現在、docomoのCMのBGMとして使用されているビートルズALL YOU NEED IS LOVE(愛こそはすべて)。
この曲は、決して名曲ではない。ビートルズ初期作品のほとばしるようなエネルギーも感じなければ、ドチラかと言えば、ポール=マッカートニーが得意とするYESTERDAYやHEY JUDE、LET IT BEのような美しいメロディであるわけでもない。
どちらかと言えば変な曲なのである。
勿論、作者は、ジョン=レノン。
拍子は変(これ何拍子?)だし、ジョンのソロ部分のボソボソとした歌詞は字余りだ。
途中のジョージのギターソロも最後、うやむやな感じで終わる。
全体的にダラダラしていている。
オープニングにはフランス国家を使ったり、、エンディングには、グレン・ミラー楽団の「イン・ザ・ムード」等が引用されていたり、微妙に凝ったりしている。
でも、何故かこの変な曲は21世紀になっても、決して死んでいない。不思議だ。
逆に、若い人にとっては、この曲が最も身近なビートルズソングなのかもしれない。
時代を超えて残っていくものって、やっぱりそれなりに、魔力があるんだろうけど、1970年代、僕はこの曲に対して、こんなスタンダード曲になるなんて思ってなかったような気がする。
でも、この曲の歌詞を解釈してみると、面白いよ。
ALL YOU NEED IS LOVE って「愛こそはすべて」って訳されてるけど、決して内容は”愛”を称えた歌ではないんだ。
どちらかと言えば、「愛があればね」っていう方がニュアンスに近いと思う。
出来ない事をしようったって無理だ
歌えない歌は歌えないしね
作れないものは作れないよ
救いようのない人は救えない
未知のものを知ろうとしたって無理だ
見えないものは見えないでしょ
でも、自分らしくは生きられるのさ
愛があればね
愛があればね
愛があればね
これは僕が本当に意訳したので、興味のある人は原詞にあたってね。大意はそんなに違ってないと思うよ。
この歌詞を見ると、この時期(1967年当時)のジョン=レノンのネガティブな状況観と、「愛」をコンセプトとすることによって、その状況をなんとか乗り切ろうとするポジティブな思想、つまりネガティブ・ジョンとポジティブ・ジョンの2面性が感じられる歌なんだ。
ジョンは愛の伝道師みたいに祭り上げらたりするけど、反面で、どうしようもなく暗い面も持っていたんだよね。彼はこうも言ってる。
愛と平和を語る者というのは常にもっとも暴力的な人間だ。(ジョン=レノン)
僕は、ジョンの、この自虐的でリアルな”毒”を忘れたくない。
まさむね