジョークとコーラスの見事な融合。

Mean Mr.Musterd
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/7/24,25,29

●1968年5月のデモテープ(通称イーシャデモ)にすでに録音されていた。

もともと、この曲の後に、Her Majestyが、その後にPolythene Pamが来る予定だったという。

Takes him out to look at the Queen
彼女(Pam)は奴(Mr.Musterd)をつれて女王を見に行く

ここでQueenを見に行ったところで、HerMajestyになるんだったんだよね。多分。
でも、Her Majestyが無くなったっていうから、妹の名前ももともとシャリーだったのをパンに変えたんだ。次のPolythene Pamとの繋ぎを考えてね。ジョンはメドレーにあんまり興味ないと言ってるけど、実は結構、協力的だったりするんだよね。

ちなみに、Takes him out to look at the queenの1行は、金の匂いのするところに連れて行くとも訳せる。イギリスの札にはみんな女王陛下の肖像が描いてあるところから発生した隠喩(Queen=お金)だ。Panney LaneHer Majestyにも女王が出てくるから、そこでも、こういったダブルミーニングを楽しむ事が出来るよ。

楽曲的に面白いのは、タンバリンの入り方、7拍目から入ってくるのだ。Your mother should knowのハイハットの入り方と、TaxManのタンバリンの入り方と3つ揃えて、「3大ビートルズ打楽器不思議フィルインタイミング」と名付けよう。

ジョンらしいといえば、最もジョンらしい曲の一つ。

Polythene Pam
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/7/25,28,30

●1968年5月のデモテープ(通称イーシャデモ)にすでに録音されていた。
●実際にポリエチレンを身に付けていた女の子を歌詞の題材にした。


前の曲から引継ぎ、次の曲へつづく。完璧に役割を果たすのがこのPolythene Pamだ。アンソロジーでのバージョンがなんだかゆっくりで魅力的じゃないのに、ここに入ると完璧になる。
このあたりにビートルズマジックを感じるよね。たいていの曲が、没テイクではゆっくりなのをスピードアップすることによって完成テイクにする。さすがビートルズだ。

歌詞を少し見てみよう。

She’s so good-looking but she looks like a man
きれいな娘だけど男みたいなのさ
Well you should see her in drag dressed in her polythene bag
彼女の風変わりな格好をみろよ ポリエステルの袋を着ている
Yes you could say she was attractively built.
うん、いい体をしていると思うだろ

男みたいで、しかも、袋に入っている(バギズム)女って、これはヨーコのことじゃないか。

アーティスト・ジョンは、こういう風に、いつの間にか、作品の中に、個人的なこだわりフレーズを入れちゃう(公私混同しちゃう)んだよね。正直な芸術家ジョン、万歳!!

アビーロードB面メドレーのキモになる名曲。

She Came In Through The Bathroom Window
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/7/25,28,30

●実際、ポールの家にコソ泥が入り、父親の写真を盗んでいったという。

この歌のSheって誰のこと?発売当時から話題になった。

実際にポールの家に入った女泥棒を題材にしたとも言われたが、ジョンは、窓から入ってきたのはリンダかもしれない。って言ってた。でもそれはヨーコじゃないかってのが多くの評論家たちの定説。

彼女は結構いい家のお嬢さんだ。Protected by a silver spoon生まれのよさに守られて)っていうからね。

確かにヨーコは安田財閥の家筋、祖父は、日本興業銀行の頭取だった人だ。ジョンがどこかで言ってたんだけど、二人で話しをしている時、メイドさんが入ってくるんだって、ジョンはメイドさんに聞かれたらはずかしいってんで声のトーンを落とすんだって、でもヨーコは変わらない。結局、メイドを人間としてみるか、道具としてみるか、それが上流階級か、労働者階級かってことらしい。こういうのってもう「育ち」として身についている作法だから、フとしたところに出ちゃうんだろうな。

この曲で面白い1行は以下だ。

And so I quit the police department
And got myself a steady job

そこで僕は警察を辞め、地道な職業についた

警察官こそ、地道な職業だろって思うんだけどさ。ポールの感性じゃあ違うんだろうな。あるいは、当時、全世界的な学生運動があり、警察官は悪者の代表みたいに言われていた時代でしょ。
だから、こういった歌詞になるのかな?ここで言ってる地道な職業ってのは、何だろう?もしかしたら、デイリーメイルの記者(Paperback writerを意識)かな?

ジョージ独特のギターの名演が聴ける。

Golden Slumbers
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/7/2,3,4,30,31,8/15

●16世紀の作家のトーマス・デッカーに作られたGolden Slambers Kiss Your Eyesという詞にポールがメロディをつけた。
ビートルズ自体がGolden Slumbers(黄金のうたた寝)中に見た夢なのか?


この曲から、段々、クライマックスに向かっていく。何のクライマックスかって言えば、それはこのアルバムのエンディングに向かうと同時に、ビートルズのクライマックスに向かってさ。

Once there was a way to get back homeward
かつてそこには故郷に続く道があった

これを聴いただけで、気の早いリスナーはこの故郷っていうのは、ビートルズ、そしてみんなが仲良かった時代って考えちゃうよね。The Long And Winding Roadと同じようなコンセプトだってね。

でも決定的に違うのは、The Long And Winding Roadはまだ、現在形だけど、Golden Slumbersではすでに過去形になっている。しかもOnceなんてついてたりして、そこがまた更に悲しいところだよね。

ついにビートルズ終焉への序曲がはじまる。

Carry That Weight
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul,George,Ringo 収録日=1969/7/2,3,4,30,31,8/15

●ジョンは不参加。スコットランドでヨーコと交通事故を起こして入院していた。

Boy, you’re going to carry that weight
Carry that weight a long time

君はその重荷を背負っていくんだ。これから長い間ずっと

はて?これは誰に向かっていっているんだろうか。ポール自身か、それともメンバーを含めた全員か、あるいは僕たちリスナーに対してだろうか。
なんだか、おとぎ話で魔女かなんかに宿業を言い渡される時のセリフだよね。想像力を豊かにするならば、このThat Weight(重荷)っていうのは、自分達がビートルズだったっていう事実の事かもしれない。今後、ビートルズが解散してそれぞれがソロ活動をしたとしても、ビートルズっていう重荷はみんな背負っていかなきゃいけないんだよ、っていう一つの予言みたいなものかもしれないね。

でも3人(ジョン以外)の合唱はやけに明るいんだよね。特にリンゴの野太い声が大きく目立つんだよね。
また、You neverと同じフレーズがまた出てくるんだ。まるで宝塚歌劇みたいにさ。B面のトータルのイメージを出そうとしたポールの演出。素晴らしい。

みんなのコーラスがとっても楽しそうな曲。ジョン不在は残念。

The End
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/7/23,8/5,7,8,15,18

●ギターバトルは、ポール、ジョージ、ジョンの順番。

And in the end
The love you take Is equal to the love you make

そして結局 君が受ける愛は君がもたらす愛に等しい

全世界に愛を訴え続けたビートルス。そのビートルズが最後に残した言葉。なんだか呪文のような教訓のような諺のようなこの1行。
熱狂とともに、はじまり、混沌と共に終焉を迎えたビートルズ。今から35年も前のこととは思えないほど、僕たちの興味を引き続ける。

そしてこらからもずっと僕たちにとっての神話であり続けるんだろうと思う。

実は、ギター、ドラムス、そして「物語」を含めてビートルズ最高の演奏。

Her Majesty
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/7/2

●本来、メドレーに入れようとしたが没になった曲をエンジニアがテープの最後につけていた。それを偶然に、ポールが聴き、OKをだしたことによって、日の目を見る。
●ポール、エリザベス女王即位50周年記念祭で女王の目の前でこの曲を演奏。


Her Majesty’s a pretty nice girl but she doesn’t have a lot to say
Her Majesty’s a pretty nice girl but she changes from day to day

女王陛下はとってもいい娘 だけどたいした意見を持っていない
女王陛下はとってもいい娘 だけど日によってコロコロ変わる

I want to tell her that I love her a lot but I gotta get a bellyful of wine
すごく好きだよって言ってあげたい でもその前にワインをいっぱい飲まなきゃね

Her Majesty’s a pretty nice girl
女王陛下はとってもいい娘

someday I’m going to make her mine, oh yea,someday I’m going to make her mine.
いつの日か僕のものにしてみせる いつの日か僕のものにしてみせる

短いんで全部書いてしまいました。

ここで一つ邪推。Her Majestyとは本物の女王ではなく、紙幣(お金)のことではないか。
お金は自分ではしゃべらないけど、日によってその価値はすぐに変わる。そんなお金をいつか、いっぱい稼ぎたい、そんな歌にも読める。かな?

