イノセントラブの盗み見 日本文学の伝統

浅野妙子脚本作の特徴の一つは覗き見・盗み聞き・偶然の発見の多用だ。

前作「ラストフレンズ」でも、ほぼ毎回1回はそのようなシーンがあり、ストーリーを転がしていた。(本ブログ6/20の「ラストフレンズは盗聴ドラマだ」参照の事)

それでは最新作「イノセント・ラヴ」はどうだろうか。
第1回放送では早くも4回もあった。

佳音(堀北真希)が喫茶店の女主人と客との間での佳音兄妹の悪い噂しているのを覗き見る。
春江(宮崎美子)がハウスクリーニング先で現金を盗むところを佳音が発見。
佳音が殉也(北川悠仁)の写真を盗もうとしたところを殉也が発見。
ハウスクリーニング事務所で佳音の過去の事件が表示されているPC画面を春江が盗み見る。

これはちょっと多すぎやしないか。普通の人生で、こういった劇的な盗み見ってそんなにあるもんじゃないからね。
まぁ、これらの仕掛けが悪いわけじゃない。それでドラマが面白くなってくれればいいんだけどね。

考えてみれば、この覗き見・盗み聞き・偶然の発見っていうのは、日本の文学作品を振り返ってみても重要な物語転換点になっている。

例えば、「古事記」で、黄泉の国でイザナギノミコトがイザナミノミコトの死後の姿を見ちゃうとか、アマテラスが天岩戸に隠れた後、他の神々の饗宴を岩戸の中から覗いたりする。
この2つのシーンは、「古事記」の中でも凄く有名でしょ。

また、「源氏物語」でも、乳母の家の隣の家で、夕顔を覗き見るシーン、光源氏が紫の上を始めて見つけるシーン、柏木が、飼い猫が御簾の中から出てきた瞬間、女三宮を見てしまうシーンが有名。
偶然かもしれないけど、この3シーンは、後に作られた源氏絵巻、源氏蒔絵、浮世絵の題材等でも人気ベスト3の絵柄として人々の印象に残ってるっていうのも面白い。

その後の文学史を見ても、今昔物語、能の題材(「黒塚」)、おとぎ話(「鶴の恩返し」)から、谷崎潤一郎(「鍵」)の近代文学まで、覗き見は、日本文学の主題の一つとして生き続ける。

実は、日本人ってこういうの好きな民族なのかも。
ちなみに、ある調査によると、現代でも、20代で恋人の携帯の記録を勝手に、見たことある人って6割くらいいるんだってさ。

まさむね

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