既得権益文化人(瀬戸内寂聴や美輪明宏達)はいつまで跋扈するのか

先日、「久米宏のテレビってヤツは!?」に瀬戸内寂聴さんが出演していた。

80歳を過ぎてもパワーがあって饒舌で、おそらくこういう人を、”人間的”だとか、”人間力”がある人っていうんだろうな。
スタジオにいた森永卓郎、YOUの2人も、「チャーミングだ」と言って褒めていた。
おそらく、ひとは相手に関心いけど、しかし、嫌われたくも無い時に、とりあえず”褒める”んだろうって感じた。

そういえば、Vの中で瀬戸内さんは肉をおいしそうに食べていた。
久米宏がつっこんだら、「お釈迦さまは、そんな事(肉を食っちゃいけない)は言ってはいない。悪いのは、生き物を殺す人で、私は自分で殺したんじゃないから、食べていい」みたいな事を言っていた。
これって、相当まずい発言じゃないのか。
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しかし、言いたい放題の彼女だが、その意見で唯一、いい意味でハっとさせられたのは、番組の最後の方で「前世なんてありません」とビシっと言った事だった。
論語の一節『子不語怪力乱神』(先生は、決して人間の理性で説明のつかないような不思議な現象に関しては語らない)という言葉を思い出した。
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そういえば、前世等に関して公の場では語らないというような作法は、昔の人(例えば、昭和一桁生まれの世代)にとっては当たり前のことだった。

逆に言えば、多くの輩が、前世とか、霊とか、あの世とか、生れ変りとかを、公の場で普通に言い出したのは、ここ20年くらいのことかもしれない。
確かに、それまでもUFOが見える人とか、スプーンを曲げる人とかがテレビでブームになることはあったけど、それはあくまでもマイナーな存在だったと思う。
しかし、昨今、そういった考え方をする人の方がメジャーになってきたということなのだ。

ある大学生のアンケートではこんな結果が出ている。(「スピリッチュアルにハマる人、ハマらない人」香山リカ P23)

Q.魂や霊魂があると思うか?

ある・・・・61%
ない・・・・10%
わからない・28%

Q.前世や生れ変りを信じるか?

信じる・・・56%
信じない・・14%
わからない・30%

こういう状況だから、僕は逆に、瀬戸内さんの言葉を新鮮に感じてしまったのだ。
だから、最近のスピリッチュアルブームに対して、瀬戸内さんには、ビシっと糾弾してほしいのだが、難しいか。
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そんな瀬戸内さんも、実は美輪明宏さんと親しかったりするからだ。少なくとも公の場で、この2人が世界観の違いをもとに、討論するというような場は現時点では想定しにくいのだ。

「ボクらの時代」で、平野啓一郎さんも含めて鼎談した時も、そんな二人の仲の良さが垣間見られた。

当たり障りの無い話をして、お互いにホメあうベタベタの三人。
それに加えて、「昔はよかった」「権力は悪い」「日本人は劣化した」っていう話が続く。かつて若い頃にはとんがっていた人も、結局は、こういう凡庸な言説に取り込まれてしまうものなのだ。しかも、彼らにはおそらく、そういった凡庸化の自覚も薄いように感じられる。
日本はいつまで、こういった既得権益文化人が跋扈する国なのだろうかと、暗澹たる気分にならざるを得ない。

平野クンって、茶坊主?少しは頑張れ。

まさむね

今日の「久米宏のTVってヤツは!?」の印象雑感

本日の「久米宏のTVってヤツは!?」は、三浦展氏の「女はなぜキャバクラ嬢になりたいのか?」(光文社新書)を踏まえたキャバクラ特集だった。

この三浦展氏って一連の下流ブームの仕掛け人。僕も下流三部作は面白く読ませてもらった。
この下流という言葉、最初はマスコミ的にも、僕らが日常使う言葉としてもちょっと刺激的にすぎるかなと思っていたんだけど、この人の著書のおかげで、世間に認知された感はあるよね。
そう意味で、新しいリアリティを創造できた人の一人だと思う。

でも、最近、ちょっと多作すぎて、内容が薄くなってきているような気もする。
特に「下流大学は日本を滅ぼす!」とか。まぁ、本エントリでは三浦展論は、本題ではないので、改めて書評することにする。

さて、番組に戻る。
気付いた点は2つ。

一つ目は、杉田かおるさんて意外に視野が広く、しかも常識的だって事。

杉田さんは、女の子が何故、キャバクラ嬢になりたいのかという番組構成上の大きな問いかけに対して、「バブルが崩壊して、普通の人が地道に生きていっても幸せになれるとは限らなくなったという時代背景」を説明し、さらに、昔(自分が子役の頃)は、「このままだと君は、銀座のホステスになっちゃうよ」って共演者(例えば石立鉄男さん)に言われたっていう経験を踏まえて、水商売というものが、昔は「なりたい商売」ではなく「なってしまう商売」だったのが、現在は「なりたい商売」になっている、この価値の転倒はどうしたものかという問題まで提起していた。

ちなみに、一方では、進行役の八木亜希子アナは、一方、女子アナっていう職業が、昔は憧れの職業だったのに、今はキャバクラより下なのかという事を嘆く作法だけを繰り返し見せて、ただ、嫌味な印象だけを振り撒いていた。
もう一人、チョイ悪風のCM業界者が出ていたが、残念ながら番組内では存在意味無し。俺はクライアントには媚びないって胸を張っておきながら、年末年始にはみんなで、テレビを見ましょうって言ってた。

さて、そうなのだ。杉田さんが言うように、この日本では従来の価値観がいつのまにか転倒してしまっているのだ。

そのうち、キャバクラの専門学校が出来るかもしれない。
また、花嫁修業のためにキャバクラで働くような時代が来るかもしれない。
接客のための知識の習得、美への研鑽、周囲への目配り力の強化、しっかりした経済観念の育成、っていう具合に、花嫁としてのリアルスキルを、生け花教室よりも学ぶことが多いのかもしれないのだ。

もう一つは、経済評論家の森永卓郎さんの指摘がうやむやになってしまった点。

男は何故、キャバクラに行くのか。10,000円/1時間だったら、普通の女の子を誘って飯を食いに行った方が、安上がりではないのか。エッチなサービスは無いと言いながら、アフターとかあるんでしょ..と森永さんは聞く。

そこで、スタジオのキャバクラ嬢たちは、そんな事は無い的な素振りをしていたが、はっきりは言っていなかった。でっ、残念ながら、久米氏はそこでCMに行ってしまったのだ。

どんな職業にでもいい面と悪い面がある。
キャバクラ嬢になる事のリスク、嫌な点は、ただ、年齢を重ねると出来なくなるって事だけなのだろうか。
ある種の人々には野暮な質問かもしれないが、そのあたりは番組として、明確に示すべき一線ではないのかと思われた。

ちなみに、僕は、何度か仕事でキャバクラには行ったが、そんなに面白いところではなかった。

まさむね