ビートルズの最後っぺみたいな曲。それでも名曲。

LET IT BE

LET IT BE

TOCP-51123
1970年5月8日発売(英)

●発売は1970年。ビートルズ最後のアルバムとなる。
●同名映画のサントラ版であると同時に、そのレコーディングセッションが解散の直接の引き金となり、発売が解散後になってしまった不運なアルバム(ザ・ビートルズ大全)
●プロデューサはフィルスペクタだったが、最終段階での彼の仕事に対し、ポールは嫌悪したという。

1969年に入って、ビートルズのメンバーはほとんどビートルズの活動に興味を失っていた。その中でひとりポールだけが、みんなのケツを叩く。リハーサルを含めて撮影して、最後にどっかでライブにする。そしてそれを映画にするっていうコンセプトでこのセッションは始められた。ただ、もうみんなの気持ちはひとつにならない。

ホワイトアルバム時点では個々人のエゴのぶつかり合いの末でも、かろうじて保っていたビートルズというイメージはここにきて、もはや形骸化していたってこと。特にジョンは常にヨーコを横にはべらせ、心ここにない演奏を続ける。この「痛さ」こそ今のビートルズなんだってことを言わんが為の撮影になってしまった。Abbey Roadが音楽でビートルズの最後の演出をした、とすれば、このアルバムはスキャンダルでもってその最後を演出した、とも言えるんじゃないかな。

でも、そこにビートルズがいる。それだけでこの映画も、アルバムも大ヒットしたんだよな。

また、あるイベントで新宿・京王プラザホテルにルーフトップコンサートが大写しにされたのもわざわざ見に行ったな。

Two Of Us
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31

●ゲットバックセッションにおいて、この曲の練習中にジョージとポールは口論となる。
Two of us の二人とはポールとリンダ(ポール談)。


僕は、アルバムLet it Beの構成曲は、それぞれが、解散への物語の1コマだと思っている。

さて、Two of usだ。ポールとジョンのコーラスはそれだけで感涙ものだ。それにジョンの口笛もいい味だしてるよな。誰だってこの姿を見れば、Two of usをポールとジョンだと思うよな。それに以下の歌詞を見ればさ。

You and I have memories
Longer than the road that stretches out ahead

君と僕には思い出がある。僕たちの前に続くはるかな道のりよりも長い思い出

この「君と僕の長い思い出」をさかのぼって、元いた場所に彼らは帰れたのか?これがアルバム「Let it be」 のテーマなんだと思う。

We’re on our way home We’re going home
僕たちは家路をたどる。家に帰るんだ

また注目の1行は次の1行だ。

You and me chasing paper Getting nowhere
君と僕 紙切れを追いかけてもどうにもならない

ここでのpaperは、アビーロードの「You never give me your money」で歌われている、You only give me your funny paperpaperと同じものだと思う。この頃のアップル社をめぐる様々なわずらわしい契約書類のことだろうな。ようするに、ポールもジョンもそういった雑事がほとほと嫌だったんだと思うよ。だって、彼らは芸術家だからね。

ジョンとポールのコーラスが切ない名曲。

Dig A Pony
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/30

●最初はAll I want is youというタイトルだった。

ルーフトップコンサートでも歌われたよね。歌詞カードをスタッフが掲げて、それをジョンが見ながら歌ってたよな。確かに、語呂合わせでつながっていく曲だから作者のジョンも覚えられなかったんだろうな。(まぁ、昔からメチャクチャ歌うのがジョンの個性なんだけどね。)でも、この曲の歌詞のつらなりはただのつらなりじゃない。Canでつながっているっていうのがポイントだよね。つまり、何でも出来るよ、出来るよ、出来るよって励ましている歌なんだな。そう考えれば、ジョンのヨーコへの優しさあふれる曲なんだと思うよ。

you can penetrate any place you go
どこへも行きたいところに突き進めばいい
you can radiate everything you are
自分のうちにあるあらゆるものを発散してごらん
you can syndicate any boat you row君の漕ぐどんなボートもシンジケート化できるんだ

具体的に何をしたらいいのかわからんけど、励まされた気になるでしょ(笑)

この曲にも面白いフレーズが隠されている。それは2番だ。
I pick a moon dog
……
I roll a stoney
Well you can imitate everyone you know

ここで言うmoon dog はビートルズの事(ビートルズはデビュー前、1959年頃、一時ジョニー&ムーンドックスと名乗っていた)だと思われる。そして、次にI roll a stoney これは、「僕はローリングストーンズだってこと。」。
そして、「you can imitate everyone you know」は、すべてをまねることが出来るってこと。これらを強引につなげるとこうなる。

僕はビートルズに追いつく。僕はローリングストーンズ、すべてをビートルズを真似ることができるよ。」ってようするにWe love youこの世界に愛を)でAll you need is love をパロり、サタニックマジェスティーSgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Bandを真似たストーンズへの皮肉ですね。

最後のこのタイトルの意味だけど、Dig a ponyってのは馬を掘れ!ってなんだか卑猥な命令文だよな。でもさらに深読みするとPony = Pretty ONo Yokoのことになるんだよね。

ジョンのエゴ丸出しって感じの曲。この曲の強引さは、僕は好きだ。

Across The Universe
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/2/4,8,1970/4/1

Let it beのバージョンは、テンポを落とし、オケとコーラス隊をかぶせてある。勿論、フィルス・ペクタのアレンジ。
●映画の中で、この曲をやっている時にポールがあくびする。
●2005年全世界を騒がせたピアノマンがこの曲を弾いたとの報道が。ガセだったがこんな所にもビートルズの存在感が。
●NTT東日本のCMで使われる。このCMにはSMAPが出ていた。
●三井不動産レジデンシャルのCMとしても期用される。ただし、ケネディ・クワイアのカバー。


好きな曲の一つだな。曲が素晴らしいしジョンの声を素晴らしい。ビートルズの最高傑作のひとつだと思う。

でも、この曲のイメージは多くの人は、言葉がコップから溢れ出てくるってところから成り立ってるんだと思うけど、以下のところが重要なんじゃないかと思っている。

Nothing’s gonna change my world
何ものも僕の世界を変えることは出来ない

重要なのは、他には左右されない自分自身の世界だって価値観。これは、言うならば、ビートルズの中心価値であり、当時の状況とシンクロして、多くの人々が共感したコンセプトでもあるよね。

この考え方は、もともと1)Rainそして、2)Within you without youから、引き継がれた価値観なんだ。

1)Rain
when it rains and shines, It’s just a state of mind 
雨が降ろうと晴れようと心の状態が問題なんだ

2)Within you without you
no-one else can make you change
誰も他の人は君を変えることは出来ない

それにしても、ビートルズの曲はそれぞれの曲の関連性を見ていくと見えてくるものがあるよね。それだけ、彼らが自分の作品に対して誠実だったって事が在ると思う。

また、注目の歌詞は別にもある。以下だ。

Thoughts meander like a restless wind inside a letter box
They tumble blindly as they make their way Across The Universe

思考は郵便箱の中の落ち着かなげな風のようにさまよいでたらめに転げながらこの世をくまなくめぐる

ジョンは観念とか思考とかに関してあんまりいいイメージを持っていなかったんだろうな。
やっぱり彼は感性の人だってことだと思う。
同様に、ポールもFixin a hole で、以下のように議論を否定的にとらえていたよね。

See the people standing there who disagree and never win
And wonder why they don’t get in my door

あそこに立っている連中をごらん むなしく意見を闘わせながら
自分たちが僕のドアに入ってこない理由を考えあぐねている

これは、大事なものは、論理よりも感性だ。ビートルズ革命のもう一つの重要コンセプトだ。

時間が経つに連れて、評価がうなぎ上りした名曲。

I Me Mine
★★★☆☆

◆(George) V=George 収録日=1970/1/3,4/1

●ビートルズ最後のレコーディングになった曲。
●映画Let it be ではこの曲にジョンは参加せず、ヨーコとワルツを踊っていた。


ジョージ自身はこの曲は自分のことを書いたと言っているが、多くのファン、評論家たちは、これはポールに対しての皮肉だと捉えた。そりゃそうだよな。僕もそう思う。少なくともポールに対してってことだけじゃなくて、当時のビートルズ、アップルのメンバーに対する歌だって言うのは間違いないと思うよ。下を見てくれや。誰だってそう思うよな。

Now they’re frightened of leaving it
Everyone’s weaving it,
Coming on strong all the time,
All through the day I me mine.
I-me-me mine, I-me-me mine,

それを言わずにいるのをこわがっているみたいに
みんなが我がちにしゃしゃり出て
のべつまくなしにまくしたてる
朝から晩まで 俺が 俺が 俺が

自分自身の感性が重要だって言ったとしても、お互いにそのエゴを通そうとしたら、必ず、ぶつかってしまう。じゃあ他人とどうやって協調していけばいいの?これがこの歌のテーマである。

楽曲的に言えば、Let it beバージョンではフィル・スペクターによって、オケがオーバーダビングされ、1分半くらいだった原曲は約1分間引き伸ばされたという。
僕はそれでよかったんだと思う。スペクターバージョン好きだな。

スペクターの仕事が最もいい方向に働いた名曲。ジョンとヨーコのワルツは印象的だよね。

Dig It
★☆☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/24,26

●もともとは13分にわたるジャムセッション。その中から1分30秒切り取られてココに入れられた。
●ジョージマーチンがシェイカーで参加。


ライクアローリングストーンってのはボブディランの曲だ。1965年だっけ。コンサートでエレキギターを持って登場したディランに裏切り者みたいな罵声が浴びせられたっていう曰くつきの曲だ。マッドバズビーっていうのは、当時のマンシェスターユナイテッドの監督ってことだ。マンUってのは、ベッカムがいたイギリスのサッカーチームでしょ。まぁ、どうでもいいことだけどね。

また、ジョージマーティンが筒状のマラカス(シェーク)振ってこの曲に参加。なんとも中途半端な絡み方だよな。ビートルズの育ての親として、これが精一杯の関わり方だったということか。

息子たちの確執をどうしようもなく見守る父親の情けなさ..。この頃のメンバーの暴走は誰にも止められなかったって事が痛いほど感じられるセッションの一幕を挿絵的に挿入した一曲って言えるんじゃないかな。

長かったセッションをここまで縮めたスペクター。いい仕事しています。

Let It Be
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31,1970/1/4

●映画「悪霊島」のエンディングテーマとして使用。
●アルバム版とシングル版とは別ミックス。アルバムはフィル・スペクター、シングルはジョージ・マーチン。
●Mother Maryとは聖母マリアではなく、ポールの亡くなった母親のことらしい。


Let it beなすがままにせよ)っていう歌詞は当時、ポールのビートルズ解散に対する心情と解釈されてんだよね。もう、どうにでもなれって感じなんだろうか。でも僕は、出来る事を一生懸命やっていれば、結果はついてくるっていう前向きの解釈をしたいな。

確かに、映画Let it beの中でのこの曲の演奏はなんともせつない。やる気の無いジョンやジョージ、せつないリンゴ、その中でカメラ目線で一生懸命に歌うポール。また、Let it beのジャケットを見てみると、ポールだけカメラ目線で後の3人は向かって左の方を見ているでしょ。その目線の違いが悲しいよね。

昔、このピアノはよく練習したな。友人のO君も好きだったから、よく歌ったよ。Let it beを「レルピー♪」って歌ったな。

ビートルズの中で最も人気のある超名曲。

Maggie Mae
★☆☆☆☆

◆(traditional) V=John 収録日=1969/1/24

●リバプールのトラディショナルソング(マギーメイという娼婦を歌った歌)。

この曲は最初にポールがジョンと出会った1957年7月6日セントピータース教会の祭りでのジョンのコンサート時に演奏された曲だったという。
これをLet it beセッションで演奏したとき、ジョンもポールもそのことはわかっていたはずだ。
どんな気持ちだったんだろうね。なんかそういう二人の想いを想像すると、ただのつなぎの曲って感じがしないよね。

彼らの楽しそうな演奏を聴くだけで涙ものだ。

I’ve Got A Feeling
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul,John 収録日=1969/1/30

●ポールの曲とジョンの曲を合体させている。
●ルーフトップコンサートでも演奏された。


Two of usで「一緒に帰ろう」って言ったがLet it be で「なすがままになせ」って境地に達したポールと、Dig a pony で「欲しいのはヨーコだけだ」って宣言し、Across the Universeで「何も俺を変えられない」って言い切ったジョンがこの曲で邂逅する。

この曲で特徴的なのは、ポールのパートが全部、現在完了形なのに対し、ジョンのパートは完全に過去形になってしまっていることだ。この時間のズレ(意識のズレ)こそがこの曲の聴き所ではないか。

Oh please believe me, I’d hate to miss the train
And if you leave me I won’t be late again
Oh no. Yeah I’ve got a feeling yeah.

正直なところ 電車に乗り遅れたくないんだ
君が僕と別れたならもう決して遅れずに済むんだけど
ある感情が僕を捕らえた

なんだか負け惜しみみたいにも感じるこのフレーズだが…一方、ジョンはこう返す

Everybody had a hard year
Everybody had a good time

誰にでもつらいことはあったし、いいときもあった

ポールはジョンはこのフレーズで、もう終わってること悟ったんだな。その悟りが、

I’ve Got A Feeling!!(キターーーーー!)

なんだと思う。

ジョンのフレーズとポールのフレーズが見事に重なる。気持ちいい。

One After 909
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/30

●ジョンがクォリーメン時代に作曲。
●1963年に一度収録。だがその時は没。


ジョンとポールとが蜜月だった頃、ジョンが作った。
Let it beの映画の中でポールが歌詞があんまりよくないみたいなことを言ってるくせに、口からフレーズがスラスラ出て来るんだよ。当時、 よく演奏したんだろうな。メンバー、思い出の一曲だ。ノリのよさ抜群。ビートルズがロックンドールバンドであったことを今更思い出させる。

I’ve Got A Feelingでジョンが言っているEverybody had a good timeいいときもあった)、そんな頃を想像させる演奏だね。

ポールが言うようにこの曲の歌詞が変なのは、主人公が電車に乗れたのか乗れなかったのかがわからんからだ。
彼女を追って、駅に行ったら「この駅じゃないよ」っていわれて、家に帰って確認してみると電車番号が違ってたイエ~。
でも、一方でもうちょっとつめてよ、隣に座らせてよ、氷みたいに冷たくしないでよ。
って、おい、おい、電車に乗ってるがな(笑)、どっちなんだ~。

ノリノリのロック。僕はこのジョージのギター好きだな。

The Long And Winding Road
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31,1970/4/1

●フィル・スペクターが原曲にオケやストリングスやコーラスをオーバダブ。ポール怒る。
●ソニー・ウォークマンのCM曲として使われた(矢野顕子が歌ってた)。


The long and winding road that leads to your door,
Will never disappear, I’ve seen that road before
It always leads me here, leads me to your door.

君の扉へと続く長く曲がるくねった道
それは消えることなくたびたび現れてはこの場所へ僕を連れ戻す
どうか君の扉へと導いてくれ

この歌詞を見ると、ポールの最後のジョンへの思いを想像してしまう。映画「Let it Be」の中での演奏はあまりにも悲しい。それぞれがバラバラっていう事を白日のもとにさらしてしまったよね。でもメロディは素晴らしい。さすがポールのメロディメーカーとしての才能は抜群だ。

それにしても、未練がましいポール。

ビートルズ後もコンサートではよく演奏するポールの十八番。

For You Blue
★★☆☆☆

◆(George) V=George 収録日=1969/1/25,1970/1/8

●ジョンがスライド・ギターを弾いている(横には勿論ヨーコが)。

この曲の聴き所はジョンのスライドギターだ。

上手いか、下手かは聴き手が判断すればいいのだが、ジョンがジョージの曲に参加しているということが重要だと思うよ。
While my guitar 以来、long,long,longSavoy truffle等ホワイトの曲には不参加(Piggesでは豚の鳴き声のアドバイスのみ)。
I me mineでは、踊るのみ、この曲の後もOld brown shoeSomethingジョンはアコスティックギターを弾いたらしいが上からジョージのギターで消されてらしい) 、Here comes the sunと不参加気味。
その中でこの曲だけはスライドギターを弾いている奇蹟をもっと噛み締めたいね。
逆にいえば、スライドやらせてもらうってことで参加OKって事だとも言えるが、まぁ邪推はともかく、味わいたいね。

楽曲的に言えば、古きよき時代のブルースの焼き直しってことなんだろうか。この曲もビートルズの面々のルーツを知るってうえで重要か。

ミュージシャン(ギタリスト)としてのジョンが楽しめます。

Get Back
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/27,28,30

●もともと、パキスタン移民に対するイギリス政府の政策に対する抗議の意味があった。
●リードギターはジョン。
●Get back と叫びながら、ヨーコの事をみたいただろう、ってジョンがポールに難癖をつけたという。


アルバムの最後のジョンの目立つギターが続けて収録されたのにはなにか意味があるんだろうか。そうでもしなければ、ジョンには最後の2曲は付き合ってもらえなかったんだと考えるのは邪推か。
それにしても、このジョンのソロ、70年代のギターロック青年の必須教材の一つだったな。

歌詞は、これは露骨。ジョンにビートルズに戻るように訴えたと解釈するよ。そりゃ誰だって。Jo-Joってこれジョンのことでしょ。
カリフォルニアの葉っぱを求めて行ってしまったって、言い方はソフトだけどさ、ビートルズに戻れっていうのと同時にドラッグの世界から足を洗えっていってるとも取れるよね。

Sweet Loretta Martin thought she was a woman
But she was another man

かわいいロレッタマーティンは女を自認していたけど、所詮はただの男だった

ってこれもヨーコの事だって気づいたら、そりゃジョンも怒るよな。まぁ、ポールはそんなこと言ってはいないんだけどさ。

このLet it beのアルバムはこのGet backで終わり。戻って来いというポールの叫びもむなしく、ビートルズはさらに解散への道を進むのでした。

ルーフトップコンサートは永遠に。プラグが抜かれた時は悲しかったな。

PAST MASTERS VOL.1

PAST MASTERS VOL.1

TOCP-51125
1988年3月7日発売

●ビートルズの初期のシングル曲を収録。
●CD時代に生れた作品だが、続くVOL.2と二枚組でアナログ盤も発売された。

Love me doからI’m downまでのシングル曲を収録。
僕にとっては、隠れた名曲がゾロゾロ。
70年代にビートルズに出会った僕たちは、このアルバムに収録されたYes it is とか、I call your nameとか聴けなかったからね。

Love Me Do
★☆☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1962/9/4

●このバージョンのドラムはセッションドラマーのアンディホワイト。

Love Me Doにおけるドラムで誰がやらなきゃってほどのもんじゃないと思うんだけど、このセッションではリンゴはやらせてもらえなかったんだよな。
この時の事を、さすが、人のいいリンゴでさえ、後々まで悔しがっていたという。

ビートルズのデビュー曲。のわりにインパクト低い。

From Me To You
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1963/3/5

●ビートルズ3枚目のシングル。

もともとギターのイントロだったのをマーチンがハモニカにアレンジをかえさせた。それでNo.1ヒットだ。

If there’s anything that you want,
If there’s anything I can do,
Just call on me and I’ll send it along with love from me to you.

なにか欲しいものがあったら、僕にしてほしいことがあったら
言ってくれればすぐに届けるよ
愛をこめて 僕から君に

明るいよな。この明るく屈託のないパワー。デビュー当時のビートルズの魅力だ。

Thank You Girl
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1963/3/5,13

●イギリスでは、From me to you のB面、アメリカ、日本ではDo you want to know a secret のB面として発売された。

この曲のエンディング近くのドラムの乱打は特筆に値する。
ビートルズの公式盤において、こんなリンゴのドラムは他には無い。って言うことは逆にいえば、他の曲ではいかにリンゴは敢えて抑制の効いたドラムを叩いていたのかということだ。
勿論、ジョンの声も圧巻だ。と思う。

僕のフェイバリットのノリノリ曲。

She Loves You
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1963/7/1

●ビートルズ4枚目のシングル。当時イギリスで160万枚の大ヒットを記録した。

この曲においてビートルズの初期はピークに達した。僕も高校の時、ドラムやったけど最初のダダッダダっていうのが気持ちいいんだよね。英語なんてどうでもいいやっていうんで、みんなで「シノッチューイェーィエーィエーィエー」って今にしてみればめちゃくちゃ歌ってたが、楽しかったな。で、その後、ギターの小フレーズが入るんだけど、M君のこの部分のギターが秀逸だったな。

She loves you, yeah, yeah, yeah
あの娘は君が好き  ああ そうさ

この曲、よく歌詞を読んでみると、そんなにYeah Yeahって騒ぐほどの内容じゃないんだよな。「抱きしめたい」とか「From me to you」だったら、女の子相手に訴える曲だからわからんでもないが、この歌詞は友達(男)に対するメッセージ(伝言)だからね。
でも、ビートルズのヒット曲1位(Hey Jude)も2位(She Loves You)も友人(男)に対するメッセージっていうは偶然だろうか。
実はいまやビートルズメッセージの代表曲のように扱われている「愛こそはすべて」だって、相手を励ます曲なんだよね。

これは、ビートルズがただのアイドルグループじゃなかったということだろう。
ポールはビートルズの歌詞はすべて良心に基づいていると話していたことがあったけど、そういった善意があったからこそ、メインストリーマーになれたんだよね。
ただ、ジョンの内面には、それだけじゃ納まりきれないものがあって、MoneyとかYou can’t do thatみたいな悪意のある曲も演ったんだと思う。

ノッケのドラム、コーラスから斬新の一言。勢いあるね。

I’ll Get You
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1963/7/1

●ジョンとポールの共作。
She loves you のB面。


ジョンとポールの共作ということだが、歌詞の内容を見るとポール臭がするな。この楽観的な意志の強さはポールだ。
ジョンのスタンスは、もし君が僕を一生愛してくれるんなら、僕も君を好きになるよ、っていう相手の出方を見るような感じが多いからね。

Well, there’s gonna be a time,
When I’m gonna change your mind.
So you might as well resign yourself to me, oh yeah.

君だっていつか必ず
僕になびくようになるだろう
だからさっさとあきらめて僕のものになれよ

初期の隠れた名曲。

I Want To Hold Your Hand
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1963/10/17

●邦題は「抱きしめたい」。
●ビートルズ、全米ではじめてのNo.1ヒット曲。


She loves you がイギリスで最大ヒットを記録したのに対して、このI Want To Hold Your Handはアメリカで大成功を収めた。
イントロが変わっていて、歌の入り方が微妙。ギターのソロもない。2コーラス目で歌詞を間違え、言葉がぶつかっている。
この曲は最初、雑誌かなんかの記事で呼んだんだけど、「ベートーベンに匹敵する前奏」みたいに書いてて、それは凄そうだと思って、初めて聴いた時、ちょっとがっかりというか、意外だったことを思い出すな。

この曲の歌詞が重要なのはこの曲が素朴な欲望をストレートに表現していることだ。
言いたいことを素朴に言う事、通常ははしたないと言われるようなことを屈託無く、素朴に表現する。
この正直さがビートルズの人気の秘密だったんだろうな。体制に無意識的に飲み込まれている若者の意識を自由という方向に解放したビートルズ。
この曲のブレイクは、時代が彼らのスタイルとシンクロした瞬間だったのだ。

Oh yeah, I’ll tell you something,I think you’ll understand.
When I’ll say that something
I wanna hold your hand

君に話があるんだ わかってくれると思うけど
僕がそれをいう時 君の手を握りたいんだ

ただ、ここで面白いのは、「何をいいたいのか」って言う事に関しては、Somethingってぼかしてんるだ。
そこにこの歌詞の広がりが生まれているんだよね。この肝心なセリフ(言葉=the word)をぼかすテクニックは、いろんな曲で使われるんだ。

1)Do you want to know a secret
Let me whisper in your ear Say the words you long to hear
耳元でささやいてあげる 君が待ちわびている言葉さ
2)All I’ve Got To Do
All I’ve got to do is whisper in your ear the words you long to hear
僕がただ耳元でささやくだけでいい 君が待ちわびている言葉をね

3)Getting better
Me used to be a angry young man Me hiding me head in the sand
You gave me the word I finally heard I’m doing the best that I can.

以前の僕は怒れる若者だった
真実を見極めようとはしなかった
でもある言葉を君が聞かせてくれたおかげで今じゃ一生懸命やってるよ

4)When I ‘m sixty-four
Any if you say the word, I could stay with you.
君がその言葉を言ってくれたらずっと君のそばにいよう

勢いのあるエネルギーの発散と肝心部分での恥じらい、このバランスの微妙さがビートルマジックの一つなんだな。

And please, say to me You’ll let me hold your hand.
お願いだから言ってよ。君の手をを握らせてくれるって

これなんかも、それまでのロックンロールの暴力性とはかけ離れた謙虚さだよね。
ビートルズの意義は、そういう言葉を巧みに駆使して、それまでロックンロールとは無縁な普通の中流階級の女の子達を一気にロックンロールのユーザー層にしちゃったってことなんだよね。

この曲、その歴史的意義に比べると、現在の人気が今一つなのが残念だ。

This Boy
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul,George 収録日=1963/10/17

I Want To Hold Your HandのB面。
●邦題は「こいつ」。


この曲は、ジョンの2面性が現れている。それが、This boyThat boyの2つだ。

This boyThat boyのことを女の子に告げ口するという構造になっている。
では、That boy とは、どんなヤツなんだろうか。

That boy isn’t good for you
あいつは君にふさわしくないThat boy won’t be happy,till he’s seen you cry.
あいつはきっと君を泣かせないと満足しないよ

おっと、That boyって、まるでジョン自身じゃないか。次の曲を見て。

1)僕が泣く
And when I do you’d better hide all the girls,
’cause I’m gonna break their hearts all ’round the world.

そのときは、女という女を隠しておかないと世界中の女の心を傷つけてやる
2)You can’t do that
If I catch you talking to that boy again,
I’m gonna let you down,

あいつとは二度と口きくんじゃない 今度見つけたらとっちめてやる
3)浮気娘
Catch you with another man that’s the end a little girl
浮気現場を抑えたらお前を生かしちゃおかないぜ
4)Getting Better
I used to be cruel to my woman
I beat her and kept her apart from the things that she loved

以前は恋人にもひどいことをした 殴りつけたり好きなことをやらせてあげなかったり

また、一方、This boyはどういうヤツかっていえば、臆病なヤツだ。

Would always feel the same,If this boy gets you back again.
君への想いはいつまでも変わらない もしも君が僕のもとへもどってくれるのなら

この相手の愛情を確認した上で、こちらから愛をあげるよっていうジョン。
そんなジョンの一面は、別の曲にも垣間見られる。

1)If I fell
If I fell in love with you Would you promise to be true
僕が君と恋に落ちたら裏切らないと約束してくれる?2)Any time at
Any time at all, all you’ve gotta do is call and I’ll be there
いつだってかまわない いつでもいいから、好きなときに電話を送れよ。すぎそっちに行くよ

自分がもうひとりの自分の悪口を言うっていう構造は、面白いよね。
この曲はよく言えばシュール、悪く言えばジョンの個人的妄想って僕は思うよ。

3人のコーラス、しかも1本のマイクでっていうのが、ビジュアル的にいいよね。

Komm, Gib Mir Deine Hand
★☆☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney Nicholas Heller) V=John,Paul 収録日=1963/10/17,1964/1/29

I want to hold your hand のドイツ語バージョン。

本当に正しいドイツ語なんだろうか。でも日本語バージョンでなくてよかったよ。もし、日本語で実現していたら、ビートルズへのイメージはだいぶ落ちていただろうからね(笑)。
特にコメントありません。

Sie Liebt Dich
★☆☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney Nicholas Heller) V=John,Paul 収録日=1964/1/29

She loves you のドイツ語バージョン。

「オヤジリッヒ」ってところが、意味無く可笑しい。She loves ってドイツ語で「オヤジ」っていうのか?
でも、残念ながらそれだけの曲だな。

特にコメントありません。

Long Tall Sally
★★★★★

◆(Johnsin Penniman Blackwell) V=Paul 収録日=1964/3/1

●リトルリチャードのカヴァー曲。
●邦題は「のっぽのサリー」。
●岸部一徳は、タイガース時代、このタイトルにちなんでサリーって呼ばれていた。


のっぽのサリー」っていう方がしっくり来るな。最近、「のっぽ」って言わないよね。これって差別用語?

この曲とにかくポールのボーカルが凄い。これは誰が聴いてもそう思うだろうな。テクニックっていうよりもこのはじけるエネルギーが凄い。
ポールの生涯随一と言ってしまったら、その他を否定するかのように聞こえちゃうからあまり使いたくないが、実際そうだと思う僕。

ポールの圧倒的な歌唱力で思わず、星5つ。

I Call Your Name
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/3/1

●ジョン、15歳の時に作曲。

途中でリズムが変わるでしょ。あそこがカッコいいよな。15歳の時に書いたとは思えんな。
歌詞的にはジョンの暗いエネルギーが爆発した曲だな。その頃のジョンて相当鬱屈していたんだろうな。近寄りたくないって感じのヤツだったのかもしれん。

ジョンの原点ともいえるブルースナンバー。

Slow Down
★★★★☆

◆(Larry Williams) V=John 収録日=1964/6/1,4

●ラリー・ウィリアムズのカヴァー曲。

マーチンのピアノもいい。でもジョンのボーカルがもっといい。

このジョンの悪意に満ちたジョンの歌い方が最高。

Matchbox
★★★☆☆

◆(Carl Perkins) V=Ringo 収録日=1964/6/1

●カール・パーキンスのカヴァー曲。

もともとピート・ベストの持ち歌だったのをリンゴが引き継いだという。

リンゴのとぼけた味がいいよね。

I Feel Fine
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1964/10/18

●オープニングのフィードバックは、ジョンがアンプに近づきすぎたことによって偶然発生したノイズだと言われていたが、後に、ビートルズが敢えて入れたという事実が判明。

ジョンにしては他愛の無い歌詞だが曲はよく出来ている。しかもビートルズが演奏するんだから、つまらなくなるはずが無い。goo goo g’joobI am the Warlusより引用)ってやつだな。
確かに大ヒットした。当然のように全米No.1ヒットになった。

でも、問題は、彼らが普通のオープニングだったら、ビートルズの作品とするには何かが足りないと感じてたってことだ。

だから、オープニングにあのギュイーンを入れたのだ。どうしてこういう発想が出来るんだろうか。
でも結果から言えば、あのギューインがあったからこそ、この曲は今でもインパクトとして記憶に残っているのだ。

こんな40年後のことを射程に入れていたとは思わないが、結果としてそうなっている。ビートルズの感性は何年進んでいるんだろうか。

元々、無難な名曲。その無難さにオープニングのフィードバックを入れて歴史的な名曲にしたビートルズのセンスは凄い。

She’s A Woman
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1964/10/8

●I Feel FineのB面。
●歌詞にTurn on(覚醒させる)を始めて使ったビートルズナンバー。ちなみにその単語を入れたのはジョン。


ポールの太い声がこの曲にはあってる。歌詞はポールの個性である女性に対する信頼と自分に対する自信がみなぎっている。
プレゼントはいらない。愛がほしいんだ。ってところが、どことなく、Can’t buy me love の続編って感じもする。

この曲はポール自身、リトルリチャード風に作りたかったと語っている。すなわち、黒人っぽくした。だから、敢えて、ロマンのカケラも無いwomanって単語も使ったんだろう。
それに、My love don’t give me presents のところ、doesn’tにしなかったってのも黒人のブルースを意識してのことでしょ。

細かいことだけど歌詞で面白いのは、presentプレゼント)と韻を踏ませるため、peasant小作人)ってのを使っているところだ。「彼女はプレゼントはくれないけど、小作人じゃないよ」ってね。なんとなく微笑ましいよね。

ポールの野太いブラックミュージック。

Bad Boy
★★☆☆☆

◆(Larry Williams) V=John 収録日=1965/5/10

●ラリーウィリアムズのカバー。

この曲を聴いたのは結構、最近だな。
高校の頃は「オールディーズ」ってジャケはサイケだけど中身はそうでもないLPに入っていたらしいけど、僕もそうだし、僕の周りの人も、誰もそのアルバムを持ってなかったから聴く機会がなかったんだよ。

でも、今聴いてみると、ジョンの邪悪なボーカルがいいよね。ビートルズ解散後にジョンはロックンロールってアルバムだしたけど、その頃にはなんか、ギラついた部分が抜けて、脱魂しちゃった感じがなくもないけど、このBad Boyのロックンロールは、タイトル通り、ワルガキって匂いがプンプンしていていいな。

ジョンといえばImagineだ、なんて思っている御方に聞かせたいよね。この悪意。

ジョンの行儀の悪さ全快。この悪さがロッカーの本質でしょ。

Yes It Is
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1965/2/16

Ticket to ride のB面
I need you と同日録音。同様にボリュームペダルを使っている。


これぞ、僕にとっては隠れた名曲No.1だな。

初めて聞いたのは昨年、このアルバムを聞いたときだから、相当遅れてきたわけだ。
ボリュームペダルを使用したギターを音程がはずれそうではずれない。厳密に言えばいくつかはずれているのかもしれないがそれも味だ。

この曲がペパーの時期に作曲され、もっと作りこまれていたら、全然別の評価が与えられただろうな。そういう意味で惜しい気もしなくも無い。
その作りこみ不足は歌詞にも言える。

If you wear red tonight,
Remember what I said tonight.

もし、今晩、赤い服を着るのなら、さっき、僕が言った事を思い出して

韻を踏むべきところ、tonightとtonight、同じ語を使っちゃうっていうのはジョンにしては珍しいんじゃないかな。
また、色を効果的に使うっていう意味では、Baby’s in blackと双璧だよね。

For red is the color that will make me blueYes It Is
赤い服が僕をブルーにさせる

Baby’s in black and I’m feeling blueBaby’s in black
あの娘の黒い服が僕をブルーにさせる

ジョンのこの切ない思い。目の前の彼女に、どうしても言わざるをえなかった自分の内面の真実。

若いな、青いな、ジョン。

実は凄い名曲。アレンジ別にしてもう一度撮ってほしかったな?

I’m Down
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1965/6/14

●シェアスタジアムのコンサートでも熱演。
Yesterday夢の人と同じ日に録音された。


ポールのオリジナル曲での初めての絶叫ソングだ。

でも歌詞は一見、ジョンのもののようにも見える情けない内容だ。
ジョンは女と別れる時、どっかに、脅迫的な言葉や懇願が入るのだが、ポールは別れ際は結構、男らしくあろうとするみたいだね。

ポールの絶叫曲。シェアスタジアムのコンサートでは、ジョンの汗だくのエレピ演奏が印象的。

PAST MASTERS VOL.2

PAST MASTERS VOL.2

TOCP-51126
1988年3月7日発売

●ビートルズの後期(1965年12月以降)のシングル曲を収録
●中山康樹氏によるとビートルズ初心者がまず聴くべきアルバム。

後期の編集版といえば、青盤もあったけど、最終的にこういう形でこれらの曲を聞けるようになったんだ。ビートルズの成長といろんな嗜好がわかるお得な1枚だよね。
The inner lightを聴いたのはこのアルバムがはじめてだったな。Hey Judeの輝きは永遠だよね。

Day Tripper
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1965/10/16

We Can Work It Outとの両A面として発売(でも両A面ってどういう意味か?)。

リフで引っ張っていくこのDay Tripperはストーンズとかも意識していたんだろうか。ちょうど、ビートルズの歌が段々サイケ色に変化していく時期の曲。ジョンも、この曲の事をはっきり、ドラッグソングと言っている。

また、歌詞にも、一筋縄でいかない部分が出てくる。
she’s a big teaserえらく手ごわい女だ、)という歌詞もあるけど、実は“She’s a prick teaserあの娘はチンチンをいじる女)ってのが隠しフレーズ。 いたずら心のあるジョンは、ライブでは、prick teaserで歌いながらゲラゲラ笑っていたそうだ。趣味悪いぞ、ジョン。

ここの部分を文章として解釈すると、2つの解釈がそれぞれ、以下のようにも訳せる。

She’s a big teaser, she took me half the way there
(えらく手ごわい女だ訳)えらく手ごわい女だ、僕も危うく一杯くうところだった
(チンチンをいじる女訳)彼女はチンチンをいじる女 僕も危うくイっちゃうところだった

そういえば、この曲のプロモで、リンゴが電車のセットをノコギリで壊すという(?)なシーンがある。とってもシュールだ。
一方、この曲の最後の方のギターで、この有名なリフがたまに消える。これは実はジョンが意図的にやったというのだ。
「あれはなんだったんだろう」っていう感じを残す、そこに想像(妄想)が入り込む隙を作る。

そういう発想するとやっと、リンゴが切り取ってた柱が、実は、ギターフレーズを構成する「音」だったんだなってことがわかるんだよね。

一度聴いたら忘れない印象的なフレーズ。これも天才の発想。

We Can Work It Out
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul,John 収録日=1965/10/20,29

●ジョンとポールの共作。途中ワルツにしたのはジョージのアイディア。
●邦題は「恋を抱きしめよう」。


しかし、「恋を抱きしめよう」っていうのは意味不明なタイトルだよな。どうすればいいの?
それはともかく、Aメロはポール、サビはジョン、味付けにジョージって3人が1曲にいいアイディアを出し合うっていうビートルズ最高の合体形態がこの曲。

歌詞は、ポールの部分は確かにで強引だ。無理矢理の前向きともいえる。女を口説くとき、この位の前向きさは誰でもする(?)でしょ。

Try to see it my way, Do I have to keep on talking till I can’t go on?
While you see it your way, Run the risk of knowing that our love may soon be gone.

We can work it out,

僕みたいに考えてご覧。こうやって延々と君を説得しなきゃならないのかい
君みたいな考え方はよくないよ
二人の愛がはかなく消える可能性を問題にするなんて縁起でもない
僕らはきっと上手く行く 上手くいく

一方、ジョンの書いた部分は以下だ。

Life is very short, and there’s no time For fussing and fighting, my friend.
I have always thought that it’s a crime, So I will ask you once again.

人生はひどく短い くだらないことで喧嘩している暇はないよ
そんなにバカげていると思わないか だから改めて君に頼みたい

一般にこの部分は悲観的と言われるが、僕はそれほどでもないと思うな。
「人生は短いから喧嘩をするのをやめよう」のどこが悲観的なのか?それにこれを哲学なんて呼ぶのもどうか、それほどのものか。
ジョンの悲観って言えば他にいくらでもあるよ。

1)No Reply
I nearly died, I nearly died
‘Cause you walked hand in hand with another man in my place

死ぬほどつらかったよ
だって君は僕の代わりに他の男と手をつないで帰って来たんだから

2)I am a loser
And so it’s true, pride comes before a fall
I’m telling you so that you won’t lose all

おごれる者はひさしからずっていう諺は本当らしい
君もいい気になっていると何もかもなくしちゃうぞ

3)Yeh Blues
The eagle picks my eye The worm he licks my bone
I feel so suicidal

鷲が俺の目玉を突っつき ウジ虫が俺の骨をしゃぶる
今すぐ自殺したい気分だ

ジョンとポールとジョージの発想が見事に融和した名曲。

Paperback Writer
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1966/4/13,14

Revolverと同時期に録音されたシングルA面。
●ポールの曲ではじめて恋や女とは無関係な曲。
●東京公演でも演奏された。


ポールの弾くベースは、テクニックも、音も秀逸。

実は歌詞を追っていくと変な部分がある。

一番と三番と四番はペイパーバックライターになりたいという手紙の内容だ。「ペイパーバックライターになりたいです。」「お望みならばもっと長く書くことも出来ます。」「お気に召したなら、著作権も御社に差し上げます」「見込みがなければ送り返してください」っていう具合だ。だが、二番だけが異質だ。ペイパーバックライターになりたいヤツの説明だ。

It’s the dirty story of a dirty man And his clinging wife doesn’t understand.
これは、下劣な男の下劣な物語 彼にまつわりつく妻は夫を理解しない
His son is working for the Daily Mail,It’s a steady job but he wants to be a paperback writer,
デイリーメール紙に勤務する彼の息子はペイパーバックライターになろうと考えています

なんと、ペイパーバックライターになりたかったのは、持ち込んだ小説の中の人物だったのだ。これはエッシャーのダマシ絵のような風景(鏡に向かって鏡を向けているような風景といってもいいのだが)ではないか。小説の中の人物がペイパーバックライターになりたとすれば、その小説を書いたペイパーバックライターがいるが、そいつも小説の中の人物で...って感じで永遠に循環する構造の中にいる、眩暈がするよね。

このころシュールレアリズムに凝っていたというポール。リスナーをちょっとした混乱に陥れる、こうした手法にイタズラ心が垣間見られる。Maxwell’s Silver Hammerとちょっと似たセンスだよな。

絶妙なコーラス、ランニングベースが最高。

Rain
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1966/4/14,16

Paperback WriterのB面。
●テープの逆回転を始めて導入した。


中山康樹氏大絶賛のこの曲。どこがいいのかって言えば、「曲がいい」ってことらしい。僕もこの曲は大好きだ。リンゴのドラムも逆回転のところも好きだ。
その昔は「ヘイ・ジュード」っていうLPに入っていたな。

でも、僕はこの詞も好きだ。

Can you hear me, that when it rains and shines,
It’s just a state of mind?

雨が降ろうと晴れようと心の状態が問題なんだ

この「外界に惑わされない自分」、あるいは「外界なんてどうでもいいという自分」というコンセプトは、その後の、Strawberry Fields foreverI am the WalrusAcross the Universeへとつながっていく。

1)Strawberry Fields forever
Living is easy with eyes closed, misunderstanding all you see.
目をつぶっていれば生きるのはたやすい 見るものすべてを誤解してしまうからね
2)I am the Walrus
Sitting in an English garden waiting for the sun
If the sun don’t come, you get a tan from standing in the English rain

英国風の庭園に腰を下ろし 日差しを待っている
もしも陽が照らなかったら英国の雨にうたれて肌を焼けばいい

3)Across the Universe
Nothing’s gonna change my world
何ものも僕の世界を変えることは出来ない

さらに、この姿勢は、自分のまわりの騒音をそのものに惑わされずに音楽として聴いてしまおうというアバンギャルド、Revolution 9へと続くのである。

重厚なドラム。リンゴの仕事の中でも最高傑作。

Lady Madonna
★★★☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/2/3,6

●ビートルズ17枚目のシングル。

サージェントペパーで凝りに凝った音楽を聴かせたビートルズの次なる作品がこれ。
あまりにもシンプルでフィフティーズポップスを思わせるような曲調やアレンジに当時は、みんな「そう来たか!」って感じだったらしい。

ウィングスのライブアルバム「Wings over America」でも演られている。僕は、そのバージョンを真似したピアノの練習をして人前で演ったよ。リズム感の無い僕はみなさまにご迷惑をかけたな。
ポールの物語風の設定に、ジョンの好きなマザーグースの味付けがされている。ポール的なオチもジョン的な皮肉も無いのが残念。

しかし、皮肉な事に、後々このLady Madonnaはそのまま、アップル社の自己パロディになってしまうのでした。

Wonder how you manage to make ends meet
いったどうやって採算を合わせるんだい

シンプルながら優しいポールの人柄がにじみ出る曲。

The Inner Light
★★☆☆☆

◆(George) V=George 収録日=1968/1/12,2/6,8

Lady MadonnaのB面。
●この曲を歌うかどうか悩んでいたジョージに対して、ポールが「やってみろよ、大丈夫、いい曲なんだから」って励ましたという。


The 比較級、The 比較級 で、~すればするほど、~になる っていう文法は、高校の英語の時間を思い出すよね。

The farther one travels
The less one knows
The less one really knows

遠くへ行けば行くほど
知ることは少なくなる 得るものは少なくなる

ジョンも、外界に惑わされない自分というコンセプトを持っているけど、ジョージは真実の知は内面にあるってコンセプトだよね。
スーパースターになって世界中を飛び回った彼ら。でも、どこにも、彼らが求める真実は無かったという、彼らの現実を踏まえるとより、深く聴けるよね。

Within you without youでもこう歌ってる。

Try to realize it’s all within yourself
no-one else can make you change

すべては己の内にあることを認識せよ
誰も他人を変えることは出来ない

メロディ、歌詞ともにジョージらしい隠れた名曲。

Hey Jude ★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/7/31,8/1,2

●ビートルズナンバーの中で最大のヒット。
●ジョンが離婚したことによって、父親を失ったジュリアンを励ますためにポールが書いた。
●JudeをJew(ユダヤ人)のことであるとして、差別的な歌だと言われた。


ポールの優しさ溢れた曲。たしか、この曲を作った月にポールは婚約破棄を発表したんだよね。
破れた恋の数だけ他人の優しく出来るって歌ったのは細川たかしだが、僕はここでポールの気持ちが痛いね。
この曲を聴いたジョンは自分とヨーコのことを励ますための曲だと解釈したんだから、その脳天気さはそれはそれで天才的だ。

このポールのジュリアンに向けての励ましソングは、同時に世界に受け入れられた。世界への励ましソングになっていくんだ。

Don’t carry the world upon your shoulders.
For well you know that it’s a fool who plays it cool
By making his world a little colder.

何もかもひとりで背負い込むことは無いんだよ
自分の世界を冷ややかなものにして 常に冷静さを気取っているヤツのなんと愚かなことか

これが全世界の運動家の心とシンクロした瞬間、この曲は大ヒットしていく。例えば、ソ連に蹂躙されたチェコスロバキアでは、このHey Judeをマルタ・グビショバという人がカヴァーし、歌詞を替え、自由をうたいあげたんだよね。音楽の力が民衆のエネルギーに火をつけることがあるんだな。

当時、僕は小学校3年生だったけど、土曜日の午後に大橋巨泉が司会をしていたポップス番組で、「僕は、B面のRevolutionの方が好きだな」というような事を言ったのを何故か覚えている。
何故覚えてるのかは忘れたけどね。

でも、やっぱり一筋縄ではいかないのがポールの歌詞。Penny laneAll together nowと同じようなエッチな隠語が潜んでいる。それはここだ。

So let it out and let it in, hey Jude, begin,
You’re waiting for someone to perform with.

心を開いて迎え入れればいい、ねぇジュードスタートを切れよ。
誰かが助け船を出すのを待っているのかい?

内田さんの訳は素晴らしい。でも僕は邪推訳をする。
(それ)を自分で入れたりだしたりしなきゃダメ。ねぇジュード早く始めてよ。
やってもらうのを待ってるの?

…失礼しました。

ビートルズの代表中の代表曲。

Revolution
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/7/10,11,12

Hey JudeのB面。
●日産プレサージュのCMで使用(ただし、曲はCM用にアレンジ 歌手はアンジェラ・ジョンソン)。
●一時、天龍源一郎の入場テーマ曲として使用される。なんとなく変だったため、すぐにサンダーストームに戻る。
●もともとシングルにするために作った曲がテンポが遅くてシングル向きではないと判断され、スピードをあげ、シングル用にアレンジしなおした。ただ、後にHey Judeが作られ、この曲はB面に追われた。ジョンのトラウマとなる。


この曲は題名から来るイメージとは違い、聴き様によっては、革命に水を差す内容になっている。
ニーチェは「人間的なあまりに人間的な」の中で、「ものをよく考える人は党員にはなれない。思考は必ず党をはみだすからだ」という。
ジョンの微妙な立場を表してるような気もする。

僕はこのRevolutionの歌詞を見ていて一つの事に気づいた。

「世界を変えたいと思っている」「計画をきかせてもらおうか」「僕に出来ることなら何でもするよ」って革命に肯定的なセリフはすべて主語が「We」になっている。
一方、「数に入れないでくれ」とか、「早まるなといいたい」っていう時の主語は「I」になっているのだ。
すなわち、ジョンは集団としては革命賛成だが、個人としては革命に疑問を持っているのだ。その集団と個の間で揺れ動く自分というテーマ。それがこの時期のジョンのテーマだ。
これは世界と自分ということでもあるし、ビートルズと自分ということでもある。

ホワイトアルバムが1968年自体をパッケージングしたアルバムって呼ばれるが、そういった時代の揺れ動きを自分の内面の揺れ動きとして感じていた人が少なからずこのアルバムに共有したからではないかと思うのである。

そして、時がたち、現代の視点から見ると、ジョンは至極まっとうなことを言っているように思える。

「暴力のためだったら、僕は抜ける。そこに花を飾るのでなければ、僕がバリケードに加わるようなことは期待しないでくれ。マルクス主義やキリスト教の名の下に何かを粉砕するからには、すべてを粉砕した後に、いったい何をやろうとするのかが知りたい。僕がRevolutionのすべてのバージョンで言ったのは、”change your head君の頭を変えろ)”ということだ。」

でも、当時はそれもノンポリと批判されたんだよね。行動するのか、しないのかって2分法で言えば、実は、Hey Judeの方がRevolutionよりも行動を促す曲だったんだね。

ジョンの攻撃的な秀曲。

Get Back
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/28

●ルーフトップコンサートでの演奏。
●クレジットでビートルズとビリープレストン となっている。


ジョンがリードギターを弾いている。テクニックというよりもセンスが抜群だ。ジョンが嬉々として弾いている姿が僕は嬉しい。
心はもうビートルズになかったジョンだけどギターを持たせたらやっぱりロックンローラーだよな。僕も高校の頃、ドラムやったけど、楽しかったな。
この歌で楽しいのは、間奏の間に入る「Go home」のタイミングだな。

シンプルなロックンロール。大ヒット曲だよね。

Don’t Let Me Down
★★☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/28

Get backのB面。
●ジョンがヨーコに向けて作った。
●何故か、Let it Beのアルバムには収録されず。Nackedでは収録。


Don’t Let Me Down
僕を見捨てないでくれ

ジョン得意の懇願系のラブソング。Please please meから、このDon’t Let Me Downまで、これはジョンの特徴だよね。
でも違うのは、彼のこの恋に対する自信だ。

I’m in love for the first time.
Don’t you know it’s gonna last.
It’s a love that lasts forever,
It’s a love that had no past.

生まれて初めて恋をした この恋には終りが無いんだ
限りなく続く永遠の恋
過去の一切を断ち切った恋

永遠の恋なんてことは、ヨーコと出会う前には見られなかったフレーズだよ。
でも、同時に見捨てないでくれって、懇願。この矛盾がジョンと言えばジョンだ。

ドンレットミーダーン♪って何回叫んだ事か。

The Ballad Of John And Yoko
★★★★☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/4/14

Get backに引き続きシングル盤として発売。
●レコーディングはジョンとポールの2人で行われた。
●邦題は「ジョンとヨーコのバラード」。


ジョンの私生活をつづっている。サウンドにはジョン特有の憂鬱感は全く感じられない。リンゴが参加していないからかわからんが、悪く言えば軽い、よく言えば軽快なポップス。歌詞にはいたるところに興味深いフレーズが見られる。

しかし、この頃のジョンとヨーコはお気楽だ。

The man in the Mac said, “You’ve got to go back”.
You know they didn’t even give us a chance.

防水コートを着た男に言われた「さっさと帰りなよ」
奴らは僕らにチャンスすら与えようとしない

で、なんで出国できなかったのかって言えば、どうやらパスポートを持っていなかったらしいんだよね。別に社会(国家)が二人の自由を阻害したっていう大げさな話じゃないと思うんだが。

Christ you know it ain’t easy
畜生 全く楽じゃないぜ

この曲発表から4年くらい前にビートルズはキリストより有名発言でバッシングを受けたジョンだが、もう、そういった過去を吹っ切ったような表現だ。このフレーズのおかげでアメリカでは、放送禁止になった放送局も沢山あったようだけど、もうそんなことに気をつかうようなジョンではなかった。

You can get married in Gibraltar, near Spain”.
スペイン南端のジブラルタルで結婚式を挙げればいい

こういう手続きはマネージャーにやらせるジョンとヨーコ。お気楽だ。ジブラルタル生命保険のCMで、この時、ジブラルタルロックの前でジョンとヨーコが撮った記念写真が使われてたよね。

The newspapers said, “Say what you doing in bed?”
I said, “We’re only trying to get us some peace”.

新聞記者は訊いた「ベッドにもぐって何をしてるんですか」
僕は言ったよ。世界に平和をもたらしたいだけさ

これは、あの有名なベッドインの事だ。「僕たちは平和のセールスマン」って言って、ベッドから2人で平和をアピールしたんだ。「ホテルのスイートを使いやがって、その金は寄付しろ」とか、「そんなことしても世界は変わらないぞ」、みたいな非難をされた。でも当時の学生運動、平和運動に与えた影響は大きかったんだ。
このベッドインの最後に歌われた「Give peace a chance(平和を我等に)」。「いちご白書」っていう当時の青春映画でも講堂に座り込んでみんなで歌ってたよ。また、フジフィルムのCMでもこの時の写真が使われていたな。

Giving all your clothes to charity.
着るものはみんな寄付にまわす

これは、アップルブティック閉店の際に、無料で服を客にあげたことをさしてるんじゃないかな。これも今考えれば、無謀は笑い話だよね。ちなみに、その前日、ヨーコは自分の欲しい服を全部持っていったそうな。さすがちゃっかり者。いや、しっかり者。

eating chocolate cake in a bag.
袋に入ったチョコレートケーキを食べていたら(内田訳)

僕の想像だけど、これはなんらかのドラッグ入りのケーキだろうな。当時、日本でだってLSD入りの自作チョコとか、みんなで食べたっていうからね。
ちなみに、In a bag だけどさ、袋に入ってっていうのはチョコレートじゃなくて、ジョンとヨーコのことだからね。だから、本当は、「袋に入った」じゃなくて、「袋に入って」だよね。

They look just like two gurus in drag”.
二人して導師きどりでいやがって

このin dragは、ポリシーパンでも出てくる。風変わりなって訳すんだろうか。でも字義通り、「薬漬けになって」って訳してもいいんじゃないかな。実際そうだったんだから。

Fifty acorns tied in a sack.
50個のドングリがぞろぞろくっついてくる

これはドングリイベント(※1968年、ジョンとヨーコが平和を祈って、ドングリの苗を植えたり、全世界の指導者にドングリを送ったりした)のことを念頭に置いている。

The way things are going
They’re going to crucify me.

世の中はどうにかしてやがる 僕を磔にするつもりなんだ

行動的なジョンとヨーコ。だけど世の中は変わったのだろうか。少しづつ変わっているといえばそうだし、変わっていないといえばそうだ。
ジョンが常に主張したのは、社会システムを変えるんじゃなくて、一人一人の意識を変えるべきだって事。

世界は、ジョン一人を磔にして、何も無かったかのように昨日と同じように続いていく。

「ホタテをなめるなよ」と間違わないでね。

Old Brown Shoe
★★★☆☆

◆(George) V=George 収録日=1969/4/16,18

The Ballad Of John And Yoko のB面。
●何故か青盤にも収録されていた。
●ベースを弾いているのはポールなのかジョージなのか、未だに論争が続いている。


Now I’m stepping out this old brown shoe
履き古した茶色の靴はもう脱ごう

僕は、これはジョージの決意表明ととるな。勿論、このOld Brown Shoeはビートルズのことだ。
この歌の中でこう歌われている。

You know you pick me up from where some try to drag me down
人が僕の足を引っ張ろうとする世界から君が助け出してくれる
And when I see your smile replace every thoughtless frown.
思いやりの無いしかめっ面は消え、今は君の笑顔が見える
Got me escaping from this zoo, baby, I’m in love with you.
僕を動物園の檻から逃してくれた君

この動物園(zoo)というのは、Baby you are rich manでも使われている。ビートルズたちはすべての行動を世間から見られ続けていた。そのプレッシャーというは大変なものだったに違いない。彼らは、自分たちを動物園にいる動物って感じてたんだ。
シェアスタジアムのコンサートの映像を見たことある?野球場のプロテクトネットをつかみながら泣き叫ぶ少女たち。その5万人の少女たちに囲まれて演奏するビートルズ。監視しているフリをしながらビートルズをチラ見する警備員。エプスタインはガムをかみながら、満足そうにスタジアムを見回す。ジョンは狂ったような笑みを浮べてキーボードをひじで弾く。そんな光景さ。
こんな狂乱の劇場、これが動物園だ。コンサートを止めたが、現状はさらに悲惨になった。メンバーはお互いのエゴを剥き出しにし始めた。「人の足を引っ張ろうとする世界」ジョージは本当に、この頃のビートルズが嫌だったんだろうと想像されるよね。

でそういった嫌なものから離れよう。そういうメッセージソングだよね。

Do you want to know a secretのシャイな仮面、Don’t bother meの身勝手な引きこもりから、時間がたってジョージも大人になったな。

ビートルズの楽曲の中でも1位、2位を争うほどの名演。

Across The Universe
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/2/4,8

●世界野生動物保護基金救済チャリティーアルバム「No one’s gonna change my world」に収録されたバージョン。
●オープニングの鳥の羽ばたき音が入っていることから通称バードバージョンと呼ばれている。
Let it be にされた収録バージョンに比べてテンポははやい(っていうかLet it be バージョンが遅い)。
●女性コーラスは、スタジオの外にいたおっかけの娘をその場で連れてきて使ったという。


ジョンを語る上で重要なナンバー。
Words(言葉)はコップの中から溢れ出し、全世界をくまなく巡るっていうのに対し、Thought思想)はでたらめに転がりながら世界を巡る。
やっぱりジョンは詩人なんだなと思わせるよね。この思想批判は、その後、平和を我らににも通じるよね。

「みんなが口にすることといったら何とかイズムばっかりだけど 僕らがいっているのは”平和を我らに” ただこれだけさ」ってね。

もっとも、リシュケシュっぽい至上の名曲。

Let It Be
★★★★★

◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31,4/30

●シングルバージョンのプロデュースはジョージマーティン。
●ジョージの間奏のギターがどちらかといえば地味なバージョン。


この曲も僕が高校の時、人前でやったな。ピアノだった。ギターのM君はまよわず、スペクターバージョンのギターを弾いていた。
70年代はギター最盛期だから、より派手なギタープレイのスペクターバージョンの方を選択するのは当然だった。

当時は、僕たちにとって、プロデューサーのマーチンのプロデューサーとしての存在なんて誰も重要視してなかったからな。っていうか、そんなの気にするようなレベルじゃなかった。これは僕たちって言うよりも、その時代のリスナーのレベル、送り手側の意識も含めてのレベルが現代に比べるとだいぶ違っていたっていうことなんだな。

だから、アルバムの音が、その頃の思い出と一緒に染み付いてしまった僕は、Nakedって言われても、これが本物ですって言われても、待ってましたという感じではなかったな。(だから、本サイトではネイキッドのレビューはありません。)

こっちのLet it beは、最後のレリピーのコーラスが1回少ないんだよね。それだけでなんか損したような、感じがしたもんだ。当時日本は、っていうか僕たちは貧しかったということかな。

おそらく日本で最も人気のあるビートルズナンバー。

You Know My Name[Look Up The Number]
★☆☆☆☆

◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1967/5/17,6/7,8,1969/4/30

●サックスはストーンズのブライアン・ジョーンズが吹いている。上手い。
Let it be のB面。


メリージェーンとかRevolution9に通じるようなコンセプチュアルさを感じさせる遊び歌。

You Know My Name [Look Up The Number]
僕の名前は知っているよね。電話番号を調べてみな

っていうのがファンに対する最後のメッセージっていうのも、皮肉たっぷりでビートルズらしいよね。
親しみやすいんだけど、永遠に手の届かない存在。目の前の旅人に謎をなげかけるスフィンクスみたいに、どっか不思議のベールをかぶっていたビートルズ。だからこそ、僕たちは今でもこうやってその謎の前で遊ばしてもらっているんだ。

これが最後の1曲でした。

最後がビートルズで一番、変な曲っていうのもビートルズらしいかも。